食事
急に食事が並べられている大きな広間を見て、海斗と真理は目をまん丸にし、
「え?今のは何ですか?急に現れて……え?」
キョドりながらアリアスの方を見る。
「今のは転移魔法とでも言いますかね。まぁ一応神だから。使えますよ。この食事は2人の為に用意しました。お口に合うか分かりませんが。」
その言葉を聞いた瞬間、海斗は勢いよく並べてあって食事に食らいついた。
「これ、すげーうめぇ!!!!」
そうして瞬く間に魚、肉、果物。何でも食べていく。
その様子を見た真理は、
「海斗。行儀がすごく悪い。」
そう言われてようやく気が付いたのか、
「あ、わりぃ。」
そう言って綺麗に食べだした。やれば出来る子である。だが、海斗の勢いは止まらずに、遂には魚と肉を全て食べ尽くしてしまった。少し海斗がしょんぼりとした顔をする。
するとその顔を見たアリアスが、
「お代わりならいっぱいありますよ。」
と言って魔法でまた沢山の料理を出す。贅沢なものだ。
すると海斗の顔はにわかにぱっと明るくなり、また食べ出すのであった。一方の真理は、食事を取ったかと思いきや、匂いを嗅いだり、じっくり見たりして、未だに手を付けない。その様子を見たアリアスが、
「安心して。毒はないわよ。」
と言った事により、ようやく1口目を口に運ぶ。
すると、真理は目をこれでもかと言うほど開き、
「美味しい。」
と言って上品に食べだした。
そうして料理を堪能した後、アリアスから
「明日までまだ時間があるから、少しこの辺を散歩してみては如何?」
と提案され、海斗は真理の方を見る。すると真理はアイコンタクトで軽くウインクをする。その間約1秒。
そうして海斗は口を開き、
「いいんですか?なら近くを見て回ってみます。」
と言う。
そうして海斗と真理は天界を散策する事にしたのである。
天界を回って暫くした頃、海斗は真理の背中を叩き、
「天界って思ったより普通だったな。」
と話しかける。
その瞬間だった。
突然目の前が真っ白になり、数秒後には目の前に大きな樹かあった。更にその樹には、赤黒いさくらんぼの様な果実と、青白い林檎の様な果実が美しく実っていた。
「この樹、大きいし変な果実実ってるー。美味しいのかな?」
おあつらえ向きの喋り方を辞め、素の喋り方に戻った真理は不思議そうに海斗に聞く。
「どうだろうな。俺、食べてみる。」
そう言った瞬間、樹が揺れて、さくらんぼの様な果実と林檎の様な果実、どちらも5つずつ
落ちてきた。
「やめときなよ。なんかやばそうだよー?」
真理は注意するも、時すでに遅し、海斗は林檎の様な果実を齧っていたのだった。その林檎を食べた海斗は目を見開き、
「すげー美味い。真理も食べなよ。」
勧められてしまったので真理も林檎を食べてみる。
すると、爽やかで、かつ後味香る様な果汁が口の中に広がる。
そしてシャキシャキとした食感がアクセントとなり、まるで無限に食べられるかの様だった。
「美味しい……」
思わず口から声が零れてしまった。
真理は今度はさくらんぼの方に手を付ける。
すると今度は濃厚で、芳醇、それでいて何か爽やかな味がした。
小振りな実なので此方も無限に食べれるかの様だった。
「私はこっちが好みかなー」
真理はそう言い、もう1つさくらんぼに手を付ける。
「まりまりまじまり?俺はこっちの林檎っぽいのが好きだぞ?」
そう言い海斗は林檎を食い漁る。
「まりまりまじまりって何なの?まぁいいや、じゃあ私は残りのさくらんぼ、海斗は残りの林檎食べるよ。いいね?」
真理はそう提案する。
「おk。……林檎の方が美味しいと思うのに。」
その提案に海斗は乗る。
そうして落ちてきた全ての果実を食べ終わった直後の事である。
急にアリアスが現れ、物凄い形相で、
「最高神様方の御神木、世界樹の果実を食べたの?」
とアリアスらしくない怒気を含んだ低い声で聞く。
怯えた真理であったが勇気をだして、
「はい。食べてしまいました。ただ、アリアスさんに言われて散歩をしていたら、急にここに転移して。そしたらその……世界樹?から果実が落ちてきたので……つい……申し訳ございません。」
とアリアスに伝える。
するとアリアスが急に驚き、
「待って、今、果実が落ちてきたって言った?」
と聞く。その声色には少し焦りが紛れている気がした。
「はい。言いましたが。」
その瞬間、アリアスは転移し、1秒後には沢山の神々を連れて帰ってきた。
「どうかしましたか?」
真理は聞く。一方の海斗は硬直していて動かない。
すると、アリアスは
「説明するわ。」
と言って説明しだした。
「まず、この樹は世界樹って言って、最高神、破壊神と創造神の2柱の返還……まぁ消滅の事ね。の時の魔力で出来た樹なの。その樹には年中ずーーっと実がなるんだけど、その実を取る為には樹の上空に行かなきゃならなくてね。破壊神と創造神の魔力で出来てるから、上空には神でも太刀打ち出来ない怪物がいるの。その怪物を避けて、実を持って帰って来て、その実を世界樹の元で食べた者が、神になれるの。私も勿論実を取ったわ。どんな神になるかは運次第何だけど、破壊神と創造神には絶対になれない。なるには条件があるらしいんだけどね。これはもう眉唾かどうかさえ分かんないけどね、樹の近くに立ち、自然に果実が落ちてきた者が破壊神か創造神になれるらしいわ。」
そこまで来て、真理はおろおろしながらアリアスに聞く。
「私達……果実が落ちてきたんですが……まさか……」
「分からないわ。でも、1度だけ試して見るわ。痛いかもしれないけど我慢してね。」
そう言い、真理と海斗にアリアスは手を触れ、魔法を使う。
「《強制出力》」
すると2人の体がバチバチと言いだし、真理は赤黒いフードを被った死神の様な少女に、海斗は青白い揺れる炎の様な甚平を来た、正しく神。の様な少年になった。その姿を見たアリアスは、急に跪き、いや、アリアスが連れてきた神々も跪いた。そうしてアリアスが上を向かずに話しだした。
「我らが最高神様。この時を待っていました。」
突然の事に真理と、硬直が解けた海斗は驚き、
「「どういう事?説明して下さい(くれ)」」
その言葉を聞いたアリアスはやはり上を向かずに話しだす。
「貴方様方は、正真正銘、破壊神と創造神の跡継ぎでございます。」
だが、アリアスは悲しそうに続ける。
「しかし、契約の紙に書いてしまった為、その力を持ったまま転生、という形になってしまいます。申し訳ございません。」
真理が口を開く。
「顔を上げて。アリアスさん。それに、その肩苦しい言葉辞めましょうか。私はそういうの好きじゃないんですよ。それに、他の皆様も」
そう言われたアリアスは顔を上げ、
「ありがとうございます。」
と最敬礼をした。
「所で、この姿は何時まで続けたらいいんですか?できれば解いて頂けると有難いです。」
そう言われ、アリアスは慌てて、
「申し訳ございません。今解きます。」
と言って再び魔法を使う。
「《出力停止》」
「ありがとうございます。」
そんなやり取りがある中、海斗は状況を理解出来ず、真理に助けを求める。
「真理、どういう事?俺でも分かるように。」
やれやれ、と言ったかの様な声色で真理は答える。
「あんまりこの例えは使いたくないけどねー……異世界転生する前に創造神としての力を手に入れちゃったぜ!そのまま転生だ!!転生後は創造神としての力を使って俺TUEEEE!が出来るわ!みたいな感じ」
「分かりやすい説明ありがとうございます。」
「創造神と破壊神の能力は理解出来るでしょうか?」
アリアスが気遣って聞いてくれる。
「なんかなった途端頭に入ってきたから大丈夫。」
「差し出がましいことを……失礼しました。」
アリアスはそう言い、更に続ける。
「もう夜が遅くなろうとしていますので、今日はここまでにしましょう。明日は転生させますので、明日、転生後の名前、希望の世界、家柄、関係性などをお聞きしますね。」
そう言われ真理と海斗は上を見る。もうとっくに日は暮れていた。
アリアスが転移魔法でベッドルームまで送ってくれた。
部屋の中はとても綺麗で、かなり広い。しかも豪華な天蓋付。
「やばいねー……」
真理は1人でそう呟く。海斗とは性別の関係上、別の部屋になっていた。
「明日、どうなるかな……」
そう最後に呟き、真理は眠りについた。
余談だが、勿論風呂は綺麗だった。
火、木以外はなるべく毎日投稿にします。(火、木はかなり忙しいので……)