007 見
よし、MPが最大まで回復した。ポケットに入れていたお気に入りの懐中時計を見ながら回復までの時間を計ったが、MPが1回復するのには1分かかった。つまり全回復にかかったのは40分ってことだ。
この40分が無駄にならないよう、しっかりとイメージしてからスキルを使わないと。
それから、この40分にいろいろ試したが、『鑑定』が非常に便利だった。やっぱりこっちがチートスキルなんじゃないかと思った。分かりやすい便利な使い方は──
① 対象のステータスを閲覧できる
② 自分の物理的な動きの最善を知ることができる。
③ 時刻を知ることができる
この3つだ。①は基本的な使い方だな。初見の相手には積極的に使いたいが、相手の能力によって阻害される可能性があるから注意したいところだ。②と③は、正直できるとは思わなかったことだ。「事象」ってのがどこまで指してるのか分からなかったし。ま、いろいろ試したかいがあったってことで。
ただ、②に関しては戦闘中に使うのは現状ほぼ無理といえる。相手の動き出しを認識した後に、自分がどう動くべきかを『鑑定』し、それを理解してその通りに動かなければならないのだ。戦闘のせの字も知らないような一般人ができることじゃない。
訓練するとしても、せめて発声なしで『鑑定』できるようになってからだな。
まあそれでも、汎用性の高さからしてチート臭さが増してきている。とりあえず、ステータス閲覧を発声なしで使えるようになって、より便利になってもらおう。
……なんだか、先達に倣って、鑑定先生と呼んだ方がいい気がしてきたよ。呼ばないけど。
何はともあれ、『魔力創造主』再チャレンジのお時間だ。MPの回復時間も勿体ないし、早いとこ食料を確保したいからな。
よし…
イメージ……イメージ……白米に包まれたエビマヨ……行きつけのコンビニのあのおにぎりと、キンキンに冷えた天然水を……
こいっ!!!
「『魔力創造主』!! おにぎりよ、できれば2つ出てくれ!!!!」
魔力が抜ける感覚と、目の端に映るステータスのMPの減少。そして、俺の目の前にはイメージ通り、おにぎり2つと2Lペットボトルに入った天然水が置かれていた。
「よし、よしっ!これなら食料と水問題はほぼ解決だっ!」
イメージしやすいだろうと、日本で1番馴染みのあったこのおにぎりと天然水を選んだが、その選択は大正解だったようだ。おにぎりも2つあるし。水も2Lあるからしばらくは持つだろう。
ただ、多く出しすぎたのかなんなのか、MPは0になってしまった。この大きさで50も消費したと見るか、食べ物だから消費量が多かったと見るか。検証することが多くて困るな。あんまり多いと覚えきれないんだけど。
ふと気付く。MPが0にまで減ったのにも関わらず、特にダルさも感じず、意識を失ったりもしていない。
(お、ラッキー!ここが面倒なシステムじゃないのはほんと助かるぜ)
さて、いよいよ実食だが……
……目の前にあるおにぎりと水をじっと見つめる。これ、俺の魔力、MPから生み出したんだよな? 本当に食えるのか? スキルの説明やスキル使った時のエフェクトからして地球から召喚したわけでも無さそうだし。
……悩んでいても仕方ないな。
「お腹壊れませんように、お願いします神様、っと。いただきます。…はむっ……おおー、味は違和感ないな」
軽く神に祈ってから、おにぎりを一口食べたが、地球で食べた時と味の変化は感じられなかった。美味しかった。
……あれ? 待てよ? 鑑定かけてみれば食べれるかどうかすぐ分かるんじゃね?
「『鑑定』」
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〇status
・基本情報
名称:おにぎり
作製者:黒野祐里
・保有値
品質:C
美味:A
量:E
・備考
地球の素材で造られている。具はエビマヨネーズ。複製不可。生物への害はない。
(ギフトスキル『魔力創造主』による作製。[作製者のみ閲覧可能な情報です。])
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〇status
・基本情報
名称:天然水
作製者:黒野祐里
・保有値
品質:C
美味:C
量:C
・備考
地球で採れた天然水。状態が非常に良く、生物への害は無い。よく冷えている。
(ギフトスキル『魔力創造主』による作製。[作製者のみ閲覧可能な情報です。])
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よかった。かなり安心できる内容だ。こんな森の中で腹をくだしたら面倒だったからな。
というか、品質がCってかなり高いんじゃないか?俺のステータスを見る限りだが、表記としてはFあたりが最低値っぽいからな。MPを50も消費した分品質が高くなったのかな。
༅
食料問題が解決したが、ここは(多分)魔物が蔓延る謎の森(シューケッツの森)。武器が、刀が、拳銃が欲しい! でもそんなもん正確にイメージできないからスキルで解決できない! だって平和な現代の日本人だもの!
……なんてことはないんだな〜、これが。さすがに日本刀は、実物を触ったことも見たこともないけど。拳銃は触ったことがある。詳しい種類とかは知らないけど。撃ったことも、分解して手入れしたこともある。
『知識庫』さんの情報から考えて、地上の魔物ならだいたいは拳銃があれば倒せそうだ。ただし問題が大きく3つ。
1つ目は銃声。撃つ時の音で周囲の魔物を引き寄せる可能性があるし、俺の耳が短時間でも聞こえにくくなるのはかなり危険だし、長期的にみれば難聴になる可能性がある。
減音器、消音器を創造できればよかったんだが、あいにくこっちは触ったことすらないから不可能だ。仕組みすら知らん。
2つ目は、作れても使うのがかなり怖いこと。イメージだけなら多分完璧だし、自信もわりとある。だが、拳銃ってかなり複雑な構造だから小さなミスが命取りになるし、イメージが細かいことでMPが余計に消費され、足りなくなることも考えられる。
3つ目は銃弾。……無理だよね。数がたくさん必要で、かつ精密さが必要なものだから『魔力創造主』は相性が悪い。
それに、銃弾の構造、正直知らない……。触ったことはあるよ?撃ったことも分解したこともあるんだからそりゃあねぇ。でもさ? 弾の中身は見たことなくない? まっぷたつになったとこなんて見たことないし火薬の量なんて調べたこともない。そう。無理なんです。
……え?なんで作れないことが分かりきってるのに問題をのりこえれば作れそうな雰囲気出して考察してんのかって?男のロマンだからに決まっておろうがばかちんがぁ!
9時だし暗くなったしもう寝る!!!
おやすみ!!!
主人公が能天気に見えるのは割と壊れてるからです。アホだからじゃないです(多分)。