閑話 暖かな木漏れ日は甘味への道しるべ
「……はっ!? しまった。またこんな所でねちゃった。ゆやちゃんに怒られる……」
「シロ様ぁぁぁぁあああああ!!! やっと見つけましたよ! こんな所で寝ていては風邪を引いてしまいます! いい加減に『状態異常耐性』や『病気耐性』を買いましょうよ!!!」
「……よかった。起きる前に見つかってたらたぶん死んでた。うるさくて」
「ハッ!? うるさかったですか!? 申し訳ありません!!!」
クロくんを探す旅に出てから、けっこう経った。たぶん、1ヶ月は経ってると思う。今はちょうど、噂を集めて、冒険者になって色んなことにくびをつっこみながら、1つの国を通過したところ。
肝心のクロくんの情報は、まったくのゼロ。どこの国で何をやっているのか、まったくわからない状態だ。焦ってもどうにもならないのは分かっているけど、焦ってしまう。しょうがないね。
「騎士団のみんなは?」
「数人を先行させて偵察してもらってます! 私含めたそれ以外はまだ休憩中ですよ!」
「そか。じゃあ、帰ってくるまでは動けないね」
「騎士たちと模擬戦でもしますか? シロ様に稽古をつけて欲しいと皆言っておりますよ!!」
「疲れるからいや……」
「それは残念です! ささ、あちらへ戻りましょう! 火を焚いて間食も用意しております!!!」
「分かった。もどる」
クロくんは変な人だから、意識してなくても目立ってそう。情報が届くのは時間の問題だとは思う。「合格者」だから、変なスキル貰ってそうだし。
ゆやちゃんに先導されて、林の中の道をあるく。なんでこんな所に寝てたんだっけ? と一瞬疑問がでてきたけど、木漏れ日が気持ちよさそうだったからとか、そんなかんじだった気がする。
「ユナ様! シロ様がおられたのですね。おお、シロ様。間食の用意ができておりますので、こちらにどうぞ!」
「ありがとう」
「いえいえ! この前ご教授頂いたフライドポテトというやつが作れればよかったのですが、油の用意が難しく……結局、甘味になりましたが、どうぞご堪能ください」
「くるしゅうない」
この人たちは、いい人だ。いつも美味しいものを用意してくれる。……餌付けされてる訳じゃない。ほんとだよ?
馬の走る音が遠くから聞こえてきたのでそちらを見てみれば、偵察に向かっていた騎士が戻ってきたようだった。私に気づいた騎士が手を振ってくる。でも、今はおやつで忙しいから返事はできない。
「シロ様、どうやらクロ様っぽい方の情報が見つかったようですよ! ほら、直接報告なさい」
「はっ! 自分は少し先で出会った旅の方にお話を伺ったのですが、魔道王国エリフィンにて黒目黒髪で身長約170、そして見慣れない装備に身を包んだ男が、かの有名なエリゼ魔道学院の学生となり、国王と繋がりがあるらしく、他の要人とも仲がいいらしく……とにかく、目立っているとのことです」
「情報が全然まとまっていないではないですか。もっと要約する! 結論を先に伝える! 偵察を任されるのならば、そこはしっかりしなさい」
「も、申し訳ありません!」
報告してくれた人を、ゆやちゃんが怒る。いつも思うけど、みんな私と他の人で対応に差がありすぎるの。ゆやちゃんなんて私に対してはいつもニコニコして叫んでいるのに、騎士団員の人達には怖い顔してマジメに話してる。
とにかく、それっぽい人が見つかったなら、そこに向かわなきゃ。
「ゆやちゃん、その国に入るのは問題なさそう?」
「ええ、我が帝国とは特に摩擦もありません。騎士団まるごとなので警戒はされるでしょうけど、あの国には真実を見破る魔道具もありますし、こちらに敵対の意思がないと分かれば大丈夫なはずです」
「じゃあ、すぐに向かおう! ……これ食べおわったらね」
「了解です!」
「……あ、そういえば、その情報をくれた人ってどんな人だった?」
なんとなく浮かんだ疑問をそのまま投げかけると、ゆやちゃんが顎をくいっとやって、騎士に答えるようジェスチャーをした。それを見た騎士は敬礼してすぐに答えてくれた。
「はっ! 私が話を聞いたのは3人組で、着物を着た江閣宋出身らしき男性と、よく分からない服装をした女性、白衣を着た年配の方でした! 話を聞かせてくださったのは、着物の男性です!」
「きもの……? こっちの世界にも、きものあるんだ?」
「おや? シロ様の世界にもあるんですか? こちらの世界の着物はほとんど江閣宋でしか見られませんが、あそこは強者を求めて国を出る者が多いですからね。バクフの取り締まりも杜撰ですし。我々も、いずれ見ることができると思いますよ?」
「そうなんだ……まいっか。とにかく、出発しよう。目的地がはっきりしたなら、ペースアップするのもいいかも?」
「了解ですシロ様! ……お前ら、出発の準備はいいな! 今までどおり、一番隊が先頭に立て! 魔帝国ベルベットは迂回し、エリフィンへ直進するルートをとって進むぞ!」
「「「了解!」」」
甘いものを食べたから、ちょっと喉が渇く。ゆやちゃんが手を差し伸べて、私が立つのを手伝ってくれた。
知らない世界で、私が目的の為に進むことができるのは、ゆやちゃんや騎士団、ジンク皇帝たちのおかげだ。ついついそっけない仕草をしてしまうけど、感謝は忘れない。いつか、ちゃんとありがとうって言えたらいいな。
「いこう、みんな」
「はい。……よし、出発する! 一番隊から進めぇっ!」
待っててね、クロくん。私は、私たちを助けられればいいって思ってたけど、みんなも助けたいって思っちゃったから。大変かもだけど、がんばってもらうの。
空には変な形の雲が浮かび、見慣れない生き物が飛行している。それでも、気持ちのいい晴れた空は、気分も思考も晴れやかにしてくれていた。なんとなく、きっといい結末が待ってるんだろうな、って、思った。
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閑話として他の「合格者」についても書きたかったんですが、3章まで間を空けるのもなんなので、省略という形になりそうです。
「合格者」唯一の常識人であるシロは、見ていてほっこりしますね。見えませんけど。
また、今回の終わり方は、とてもシロっぽく書けたので、とても満足です。それではまた。




