055 身分
~覚えにくそうな名前~
ラズダム公爵家ウィズィ(仲良いかも)
メレディ伯爵家ラウル(新しい人)
「はよーっす」
「ユーリさん、おはようございます。服も良くお似合いですよ」
「俺も割と気に入ってるよ。貴族に見劣りはしないけど貴族的ないやらしさがない」
「そういうオーダーでしたからね。また今度、服を買いに行きましょう」
「う……それは勘弁」
翌日、学校に投稿した俺はウィズィが選んだ服に身を包んでいた。
ウィズィの感覚からしたら服を買いに行くことは遊びに誘うようなものかもしれないが、マネキンサイドとしては敬遠してしまう。
「チッ……」
随分と嫌われたものだ、と独りごちる。ウィズィと話す間感じる刺々しい視線は、到底心地よいものでは無かった。
「やれやれ……」
そういえば、昔やれやれ系主人公の小説が流行ったと聞いたことがある。やれやれ系主人公がなんなのかよく分からんが、やれやれ言ってれば俺も物語の主人公になれるかもしれないな、うん。
適当な席に着いてそんな頭の悪いことを考えていると、横から突然声をかけられた。
「あの……おはようございます」
「……ああ、俺か。おはよう。えーっと……フローラ? だったっけ?」
「いえ、その、フロースです。そっちは、ユーリさん……でいいですよね?」
「ああ。悪いな、人の名前を覚えるのが苦手でね」
「そんな、気にしないでください。その……仲良くしてくれると、嬉しいなあ……なんて」
「それはこっちのセリフだ、いつ声をかけようか考えてたところだよ」
「ほんとですか! 良かったです……」
自己紹介が唯一記憶に残っていたフロースと仲良くできそうなのは、嬉しい限りだな。とりあえず、ボッチは回避できそうだ。
そうしてフロースと話していると、いつ現れたのかウィズィが口を挟んでくる。
「初めまして、フロースさん。ユーリさんのついでにでも、仲良くしてくれると嬉しいです」
「ウィ、ウィズィ様!? そんな、恐れ多いです!」
「私自身あまりそういった事は気にしませんし、なにより同じクラスの仲間なのです。ぜひとも、ユーリと同じように接してください」
「なあウィズィ、その言い方だと俺も敬語を使われそうじゃないか?」
「おや、それは盲点でした」
「ユーリさん!? 次期公爵様にその言葉遣いは失礼すぎますよ!?」
そうして癖で軽口を叩いていると、厳かに声をかけられた。
「そこの平民の言う通りだぞ、冒険者よ。貴様がなんのコネでSクラスに入ったか知らんが、調子に乗るのも程々にするがいい」
「……メレディ伯ラウル。あまり強い言葉を使わないでください。彼らは貴族ではないのですよ」
「ラズダム公。貴方にも言っておくが、あまり下の者に肩入れするのはやめるべきだ。格の違いを軽く考えるな」
「忠告ありがとう、ラウル。ですが、少なくともユーリさんに関しては心配いりませんよ」
「……何が言いたい」
「私の一存では話せませんが……ユーリさん、この学院でご自身の身分を明かされる気はありますか?」
口を挟んできた見知らぬ貴族は、最初の平民を下に見た強い口調によって第一印象は最悪だったが、後々の言葉を聞くにただの固い人物という雰囲気もしていた。
そうして話を振られた俺は、呆気に取られ返事に困りつつなんとか返答する。
「うーん……騒がれるのは面倒だし、見下される程度なら気にならない。とはいえ、力を隠すつもりもあんまり無い……そうだ、巫女さんのご意向はどうなんだ?」
「ユーリさん、巫女の話題をそこで出す時点で相当な身分だとバレますよ……もう遅いですけど……」
「……」
「質問の返事としては、特に指定は無いのでユーリさんの好きにどうぞ、という感じですね」
「そうか……うん、じゃ、言わない方向で!」
俺は元気よくそう言い放ったが、フロースと見知らぬ貴族さんは若干引き気味になっていた。
……あれ?回避したと思っていたボッチが近付く足音がするぞ?
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