063 爆破
「ウィズィ。今日動こうと思ってる」
「そうですか……できれば、私の手の者を連れて行っては貰えませんか?」
「問題ない。なんならウィズィも連れて行ってやろうか?」
「いえ、さすがに周りの者に心配をかけてしまうので遠慮しておきますよ」
「そっか」
〈魔法の歴史〉の授業が終わり、今日の必修科目は全て終了した。すぐにプリントを片付け、バッグ(ちなみにウィズィが選んだ物)を持って立ち上がる。
今もエーシャ達のいる家には結界を張っている。黒豹もそれをわかっているのか、たまに気配を感じることはあれど結界に攻撃を仕掛けてくることは無かった。
しかし、いつまでも子供を閉じ込めたままというのも悪い。さっさとカタをつけてしまおう。
「じゃあ……まずウィズィの配下を呼びに行くか?」
「いえ、その必要はありませんよ」
ウィズィはそう言うと、ブレスレットの1つである細い金鎖を引きちぎる。引きちぎるための身体強化とは別の魔力を『気配察知』で感じる。
エリフィンの冒険者ギルドで聞いたとおり、魔道具──それも、遠距離との簡易的な通信ができるタイプのようだ。
この世界での遠距離通信ができる魔道具は、基本的に超高価である。空気中にある魔力……いや、魔素って呼ぶんだっけ?いや、それともマナ?調べたのが前すぎて忘れたな。とにかくそれの影響で、離れた位置に影響を与えるのが単純に難しいってのが最も大きい理由らしい。
「おーけー、んじゃ行ってくるよ。また明日」
「明日は休日ですよ? また来週、です」
「……ああ、そっか。そういやあったな週末の休日。忘れてたよ」
「えぇ……」
冒険者として生活していれば、休日は自分たちで決めることになる。俺たちの場合は2日動いて1日休むことを基本としていた。他の冒険者達も、俺たちと同じか、3日働いて1~2日休むパターンか多いらしかった。
基本的に冒険者は命を懸けて戦う職業だ。何でも屋という側面は確かに持つが、ランクが上がるにつれ危険度は増していくのもまた事実。その中で、しっかり休みをとる大切さを学んでいくのだ。
そのように休みが一般人とは異なる生活をしていたせいか、週末の感覚は薄くなっていた。……そう、この世界にも「週」の概念があった。7日で1週間、4週で1ヶ月。1週間はそれぞれ魔法の属性になぞらえて、それぞれ、火、水、風、土、無、光、闇の日と呼ばれている。
基本属性でもない無、光、闇が入ってくるのはよく分からないが。理由もありそうでなさそうだし、今度調べてみようかな。
「んじゃ。行ってくるよ」
「校門のところに私兵が5人ほど来ていると思います。この紋章が胸にあるので、その方達に声をかけてください」
「了解だ」
今日は修学部のクラスに顔を出す必要はない。今日予定があるのは、昨日伝えておいたからだ。今朝一緒に登校しなかったのも、連絡事項が特にないからというだけの理由だ。……決して、俺が寝坊して時間ギリギリになった訳では無い。
校門のすぐ外に、ウィズィの言っていた5人の兵士がいた。胸の紋章からしても間違いないだろうと、確証を持って声をかける。
「ウィズィ様より仰せつかって参りました、Sランクのユーリと申します」
「……ご丁寧にどうも。しかし、貴方のような方が本当に?」
「ちょっ……おい!」
ふむ。どうやら疑われておるな。疑ってきた兵士を隣にの兵士が慌てて止める。……しかし、証明といっても……ああ、そういやタグがあった。左の手首に埋め込んでいるタグを取り出す。透明感のある……というか金属光沢のある水色のタグ──ミスリル製らしい──を提示してみせる。
「Sランクになった時貰った証明証です。これでよろしいですか?」
「ヒッ!? あっ、ああ! ご提示感謝致します!」
「……ご無礼をお許しください、ユーリ様」
「頭を下げるのはよしてくたさい、目立つのは好きじゃないんです」
「仰せのままに。では、早速移動しましょう」
先程までとは打って変わって従順な意志を見せる兵士。どうやらミスリルのギルドタグってのは有名なようだ。
༅
半円状に広がる住宅街、そのうち歓楽街のあるエリアの途中から外周にかけてスラム街が広がっている。文字にするとかなり広そうに思えるが、実際歩いてみるとそう感じないのは何故だろうな。
「ここですね」
「……ウィズィ様より聞いていた場所と異なるようですが、ユーリ様がお調べになられたのですか?」
「ああ。スラム街で一番人が多く、人の出入りもそれなりにあるけどそれを隠している。ここが誘拐した子供を集めるだけの場所だとしても、潰しておいて損は無い。
他にもそれっぽい場所をピックアップしてるし、ウィズィが調べたアジトだと思われる場所も把握してるから後で回るつもりだよ」
「了解しました」
移動中に話しとけよ、という通達を済ませてから、兵士の準備が完了しているのを確認して突入を決行する。ちなみに、さっきまで敬語を使っていたが、兵士相手に今更へりくだる必要も無いと気付いたのでやめることにした。
突入する建物は二階建て、木造でスラム街にしてはしっかりした造りをしている。
扉を開けると、何かが投擲されたのを感じる。黒く塗られているせいか明かりのついていない室内では視認が難しいが、風きり音が聞こえる。
魔道具だったら避けると危ないかもしれないと『高速思考』の中で考え、土壁を創造して防ぐ。土壁に刺さったそれはタイムラグなく爆発したが、土壁を壊すほどの威力は無かった。
土壁を消すと、以前ミーシャを連れ去ろうとした奴らと同じ格好をした男が数人見えた。マスクのようなもので顔を隠しているため表情は見えないが、あまり驚いているようには見えないな。
「返してあげるよ!」
俺はそう言うのと同時に『魔力創造主』で手榴弾を2つ創造し、すぐさまピンを抜いて投擲する。
さっきは土壁だったが、次は結界で自分たちを守り、同時に透明なのを利用して相手の様子を伺う。動けなくなったのは2人、残りは3人。
「なるほど。机なんかは特別製なわけね」
机の陰に隠れられた3人が生き残り、爆風で動きはしたが椅子や花瓶も壊れていなかった。さっき創造した手榴弾は魔力的なものを何も持たないただの爆破物だったから、魔力でしっかり保護された物を壊すほどの威力は無いのだ。
『気配察知』で、地下にいる存在が動き出したのを感じる。逃げられても追い付けるが、面倒だ。さっさとすませよう。
久しぶりの戦闘な気がする。場面転換後の戦闘前の導入、もっと時間かけた方が良かった気もしたけど主人公の性格的に難しかった……
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