表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/179

076 共有

 赤色の魔物。思い出すなぁ、この国に来たばっかの頃を。つってもまだ数週間しか経ってないけど。


 この国に入る直前戦った赤色のオーク。通常のオークより明らかに強く、強国であるエリフィンが警戒するほどの異常種。

 それがこんなに大量にいるってことは……まあ、人為的なものだったってことだな。エリフィンが門を閉じて警戒していたのも、人為的な物だと気付いていた可能性が割と高い。気がする。


 そんで、その人為的に赤色の変異種を作れる奴が、学院を襲ってきたと。目的はなんだ? 観戦に来ている国王って可能性は高いな。でも、祭りの始めに挨拶とかもなかったし、まともに紹介すらしていなかった。この襲撃を見越してこの場にいないって可能性は念頭に置いておきたい。

 で、念頭に置いた上で俺がやるべきなのは、多分国王を守ることだ。未来を選んだ巫女様が俺をSランクにしたのは、国王と接触できるようにするためだと思う。考えすぎならそれでよし。俺がそう勘違いすることも、巫女様なら織り込み済みだろう。


 巫女様に会ったこともないのに抱いてる信頼度たけーな。やっぱ未来が見えるって反則だ。



「ウィズィ、赤色の魔物が大量にいる。操ってる奴とか黒幕っぽい人影は見当たらない。赤色が観客席に向かう様子はまだ無いけど、観客席はパニックになってる。狙われたらヤバい」

「……分かりました。その件についてはある程度報告が上がっています。情報の共有をしましょう」

「そういうの先にやっといて欲しかったなぁ!」

「ユーリさん相手だと迂闊なことが出来ないんですよ……すみません。赤色は、錬金術師レファ・アークストーンによって改造された魔物です。レファは黒豹に所属しており、ユーリさんがアジトを潰したタイミングで既にミトスクルアーノ男爵と共に居たようです。私が男爵を逃したのも、レファの妨害によるものでした」

「……それ今言うことか?」

「今言うことです。ですが……遠回しな言い方でした。すみません。……赤色は、人体実験の産物です。赤色は、人体の一部ないし全てを取り込ませて『錬金術』で改造したモノだと、解析結果が出ています」

「…………エリクサーがあれば元に戻せるか?」

「……無理でした」


 力なく首を横に振るウィズィは、今朝久々に顔を合わせた時よりくたびれた表情だった。

 周りにいるSクラスの面々は、空気を読んだのかなんなのか、こちらを見守ったまま一言も喋らない。いや、これでもまだこちらを見ない奴もいるが。


「殺すしかないか」

「……はい」


 ウィズィは断言するが、間からして恐らく嘘だろう。可能性はなくもないが、何らかの理由で不可能だというところか。だから、殺すという最も「良い結果」に近い選択を俺が迷わず選べるよう、後押ししてくれたのだ。


「答えろウィズィ。アイテムが必要なら全ての障害を無視して俺が工面できる。殺すしかないというのはアイテム不足が原因なのか?」

「ぇ…………いえ、すみません。それでも不可能です」

「そうか、分かった。俺は国王を探して護衛にいく。ここにいる赤色は、全部殺しておこう」

「すみません……」


 この短時間で、ウィズィは一体何度謝罪しただろうか。お前が謝ることじゃないだろうに。


「ドレスコードNo.1(ワン)・冒険者。『召喚』・箔刀(はくとう)。『魔道』・【天道】。『詠唱形骸化』・『強化せよ』・【身体強化】。じゃ、行ってくるよ。『四季風』・【居吹(いぶき)】、『空歩』起動」


 さてさて、ひと足お先に個人戦と洒落こもうか。




 ༅




「『四季風』・【神達風(かむたつかぜ)】」


 強い風で赤色の変異種はほとんど全て動けなくなる。後は端から切るだけだ。だいたいゴブリン型30匹、オオカミ型10匹、スケルトン型15匹、オーク型5匹か。10秒でやろう。


 さっき『召喚』スキルで手元に呼び寄せたのは、箔刀(はくとう)という『魔力創造主』で創った刀だ。金箔程に薄く、耐久力も全くないが切れ味が異常に鋭くとても軽い。

 鞘に入れようが入れまいが、地面に置いた衝撃で折れるような代物だ。当然のように鞘はなく、常にコア・ネックレスに保管している。空気抵抗でも折れかねないので、持ち運びには本当に気を遣う。


 ただ、切れ味だけは本当に一級品だ。血を吹き出しながら訓練した『刀術』があってこそだが、攻撃が通りにくかった赤オークでさえ軽々と切り裂いた。

 そういえば赤オークは再生したっけな。いや、再生じゃなくて『凶暴化』だっけ? とにかく、弔いの意味も込めて火葬しよう。10秒超えるけどこれは倒した後だからノーカン。


「『神の炎よ、死してなお囚われ、弄ばれし悲しき魂を浄化せよ。存在を汚されし憐れな肉体を解放せよ。神の赦しを与えたまえ』火属性第六位階【神氣楼(しんきろう)】」


 神の炎は全てを焼き付くし、変異種達は灰すら残さず燃え尽きた。

 行こう。とりあえずドローンで国王がいそうなところは目星を付けた。ウィズィが教えなかったってことはアイツも国王の場所を知らないってことだ。誰に聞いても確認は取れないだろう。だから、そこにいなければ次は王城だな。急ごう。

下の☆を★にしてくれると嬉しいです!


エリクサーは元の状態にしてくれるので、『錬金術』で完成してしまった個体はその状態が「元」の判定になる、ということです。

『錬金術』以外にも、似たことができるスキルはあります。『融合』『同化』『変身』とか。後ろの2つは自由に解除出来ますけどね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ