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第38話 先輩とゲームで盛り上がる



 しかし、そうかそうか、成程成程……

 先輩の目的は、『戦国TUBU 5』のマルチプレイだったか。

 それならば色々と納得がいくというものである。


 ……何か変なことを期待していたんじゃないかって?

 馬鹿を言うんじゃあない!

 俺はこう見えて、しっかり自分のことをわきまえているのである。

 こうして女子の部屋に招き入れられたのだって、奇跡の類だと思っているくらいだ。

 それ以上のことなんて……、想像すらしていないからな!


 …………本当だぞ!?


 っと、俺は誰に弁明しているのだろうか……

 ともかく、俺はそういったことには一切期待していない。

 そもそも、俺は別に先輩のことを好きでも何でもないのである。

 先輩は確かに美人ではあるが、少なくとも俺の好みではない。

 俺の好みはそう、あの柚葉たんのような美少女なのだからな!



「……君はなんで拳を握りしめて力んでいるのかな?」



「……いえ、なんでもありません。失礼しました、乾杯でしたね」



 俺はそ知らぬふりで取り繕い、コップを掲げる。

 飲みかけではあるが、乾杯する分には問題無いだろう。



「……まあいいか。それじゃ、かんぱーい!」



「……乾杯」



 先輩のテンションに合わせるのは少し恥ずかしいので、控えめに乾杯に応じる。

 今度は先程のような失敗をしないよう、一口だけ飲むにとどめておく。



「さてさて、じゃあ早速始めましょうか」



「それはいいんですが、何故わざわざ自分を部屋に呼んだんですか? 別に、マルチプレイをするだけならいつも通りネットワークでもできるじゃないですか……」



「それはホラ、やっぱりネットだとラグとか色々あるじゃない?」



 そうだろうか……?

 確かに昔の作品はそういったことが多かったが、昨今のゲームではあまり気にならないと思う。

 『戦国TUBU 5』も、ネットワークマルチプレイに関しては結構快適であり、世間の評判も悪くは無い。



「ほ、ほら! 私の環境無線だからさ! 結構コッチ側だとラグ多いのよ! それに、私じゃクリアできないキャラもやって欲しいんだってば! 昨日言ったでしょ!?」



 先輩は、何故か言い訳するような感じで俺に説明してくる。

 しかし、言われてみれば確かに先輩とのマルチプレイ中は時々カクカクしている気はしていた。

 成程、原因は無線だったからか……



「先輩、本気でマルチプレイを楽しみたいのであれば有線をオススメします。無線は舐めプです」



「それは……、私も考えなくはなかったんだけど、やっぱり線引いてくるのはどうしても、ね」



 まあ、先輩の言う事もわからなくはない。

 俺も実家の頃は、迂闊にそういったことはできなかった。

 その……、音漏れとかも気になるしな……

 流石の俺も、ギャルゲーの音声が外に聞かれるの大分抵抗がある。

 ヘッドフォンならその心配もないのだが、アレはアレで外の音が聞こえ辛いからな……



「……成程。そういうことならわかりました。それで、どのキャラのシナリオを進めればいいんですか?」



「え~っと、イグニス様と、ダイダロスと……」



「え、何人もいるんですか……」



 聞いてみると、結構な数が未クリアのようだ……

 先輩の使うキャラは変に偏りがあると思っていたが、こういうことだったか…

 これは、結構な長丁場になるかもしれない。





 ………………………………



 ………………………



 ………………





「キャーーーー! 何てことするのよ!?」



「くっくっく……、世の中、金のある方がより金を稼ぎやすいものですよ?」



 あれから、約三時間が経過していた。

 俺と先輩は、現在『戦国TUBU 5』ではなく別のゲームに興じている。

 あのまま『戦国TUBU 5』を続けていると、徹夜コースになりかねなかったためである。

 残りのキャラはまた後日ということになったのだが、どうやら俺はまたここに来なければならないらしい……


 そんなこんなで別のゲームに切り替えたのだが、そのゲームがよりにもよって某有名ボードゲームだったのである。

 リアルに友人関係を壊しそうなゲームを引っ張り出してきたので、一体どういうつもりだろうと思ったが、どうやら他意は無かったようだ。

 まあチョイスはアレだが、確かに多人数向けのゲームなのは間違いないだろう……



(しかし、先輩は隠れオタクの癖に何故こんなゲームを持っていたのだろう?)



 まさか、このゲームを一人で……?

 もしそうだとしたら、中々ハイレベルなボッチ勢である……



「あ、また失礼なこと考えてたでしょ?」



「ぐっ!? 何故!?」



「いやいや、君ってホント顔に出すぎだから……」



 そんな馬鹿な……

 今まで、そんなこと言われたこと無いぞ…

 って、そりゃそうか……、だって俺、ボッチどころか引きこもりだったしな……

 ぶっちゃけ、俺は家族とすらあまり会話をしてなかったし、そんなことを指摘してくれる者など、いるハズもなかった。



「あれ、もしかして地雷踏んだ感じ?」



「い、いえ……」



「ま、まあ、過ぎたことはあまり気にしない方が良いよ? これから注意すればいいんだしさ!」



 それはそうなんだが、問題は俺がずっと無自覚だったことである。

 ほぼ無意識の癖を注意するなど、一体どうすれば良いのか……



「あはは、また顔に出てるよ? そんなに困った顔しないでも平気だって! もしまた変な顔してたら、なるべく私が注意してあげるからさ!」



「……お願いします」



 先輩に頼るのは何となく癪だが、現状頼れるのはこの人しかいないからな……



「……ってことで、報酬代わりにその物件、返さない?」



「それはお断りです」



「ぐぬぬ……」




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