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「契約は完了ですね。それでは、私はこれで。この後、多分驚かれると思いますが、敵ではありませんのでご容赦ください。では失礼します」

「え? ちょっと! ……え!?」


 ウルさんはそう言い残して部屋の扉を閉めた。その瞬間、部屋の中に気配が1つ唐突に現れた。ギルドマスターの部屋にいた時とは違って、今回のは隠れるのを辞めたような、そんな感覚だ。


「……やあ。Sランクユーリ、Dランクルチル、孤児エーシャ、捨て子ミーシャ。初めまして。僕は冒険者ギルドエリフィン支部情報顧問、ノーウェン・リステンダート。偽名だ。よろしく」

「……ああ。よろしく」


 これはまた……カッコいい奴が出てきたな。整った顔というかなんというか……ダウナー系の性格も相まってイケメン指数が上がっている。声もカッコいい。なんだこの憧れの塊みたいな人は。

 ルチルが小声で「信用して大丈夫なの? めちゃくちゃ胡散臭いんだけど?」と聞いてくるが、先のウルさんの言もあるし大丈夫だろう。ルチルには頷きを返しておいた。


「君たちの求める情報は理解している。が、一応組織に属する者として、形式に(のっと)った質問から始めよう。“何が知りたい?”」

「ミーシャを誘拐しようとした組織及び、その後ろにいる貴族──なんとか男爵についてと、その理由。あわよくばこの問題の解決方法まで」

「……フッ、私は参謀ではない。作戦の立案は仲間と相談するといい」


 そう言うと、ノーウェンの雰囲気が少し真面目なものに変わった。


「ミーシャを誘拐しようとしたのは、〈黒豹(くろひょう)〉という組織だ。定期的に子供を誘拐し、貴族へ(おろ)している。()を越えられないために他国へ手を伸ばしてはいないが、それなりに大きい組織だ。後ろにいるのはミトスクルアーノ男爵。武家であり、その力を強めるために人体実験を繰り返している……」


 ノーウェンによれば、この国では人体実験を行っている貴族が3つも存在するらしい。多いのか少ないのか……俺は多いと感じた。それと、この国のトップの目は割と穴が多そうだとも思った。

 ミトスクルアーノ……確かにミトコンドリアに似て……るか?


「ミーシャを狙ったのも人体実験の材料とするためだ。エーシャが狙われなかったのは、目標が発展属性──命属性のスキル持ちだからだ。……予想はしていたようだな」

「ああ」


 しかし、困った。大元を潰すくらいしか解決策が思い浮かばない。

 俺の質問が止まると、ノーウェンが声をかけてきたので、切り替える。


「冒険者ギルドという組織はSランクからの求めには基本従順だ。一国家と同等の価値がある、というのが基準の1つだからな。他にも聞きたいことがあれば答えよう。無論、知らないこともあるが」

「……では、遠慮なく。俺が学院にの入学試験を受けた時、向こうから話しかけてきた貴族がいた。……確か、公爵だったか」

「ユーリ、ウィズィ・ラズダムって名乗ってたわよ」

「そうだっけ? ……そいつが接触してきた目的が何か分かるか?」

「ああ。それは把握している。未来視の巫女が君について述べた内容は、王族と四大公爵家、あとは巫女殿の実家たるレウル伯のみに通達されている。その影響だろう。ラズダム家次期当主ウィズィ・ラズダムは、見たものを問答無用で看破する〈真実の魔眼〉を持っている。“隠されたものを(あば)く”という力だ。隠蔽を使っていると逆に見破られる」

「なるほど、それでか」


 ステータスの高さを見抜いたことを匂わせるような発言をしていたからな。深読みしたが、申し訳なさから来たものか? 正直に言えよと思ってしまうが、あのような公の場で自分の能力を言うのがはばかられたのかもしれないな。


「ちなみに、完全な興味本位から聞くんだが、ウィズィが身に付けてた金の装飾品はあいつの趣味か?」

「いや、違うな。あれは護身の魔道具だ。基本的には気付かれないよう魔力や刻印を隠蔽しているが、それに気付くような上位の貴族に対して、金という加工しにくい素材を魔道具にできる魔法力を誇示する役割もある」

「そうなのか……」


 金は加工しにくいのか。初めて知った。今まで巡り合わせが悪くて扱うことが無かったからな……金貨だけは沢山持ってるんだが。

 それに、刻印か……確か魔力を込めて特定の印を掘ると能力を付与できるんだったか。調べようと思ってそのままになってたな。俺は、直接付与した状態で創造できちゃうからな。まあ、面白そうだから学院で勉強出来ればとは思っている。


「ふむ……先に言っておこう。捨て子ミーシャの両親の行く末について、俺は知らない。国の外だからな。いわゆる専門外と言うやつだ」


 ノーウェンのその言葉で、ミーシャがそわそわしていたことに気付く。気になっていたのか。


「悪い、ミーシャ」

「!……いえ……」

「エーシャとルチルも。聞きたいことはない? 国内の事に限られそうだけど」

「いや!俺はないよ」

「私も。国外だったらいくつかあったんだけどね。残念」

「そうか……では、終了としよう。契約はこの部屋を出た瞬間から有効になる。十分気を付けてくれ」

「ああ。ありがとう」


 ノーウェンに見られながら部屋を退出すると、部屋の中にあった気配が感じられなくなった。


「彼の能力について聞けばよかったな……まあいい」


 俺のつぶやきは誰にも届かなかった。

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