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069 開幕

会話文が長かったので、行間がいつもより空いています。ご了承ください。

 黒豹のあーだこーだがあった日々が異常に濃密だったせいか、あっという間に数日が過ぎ。学年対抗戦当日がやってきた。



「さあさあいよいよ当日となりました、エリゼ魔道学院第38期学年対抗せぇぇぇぇん!!! 本日、午前中の実況を務めます!(わたくし)!放送委員のミミと申します!本日はよろしくぅぅぅぅぅぅう!!そして!!!」



 早朝の闘技場に、底抜けに明るい声が響き渡る。何かしらの魔道具によって拡声されているようだ。


 俺のコア・ネックレスに似た原理なのか、空間を創り出し保存することが出来る魔道具によって、本日のエリゼ魔道学院はいつもとは違う様相を呈していた。闘技場である。とてつもない広さの闘技場は、エリゼ魔道学院の半分以上の敷地を覆うほどの大きさで、中の様子が見れるようにいくつもの画面が浮遊して観戦席の前に浮かんでいた。また、その闘技場の周りにはいくつもの出店が並んでいる。

 上書き、というのが分かりやすいだろうか。学院があった場所に、闘技場が上書きされた。そんな感じだ。


 ミミと名乗った少女に続けて、大人しめな男性の声が聞こえてくる。



「本日、午前中の団体戦での解説を任されました。本校舎修学部で教師をやらせていただいております、ジェーダス・フロックです。新入生の方も、大抵顔見知りである在校生も、どうぞよろしくお願いします」


「はいぃぃぃい!非常に丁寧な挨拶、ありがとうございますっ!……っと、始まる前からこんなテンションでは、身体が持ちませんね。少し落ち着いていきましょう。さて、我々の後ろにある大時計を見れば、時刻は現在午前6時半。開始まであと30分といったところです」


「早朝からだいぶ遅い時間まで続く超ハードスケジュールですからね。毎年生徒達から、日程を2日にしてくれと懇願が届けられるのも恒例行事ですね。フフ、全部理事長である国王様が却下しちゃうんですけどね」


「ハードスケジュールとは言っても、一学術機関としてのイベントですから、当然生徒たちの安全には気を使っております! 配布されるポーションや、再現空間を生み出す魔道具による戦闘などなど! 参加される生徒も、観戦の皆様も!ぞんぶんに楽しんでいってくださぁぁい! 修学部の方は自由参加ですし、初等部の方は年齢的に参加出来ないですけど、出店がたくさん出てるから楽しんでいこぉぉぉぉお!!!

 ……おっと、またテンションが上がっちゃいましたね、反省反省!」



 いつもよりかなり早い時間に起きた俺たち生徒には、キンキンと響いてくるような実況者の声は少し厳しいようだ。俺も、冒険者として早朝に起きることはあったが苦手な部類なので、正直この声はやめてほしいところだ。

 クラスごとに分けられた控え室では、同じクラスの他メンバーの面々が既に集まっていた。緊張しているのが分かる顔もチラホラ。そして、こっちを向いてニコニコとしている顔がふたつ。雲ひとつ無い空を写しているようだ。



「……ウィズィ。久しぶりだな。って言っても3日ぶりくらいだけど。さすがに今日は来たか」

「ええ。国王陛下がご覧になりますので、欠席は許さないと当主様より仰せつかりまして」

「例の件はどうなった?」

「……まだ、捜索中です。ですが、時間の問題です」

「あー、赤オークのせいで門が閉じてたもんな。……ダジャレじゃないぞ?」

「はいはい。ですがそうですね。こちらは任せて欲しいと見栄をきっておいてこの体たらくですから、どんな顔をすればいいのか……」

「笑えばいいと……って最初からずっと笑顔じゃねぇか。怖いわ!」



 ダジャレじゃないぞ?のくだりはまだ3回しかやっていないのにあしらうのが1番だと気付かれてしまったようだ。

 ウィズィの貼り付けたような笑顔とは裏腹に、もう1人の笑顔の主──フロースは純粋に楽しみで仕方ないといった様子だ。口角が天元突破している。かわいい。


 ……ウィズィが変な様子になってる原因は、ミトコンドリア男爵を取り逃した失態から来ているらしい。まあ、あの報告の翌日にその連絡が来た時は俺もかなり驚いたけどな。一応、警戒して結界生活は続けている。

 ラノアとの戦いで魔力が0になった時から、その翌日の昼まで。12時間にも満たない時間しか、結界を解除していた時間はなかった……ま、どうせすぐ解除できるようになるだろう。すまんエーシャ、ミーシャ。



「しかし、思ってたより随分適当なマッチングなんだな」

「年度始めの学年対抗戦ではお約束みたいですよ。力量差を考えない完全ランダムマッチング、僕は好きです。あと、一試合目くらいはゆっくり観戦できるように、という事で1組しか行われませんが、二試合目からは複数の試合が同時に行われますから。私達も二試合目でしょうから、心の準備をしておきましょう」

「確か、自分が強者だと思う者は最初は大人しくしてないとダメっていう決まりもありませんでした?」

「あ、それ私も聞いたことありますね! イベントの雰囲気を壊す者、風紀委員が切って捨てよう!ってやつですよね!」

「なんじゃそりゃ」



 思わず苦笑が漏れる。ここの風紀委員ってそんな感じなのか……? ノリが良さそうというか、なんというか……


 俺の心中に疑問が生まれたのとほぼ同じタイミングで、第一試合が始まるようだ。


 団体戦は、魔法・武器・魔道具・刻印・魔法陣のみ使用可能の乱戦で、勝ち上がり式のトーナメント制だ。一応、敵味方の区別が着くように上から赤青各色のマントを羽織ることが強制されている。

 この大雑把なルール、オリエンテーションとしてならありかとも思うが……ま、細かいことはいっか。



 第一試合は、高等部2年VS修学部2年のようだ。高等部二年次、SクラスからDクラスまでの約200人と、修学部の約50人。闘技場に既に集まっているが、高く厚い壁で細かく分けられているようだ。チームと、クラスで分けてるんだろうな、多分。

 上からの俯瞰映像をパッと見ただけでは、高等部が圧倒しそうな光景だ。


 ちなみに、控え室は闘技場の周りを囲んでいる観客席の真下にあり、壁の一面が透明になっており観戦できる。その窓からは少々見にくいが、観戦席の前にあるのと同じ画面が両脇の壁に張り付き、戦闘している場面がアップで映されるようだ。俺がドローン使った時みたいだな。魔道具バンザイ。高性能バンザイ。



「さてさて、時間となりましたので、早速いきましょうか。とは言っても、10分間の作戦フェーズですが……一日の初めですから、張り切っていきまっしょぉぉぉぉおう!!!」

「新入生の皆さん、見逃し厳禁ですよ~」

「ではでは~……第一試合作戦フェーズ開始ぃぃぃぃい!!! さあ! 各クラスを隔てていた壁が取り払われ、他のクラスと意思疎通が取れるようになりました!!!」



 開始の合図と共に、炎の塊がいくつも上空へ打ち上がる。それは高く高く飛んで、少しすると一定の高度に達したのか一斉に爆発した。それと同時に少しの揺れを感じる。闘技場の生徒達が一斉に動き出したようだ。



用事で少し間が空きました、申し訳ない。そして、今週もちょっと難しいかもです。もちろん、余裕あれば投稿しますよ!


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