047 作業
ギルドマスターとの話を終えてメインフロアに戻ると、受付嬢のウルさんからSランクについての少し詳しめの説明があった。シリウスの杜撰さは高い信頼を得ているようだ。
ウルさんからは、ギルドタグの扱い方──魔力を流せばすぐ取り出して提示できること──や、基本的に義務はないけど非常時には頼りにさせて貰う、ただし強制ではないといった、基本的なことを説明してもらった。
そして、その説明を聞きながら、ギルドマスターちゃんと説明しとけよという思いをウルさんと共有していたことを強く感じていた。いつかウルさんと一緒に殴りにいこう。
そうしてようやく、エーシャ達の住んでいるところへ戻って来ることが出来た。いやあ、ただ報告するだけのつもりが長くなってしまった。
結界は壊れてないな……ん?少し削れてる所がある。襲撃があったのか?なんにせよ、結界の突破はできなかったようだ。
「ルチル、戻ったぞ」
「ユーリ! 良かった……時間がかかってたから心配してたわ。外に何か異常はなかった?」
「結界が少し削れてたけど、『気配察知』と『気配感知』には何も引っかからなかったよ。今は安全だろう。一応、結界はまだ展開しておくつもりだ」
「そう……ちょっと前に外から音がしたから、多分それね」
「多分それだな。……ミーシャとエーシャは?」
「奥の部屋にいるわ。ミーシャが目を覚ましたから着替えてもらって、今ご飯を温めようとしてたところよ。エーシャは自分の部屋ね」
ミーシャは目を覚ましていたか。聞きたいことは沢山あるが、後回しだな。メシは全てに優先されるのだ。目覚めて直ぐに質問攻めにするのも悪いしな。
「あれ、温める用の魔道具は出してたっけ」
「ええ。置いたままだったから勝手に使おうとしてたわ」
「そっか。そうだ、ちょっと話したいことができたから、後で少し時間をとってくれ」
「……はぁ。予想はしてたわ。結構時間かかってたものね……厄介事じゃないことを祈っておくわ」
「ふふん。今回は珍しく厄介事でも面倒事でもないから期待しておくといい」
「えぇ〜?」
信じられてないな。日頃の行いのせいだぞ。まったく過去の俺よ、しっかりしてくれ。
さて。早速だが最優先事項に取り掛かろう。昨日創造して置きっぱなしになっているソファに座り、作業を始める。
今回やるのは既に『魔力創造主』で創造した物のグレードアップだ。
眼球と一体化しているコンタクト型の魔道具(名前は忘れた)に鑑定系の上位互換スキルを。隠密を付けているノヴェルスローブと、その下に着ているシャツに隠蔽系の上位互換スキルを付ける。
スキルが付いた物を創る時、問題になってくるのはイメージよりも魔力消費だ。既に存在しているスキルを付ける時の魔力消費を10としたら、存在しないスキルを付けようとした時の魔力消費は1000だ。もちろんイメージが適当だと失敗して魔力カスに生まれ変わる。あ、10とか1000は割合の話だぞ、実際はもっと多い。
なんでこんなこと長々と説明したかと言うと、これからやるのが非常に効率が悪く、怒りのせいで本来支払わなくていいコストを捧げることを分かって欲しかったのだ。
「『魔力創造主・再創造』」
『神眼』、『隠者』がそれぞれ付いた。2つとも、前にスキルについて調べた時には見なかったスキルだ。消費魔力から逆算すると、片方は既存のスキルでもう片方が新しく創り出したスキルだな。
……はぁ。便利な力だ。
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