075 異変
『さあさあ第3試合です!!! すでに生徒達は控え室を出て会場で待機しております!!!』
『第3試合、というか本当は第3回戦ですね。ツッコミが遅れて申し訳ない』
『んん? それって何か違うんです? まあ細かいことは気にせずにいきましょう! 訂正はしますけどね!』
『個別空間での試合は先程の試合だけで終わりですね。ここからは、闘技場で場所を半分に分けて行われることになります。その後のシード戦と決勝は闘技場貸し切りですから、是非目指してくださいね!』
今回の祭りは勝ち抜きのトーナメント。試合数の調整かよく分からないが、普通の出場チーム数10のトーナメントみたいに上下ブロックに別れる形ではない。最初に2チームずつ当てて、修学部3年と本校舎組修学部をぶつけて勝った方がシード扱い、という感じだ。
文字で説明するより図にした方が分かりやすいな。気になる奴は各自描いてみてくれ。以上。
……とにかく、次に行われるのが修学部2年vs高等部3年、高等部1年vs修学部1年の2組ってことが分かればいい。
「正午ちょっと過ぎで団体戦は終わりだっけ……やってみると案外すぐ終わりだな」
そう呟くと、いつの間にか隣に来ていたウィズィが言葉を返してきた。
「負けたチームは余計にそう思っているでしょうね。とは言っても、午後の個人戦を本命にしている人もそれなりに多いですから。あんまり気に病んでいる人も少ないでしょう」
「そんなもんか」
「ええ。それに、1番多く戦うチームでも4戦だけですから、同じように思っている方は多いかもしれませんね」
まあ、なんにせよ俺は流れに乗って楽しむだけだ。あっという間に感じるなら、それは俺が存分に楽しんでいるってことだな。
「次も頼むよ、リーダー?」
「おや、貴方に頼まれては尽力するしかありませんね」
そういや、次当たる修学部1年って……ルチルの居るとこじゃないか? これは負けられない戦いというやつだな。
༅
「あの魔道具凄かったね~」
「発動されたら確かに面倒だな。そんなヘマしないけど」
「う~ん、確かにそうだね。起動に必要な道具が四つだし、同時に起動する制約もありそうだし、よっぽどじゃないとあんなおもちゃには引っかからないかぁ」
「魔力を奪うっていう性能を伸ばしていけば面白いもんができそうだが……ま、難しいだろうな」
彼らの観戦は、そのほとんどがどうも「自分と戦うことになったらどうなるか」という視点で行われるようだ。
少女が話を振って男が答える、というパターンもよく見られる。明るい性格の女性が相手だと、男性はコミュニケーションにおいて怠惰になるのかもしれない。
「ねーねー、震舌くん決勝戦まで観るの? それとも午後の個人戦まで観る?」
「……いや。そろそろ始まるだろう。レファの作品は気分が悪くなるからな、もう引き上げるよ。咎はどうする?」
「レファって誰だっけ? まあとにかく、私は震舌くんについて行くよ! スイーツ奢ってもらわないといけないし!」
「忘れてないからそんなにアピールしなくてもいいよ。あとレファは……そうだな、頭の悪い天才錬金術師だよ。黒豹と取り引きした時にも会っただろう? なんであんな弱い組織に入ったかは知らないけど、アイツの思考なんて考えるだけ無駄だから咎も気にしない方がいい」
「あ、思い出したよ! あのどこ見てるか分からない気持ち悪い人だね!」
「ははは! お前がそんな事言うなんて珍しいなぁ! しかし同感だよ、アイツは本当に気持ちが悪い」
後ろの席に座っている人は、(そんなに気持ち悪いなんていったいどういう人物なんだ……?)と一瞬考えたが、すぐに無心になった。1時間以上彼らの後ろに座って学んだのだ。聞こえていないフリをするのが1番いいのだと。
震舌と呼ばれている男が立ち上がると、それに続いて咎と呼ばれる少女が立ち上がる。ちょうどそのタイミングで、闘技場から大きな音が聞こえてきた。実況解説の声でも、戦闘による音でもない。なにせ、まだ作戦フェーズ前の待機時間なのだ。
「チッ。ちょっと遅かったか。咎、ズラすぞ」
「そんなに嫌いなんだ、覚えておくね! あとりょーかい! 」
次の瞬間、男女2人組の姿は跡形もなく消え去っていた。
༅
ドォォォォォォオッッ!!!!!という、大きな音が、試合前の待機時間中に突然響き渡る。闘技場のステージである石の床が破壊された音だと分かったのは、音が聞こえた少し後、なんとか現場を目にしてからだった。
待機場所は前回と同じく土の壁で囲われており、音の発生源を見ることが出来なかった。そのため仕方なく鳥型ドローンを飛ばしたのだ。そうして視覚情報を得てみると、明らかな異常事態が起きているのだとすぐに理解した。
何故かって? そりゃこんなとこに魔物がいる訳ないからだよ。それも、皮膚が赤い変異種が、ウンザリするほどいるとはな。
評価お願いします……してください……
あ、もちろん少しでも面白いと思ってくれたらです
なんか前話あたりのあとがきに震舌くん達はメインストーリーにまだ関わってこないって書いた気がするけど撤回します。書いてなかったらスルーしてください。




