第十三話 ~ガイルパーティー編~ 話と森の探索
俺たちは村長の家へと招かれていた。
だが爺の俺のことを無視し続けている。
「村長さん、早速で恐縮なのですが依頼についてお話を聞かせていただけませんか?」
俺の代わりにアメリアが話す。
村長の家に入る前、アメリアとローズが俺たち三人に向かって何も話すなと言ってきた。
意味が分からん。
俺はこのパーティーのリーダーで一番強い。そんな俺に指示を出すなんて何を考えているんだ。
それにだ、アメリアはともかくローズまでも俺の指示に従わない。この二人はどこまで俺をバカにすれば気が済むんだ。
俺の中でイライラが募る。
「そうじゃの、おぬしらはギルドで依頼を受けて来たんじゃったの」
「はい」
「あれは一か月前、この村に一匹のゴブリンが現れた。一匹程度なら村人でもどうにかなっていたんじゃ。村人の中に元冒険者の者もいるからの。じゃが、二週間ほど前から数は三匹に増え始めた。その頃から作物だけを襲っていたゴブリン達が村人を襲い始めたのじゃ。そこでわしは冒険者ギルドに依頼を出すことにした。ただ、内容は伏せておくことにしたのじゃ」
「それはなぜですか?」
「内容だけ見れば簡単な依頼じゃ。だが、わしら村人達の予想では森の中に巣があると考えている」
「ゴブリンの巣ですか?」
「ああ、拾った村人もその巣へと連れていかれているんだろう。だからこその調査依頼なのじゃ。依頼内容詳細がなければある程度上のランクへと設定される。そうすれば上位冒険者が来てくれると考えたわけじゃ」
「ですがそれなら正直なことを明かしても上位冒険者に来てもらえばよかったのではないでしょうか?」
「そうかもしれんが、ゴブリンの巣と聞いて依頼を受ける冒険者がいるか? いないじゃろ、なんせゴブリンの巣は冒険者にもっとも嫌われているところだからの」
この爺の言葉に間違いはない。
ゴブリンの巣は中が迷路のようになっていて迷いやすい。
それにゴブリン達が仕掛けた罠に、衛生的に最悪な所として冒険者から嫌われている。
そのために、好んでゴブリン退治の依頼を受ける冒険者は少ない。
それに、実入りも少ない。
「そうですね。私たちもゴブリンの巣のことが書かれていたら来てなかったかもしれません」
(そうだな、そんなクソ依頼だと知っていたら絶対来てないな)
俺は心の中で突っ込みを入れる。
これ以上この爺の機嫌を損ねてもめんどくさいだけだしな。
「そうじゃろうな。だからこそじゃった。希望に過ぎなかったがよい冒険者が二人も来てくれた」
「二人ですか?」
「そうじゃ。おぬしら二人じゃよ」
お爺さんはアメリアとローズを見ている。
「おい、爺! この村に入ってきたゴブリンを倒したのは俺たちだぞ! 俺たち三人には何もないのかよ」
「いたのかバカどもが! ゴブリンを倒してくれと頼んだ覚えはない!」
「あのままほっとけば村人に被害が出ただろうが!」
「それはないな、なんせこの二人のお嬢ちゃんたちがしっかり避難させてくれたからな」
なんでだ、なんで俺たちがここまで言われなきゃいけない。
「なによ、そんなことしなくても私たち三人がいれば避難の必要すらなかったのよ」
セシルが声を上げるが、
「それはないぞ」
即否定。
「何なのよ」
「おぬしらにはわからんのか」
「意味が解らんことを言うな」
「そうか、まあ良いわい。とりあえず依頼の内容は以上じゃ」
「そうかい、ならこんな狭苦しい所から退散出来るぜ」
「さっさと出て行け」
俺たちは、爺の家を出て早速森へと向かった。
早く戦いたい。このイライラをモンスターにぶつけて解消したいという気持ちでいっぱいだった。
たぶんセシルにリアも同じ気持ちだろう。
いつもみたいに一撃で倒せば一発でスカッとする。
そう思いながら森の中を進んでいる。
俺を先頭にしてすぐ後ろにセシルとリア、その後ろにアメリアとローズという順番だ。
「そういえばローズはまだ俺たち三人の戦闘を見たことなかったよな」
「ええ、ですが興味はないです」
「冗談はよせよ。なんせ俺たちは王都でも有名な冒険者だぜ、そんな俺たちの戦闘を見たくないわけないだろう」
「そうですね。私が興味あるのはただ一人だけですが、まだ見せてくれそうにありませんので」
意味の分からないことを言いやがる。
このパーティーのメインの攻撃ポジションは俺たち三人。その三人以外の誰の実力を見るというのか。
「そうかい。だが一度でも俺たちの戦闘を見たら興味が出てくるさ」
「そうですか」
そっけない返し。
だがそれならそれでいい。
俺たちは俺たちの出来ることをすればいい。
そんなことを考えながら歩いていると、二体のゴブリンが姿を現した。
「まずは私が相手をするよ」
前に出たのはリアだった。
手にはグローブをつけて戦闘体勢。
「やっちゃうよ~! 本気の私を見せちゃうんだから」
リアが本気になるなんてゴブリンたちもかわいそうだな。
リアの攻撃力はパーティー一、跡形も残らずに消滅しきるな。
だがその俺の予想は裏切られた。
俺は戦闘開始すぐリアがゴブリンたちを圧倒して勝つと思っていたが、それどころか攻めあぐねている。
たしかに攻撃は行えている。手数も出ている。だがその攻撃のすべてが防がれている。
「どうしたリア! 手加減してないでさっさと倒しちゃえ」
「分かってるわ」
「スマッシュ!」
武闘家スキルスマッシュは、体重の乗った拳を相手にぶつける物。これをまともに受けてはどうしようもない。
ゴブリンの一体は吹き飛ばされて絶命。残るは一体。
リアに向かって仕掛けてくる。
だが、その一体に対してもスマッシュを使い倒す。
「苦戦してたな」
「こいつらなかなか強いわ」
額の汗をぬぐうリア。
まさかリアがここまでの苦戦させられるとは思わなかった。
「その程度なの?」
後ろからローズの声が聞こえてきた。
しかもその声は称賛の物ではなかった。
「おい! 今何って言いやがった!」
「だからその程度なのかと言ったのだ」
「なわけねーだろ! 相手雑魚だったから少し遊んでやっただけだよ」
「そうなのか」
パーティー内はかなりギクシャクしている。
だが、俺たちは最強だ。何を言われようが関係ない。
そんなことを思いながら先へと進む。
その道中、数回の戦闘があり、俺とセシルそれぞれも戦闘を行い倒すことは出来た。だが、それは余裕には程遠い物だった。
攻撃を与えても決定打にならずに、攻めあぐねる。
スキルを使い何とか倒すも、今までで一番最悪な結果で終わった。
「ねえ、ガイル」
小声でセシルが話しかけてくる。
「私たちの攻撃力ってこんなに低かったの?」
「いや、もっと高いはずだ」
「でもゴブリン如きにスキルを使うなんて」
「ただ調子が上がりきらないだけさ。すぐに本調子になるよ」
「そうよね」
セシルは納得した。
俺自身も不思議には思っているが、どうせもうすぐ本調子になるんだと考えていた。
そして、俺たちはゴブリン達の巣へとやってきたのだ。
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