046 発覚
冒険者のランクを証明する証明証ですが、ようやく「ギルドタグ」というそれっぽい名前を思い付いたのでこちらに移行します。
証明証の読み方はギルドタグでした!という後付けからだんだんギルドタグっていう名称しか使わなくなるパターンです
「今代の巫女についても、少し話しておこう」
レウル伯は言葉を続ける。
「今代の巫女が持っているスキルは『未来体験』。国王と本人の意向で、『未来視』という名で知られておる。数時間から数日意識を飛ばし、その間に一定期間についての未来を体験することができる力だ。体力と魔力の消費が激しくスキルの使用は数ヶ月に1度が限界だが、その分とてつもなく強大だな」
「……使い勝手の悪さを補ってあまりある力ですね」
「そうだな。しかしそう単純な力でもない。このスキルは、自分の意思で発動されるものではない。自分や周囲の人間に危害が及ぶ出来ごとがあると、その1ヶ月程前にスキルが自動で発動する。そして彼女は、意識を飛ばしている間にあらゆる可能性を模索し、この世界が辿る未来を選ぶのだ。その為、説明されても理解できない不可解な指令を下すことも多い。……今回のはわかりやすい部類だよ」
「それは……」
あまりにも酷い力だと、そう思った。その巫女は、世界の未来を一身に背負っているということだ。責任の重さは計り知れない。しかも、あらゆる可能性から未来を視るということは、身近な人が殺される未来も多く見てきたはずだ。1人の人間が持つには大きすぎる力。俺の『魔力創造主』など巫女の力に比べればチンケなものだ。
そして、ふと思う。俺がSランクになれば、ミーシャを誘拐しようとした黒幕に直接手が出せるようになる。明らかにタイミングが良すぎるのだ。巫女がこの未来を見たのはほぼ確定だな。巫女が選ぶのがどの視点での最良かは分からないが、その流れに乗って悪いことは無いと思いたい。
「レウル伯、シリウス、Sランクのお話、お受けしようと思います」
「うむ。君がSランクになることで、未来は彼女が観測したものに近付いただろう。実力も何も知らないが、君が為すことを楽しみにしておこう」
「ま、見たところ実力もSランクに届いてそうだから時間の問題だったでしょ。赤オークも倒したらしいし、スキル構成は万能に近いしね。ちゃんと奥義とか切り札は考えてる? Sになるならそれくらいは用意しといてね〜」
「なっ!?」
ステータスを見られた!? いつの間に!?『気配察知』には反応しなかったぞ!?
「シリウス……勝手に覗くのはやめろといつも言ってるだろう。マナーが悪いぞ」
「気になったんだからしょうがないじゃーん。それに、勝手にやらないならそれは覗きとは言わないんだよーだ」
シリウスのニヤけた顔が頭にくる。
ああもう。決めた。隠蔽を貫通する能力の対策を最優先にしよう。絶対だ。そして、ステータスをちゃんと全部隠してここに来てドヤ顔を見せつけてやろう。
「はい、これはSランクの証明証だよ。なんと、Sランクの証明証はミスリル製のくせにタダなんだ!」
そう言って渡されたのは、水色に輝く金属でできた長方形のプレートだった。
前の証明証を返却した後、前のと同じようにネックレスに付けようとしたら、声をかけられる。
「あ、そのタグはね、体に埋め込んで使うんだよ!」
「は?」
いきなり何変なこと言い出すんだ? と思ったが、よく考えたら俺も目と一体化する魔道具とか色々似たようなのを創っていた。危うくブーメランが刺さるところだったぜ。
おそらく、この証明証も魔道具の1種なんだな。
「腕のところに押し付けて……そう、それで魔力を少しだけ流せばいいよ」
「おお……ほんとに入った」
証明証を埋め込むと同時に、マークのようなものが浮かび上がってきた。
「あれ、ダンジョン攻略者だったの? なのになんでDランク?」
どうやらこのギルドタグ、ダンジョンを攻略すると記録される仕様らしい。腕にSランクを証明するマークとは別に、攻略者を表すマークが浮かんでいた。
「え゛……あー、まあ、色々あって黙ってたので……」
「あ、もしかして領地で抱えてたダンジョンなのに攻略したら枯れたとか? だとしたら運が無かったねぇ、そりゃ言いづらいよ」
「あ、え? ……その通りなんですけど、どういうことです?」
「うん? ……流石の僕も、どの部分に疑問を持ってるか言ってくれないと答えようがないかな?」
「えっと、ダンジョンが枯れたのが運がないってところで……」
「うーん、よく分からないけど、ノリで解説してみよう! ダンジョンを攻略すれば、最終層に財宝やらアイテムやらが眠ってるのはご存知の通りさ。冒険者達は基本的にそれを目標としてダンジョンに潜る。」
うん、そこまでは分かるぞ。
「攻略されたダンジョンは、最後のボスも復活してグレードダウンしたお宝が補充されるパターンと、枯れてしまってボスもお宝も無くなるパターンに分かれる。昔は、補充されて何回も挑戦できるものをダンジョン、補充されずに1回しか旨みが無いものを迷宮と呼び分けていたらしいね!この間読んだ論文なんだけど、現在は有耶無耶になってる呼び方の違いについて書かれていて実に興味深かったから、オススメだよ。書いたのは確か、ジェーダス・フロックって名前だったかな」
なん……だと……
つまり、俺が最初の街から逃げるように移動することになったのはただの不運のせいってこと……?
あの町のお偉いさんは、枯れるかもしれないダンジョンを街の経済の要にして、実際に攻略されたら枯れちゃったからキレて攻略者探しをしてたの……?
「えぇ……ちょっとユーリ君?急に落ち込んでどうしたの……?」
「いや、すみません、色々と重大なことが発覚して力が抜けちゃって……」
くそう!名前も覚えてないあの最初の街には、何があっても絶対戻ってやらないからな!
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