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自己愛性ブラックwithコロナ  作者: 朝木深水
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 あれから一週間が過ぎた。

 コロナウィルスの潜伏期間には個人差があるらしい。ネットによると、一日から二週間程度だという。

 最初は不安もあったが、この一週間何事もなくピンピンしていたので、流石に感染はしていないだろうと思う。僕は一人で企画書を完成させ、ズーム会議に参加し、企画書を書き直し、合間でゲームをして過ごした。一人でいるのはそれほど苦にならなかった。買い物や外食ついでに歩いたが、運動不足解消のための方策を考え始めた。

 緊急事態宣言は未だに解除されず、感染者数も高止まりのままだった。東京では千人越えの日々が続いていた。

 先輩からは、再び出勤命令が下った。

 仕方なく、朝から電車に乗って会社に向かった。

 通勤電車は、以前のラッシュとは程遠いとはいえ、それでも座席は埋まり、都心に着く頃には吊革も空きがなかった。テレワークにもやはり限界があるのであろう。

 座ってスマホを見ていると、喉の奥がつかえたような気がして、思わず咳が出た。むせたようだった。

 会社に着いて仕事を始めたが、先輩は姿を見せなかった。ラインを送ってみたが、いつまで経っても既読にならなかった。リーダーにそのことを伝えた。やはり返信がないということだった。取り敢えず様子を見ることになった。

 人を呼び出しておいて、自分だけ出勤しないとは何事だ、とも思ったが、以前、既読スルーをしていたら後でスゲーうるさく言われたので、もしかしたら何かあったのではないかと少々心配になった。本人は光の速さで返信してくるし、スマホを手放すとは思えない。ウェーイなパリピで、一人で大人しくしていることが出来ないのだ。感染の症状があれば、すぐに会社に連絡することになっている。ではそれ以外の事故とか、何かあったのかもしれない。

 午前中は不安だったが、一人でランチを食べると思い直した。もしかしたら、また飲みにでも行って酔い潰れているのかもしれない。それに、今日はこのまま一人で仕事をして、定時に帰れそうだ。正直いない方がいい。

 定時五分前にはノートPCをしまい、コートを来てシートに凭れていた。チャイムが鳴った瞬間に席を立ち、電気を消して部屋を出た。

 電車で吊革に掴まっていると、何だか呼吸が苦しくなってきた。マスクの中で深く息を吸うと咳が出た。駅を出て歩いていると、更に苦しくなってきた。途中で電柱に凭れて一息ついた。

 何とか部屋に辿り着くと、体温計を引っ張り出して測った。結果は三十八度だった。

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