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044 混乱

「ギルドマスター! いつまで寝たフリしてるんですか!」


 そう言って、受付嬢が男の頭を叩く。叩くというよりは殴ると形容した方が適していそうな勢いだ。


「いったい! いたいよ! ハゲたらどう責任を取ってくれるの!? ハッ! そうか、責任を取って僕と結婚してくれるっていう意思表示なんだね! こうしちゃいられない、キャンセルしてきたばかりの教会を押さえに行かなきゃ!」

「落ち着いてください!!!」


 ギルドマスターが言葉を紡ぐほど顔を(しか)めていた受付嬢は、堪忍袋の緒が切れたといった体で再び拳を放つ。胸元に吸い込まれた拳はドゴッ、と鈍い音を出した。いいパンチだな、と現実逃避をしていたが、ギルドマスターから話しかけられて現実に引き戻された。


「えーと、君がユーリくん? はじめまして!」

「ええ。どうも」

「じゃ、そういうことだから。ウルちゃんは通常業務に戻ってね」

「まったく……では、ユーリさん。失礼します」

「あれぇ!? 僕には挨拶しないの!? 直属の上司だよ!?」


 受付嬢──ウルの態度は真っ当なものではあったと思うけど、残された俺の気持ちも慮って欲しかった。この男と2人きりにされる俺の気持ちを。


「……コホン。さて、ユーリくん。早速だが本題に入ろうか」


 この空気で話に入れるとは。一瞬彼が救世主に見えたが、よく考えたらコイツが元凶だった。


「悪いことをした記憶はありません。なぜ呼ばれたのでしょうか?」

「あ、敬語はいらないよ。尊敬の伴わない敬語なんて犬に食わせてしまうといい。それが冒険者ってもんだ」

「……わかったよ。これでいいか?」

「ああ。それで、本題なんだが。君、Sランクにならないかい?」

「……はい?」

「いい事づくめだよ?パーティとランクの差があっても一緒に依頼を受けるならAランク依頼まで受けられる。提携している店は全部半額だし、王族と対等だと判断されるから嫌な貴族の命令に従う必要も無い」


 突然のことに頭が追いつかない。助け(ウルさん)を呼びに行きたくなる。


「いやいやいや、待ってください。俺はまだDランクっすよ? なんでいきなりSランクに……事情が全く分かってないんだけど」

「えー、嫌なのかい? 手続きの正当性が心配なら問題は無いよ?もう粗方終わってるし」

「はあ!? もう嫌だ! 意味が分からないんだけど誰か助けて!?」


 思わずそう叫ぶ。その瞬間、突然『気配察知』に引っかかる気配が増えた。しかも真横にだ。脊髄反射のようなもので、武器を創造して構える。


「シリウス……心配になって来てみれば何をやってるんだ貴様は」

「これはこれはレウル伯! ようこそおいで下さいました!」

「いったいなんなのだ本当に。いつも敬語なぞクソ喰らえと言って無礼をまかり通しておるくせに」

「……話くらい合わせてくれよぉ、今説得の最中だって分かってるクセにさあ」


 レウル伯……伯爵か?学院の試験で話した奴はどの身分だったっけ……いや、思い出してもどっちが上かなんて分かんねぇか。

 とりあえず、警戒を解いて武器を消してから、無礼にならないように一歩後ろへ下がり話が一段落するまで頭を下げておく。細かい立ち振る舞いなんて知らないが、ノリだ。

 すると、レウル伯が声をかけてきた。


「そう(かしこ)まらずともよい。Sランクになるお方なのだ、むしろ私の方が(へりくだ)らなければ」



 どいうことなの……

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