ゆっくり、ゆっくり参りましょう
ーキーンコーンカーンコーンー
無慈悲にも授業の始まりを告げるチャイムが鳴る。皆が真面目に授業を受けている中、不真面目な生徒が2名いた。軽くパーマがかかった、眠そうな目をした少女。
その少女の隣に、ボサボサとした癖毛の、顔立ちが整った少年。その2人は大きな、とは言わないが、ハッキリと先生の耳に聞こえるぐらいの声で話している。
「ねぇねぇ海斗?最近でたこのゲーム滅茶苦茶たのしーよ?今度一緒にやるー?」
少女は隣の少年、夜月海斗に話しかける。
「えっ!?マジで!いいの!?やる!!マジ真理様神!」
海斗はそう言い、少女、いや桜樹真理の方を向き座ったままだがひれ伏す。
一見恋人関係でもあるのかと見えるが、海斗の方は彼女持ちである。真理とは親友で、週5ペースで遊んでた程仲良しだった。
真理が口を開きかけたその時、先生が真理達の方に近寄り、
「お前ら、何度注意すればいいんだ!真理はともかく、海斗。お前はこのままじゃ志望校行けないぞ!?もう受験も迫ってるんだからいい加減まともに授業受けろ!」
海斗の志望校は一般的な大学であり、偏差値は中の上程度、一方の真理は日本でもトップクラスの大学であるが、真理はかなり頭が切れるため、楽々とA判定を取っている。一方の海斗はギリ入れるかどうかのレベルであった。
「はーい。すいませーん。」
やる気なく返事する海斗に、先生は半分呆れ、
「はぁ……本当に授業受けろよ。」
と言って授業を再開しだした。
そうして、一時間目が終わり、休憩時間になった。
二時間目の授業は課外授業だった。
目的地に行く前に大通りの道にある横断歩道を皆で通っていく。
海斗と真理はまた話しており、遅れてしまい、信号は点滅だったので走って通ろうとしたのだが、その時である。横断歩道に突如ボールが転がってきて、それを追うように子供が駆けてきた。
更に追い打ちと言うように猛スピードでトラックが此方に向かってくる。
ーヤバい、このままでは子供が。ー
「危ないっ!」
海斗がそう叫び子供の背中を押す。間に合わない、そう海斗は悟った。そうして海斗は横断歩道にバランスを崩して倒れ込む。トラックが来るまで後約2秒。
ー俺、もう死ぬのか。
そう思った海斗は、悲しみながら体を見る。この横断歩道はかなり荒いコンクリートだった様で、膝や肘、それに額の辺りから血が沢山出ていた。
「はぁ……せめて彼女ともっとデートしときゃよかった……」
大きな溜め息をついて、この世の未練を呟く。もうトラックは真近に迫っている。
その時、1人の人影が海斗に覆いかぶさった。
真理である。
「海斗が死ぬぐらいだったら私が死ぬよー。」
真理はそう言って、海斗を必死に守る。
トラックが猛スピードで横断歩道を通過する。
ーキィィィィ
甲高いブレーキ音を辺りに響かせる。
そして海斗と真理の視界が真っ赤に染まり、そのまま糸の切れた人形の様に意識が途切れる。
残念な事に、子供は助かったが、どうやら真理と海斗は助からなかった。
そうして、雲ひとつないような青い空の元、
クラスメイトの大きな悲鳴を響かせ、真理と海斗の短い人生は幕を閉じた。
皆様初めまして、なすおいしい と申します。この小説はちまちまかいておりますので、投稿ペースは遅く、拙い文章ですが、よろしくお願いします。