038 依頼
ハニプレは最高に心動かされるけど中2的なインスピレーションは湧かないから執筆に戻ってこれなかった。卒論も就活も悪くない。
前から予定はしてましたが恋愛要素も後々出てきます。
学園の定期入学試験が終わった翌日。俺とルチルは冒険者としての依頼を受けにギルドへ来ていた。
……そういえば、学園の名前なんだったっけな。あーそうそう、エリゼだエリゼ。興味の無いことを覚えられないんだよな。自分の誕生日とか、人の名前とかすぐ忘れてしまう。『魔力創造主』で創ったものに付けた名前も、基本その場のノリだから覚えていられないしな。『鑑定』で思い出してもしっくりこないことがよくある。
「なんでもいいよ。気分的には討伐系かな」
「了解。取ってくるわね」
俺達は、互いのプライベートには踏み込まないようにしている。この世界では金に困ってない俺は、あまり金銭的余裕のないルチルに援助しない。依頼の達成報酬額も公平に分配している。俺が“師匠”としての役割を持ってから少しバランスが崩れたが、なんだかんだで落ち着いている。依頼を選ぶ時も、気分で指定させてもらう時がたまにあるが、基本は話し合って決める。
ルチルは俺を強引に師匠にしたことで、罪悪感のようなものを覚えているようだった。そのため、たまにこちらも我儘を通すようにしているのだ。
「ユーリ、依頼取ってきたわよ。あのオークの影響だと思うけど、外に行かせるような依頼はAランク以上に限定されてるみたいで雑用系の依頼になっちゃった。面倒だったら私一人で行くけどどうする?」
「内容は?」
「ギルドと提携してる武具屋の店番と品出し、あとは軽い雑用ね。昨日通ったメインストリートにあるお店らしいわ」
「おけ。俺も行くよ」
「りょーかい、じゃあ早速行きましょうか」
俺は、話に出てきた赤いオークのことを思い出していた。あのオークはあまりにも不自然すぎたんだよな。熊天国ダンジョンの中層くらいの強さはあったと思う。まあ、事情を調べたいけど依頼受けちゃったし、後でだな。思い出せれば調べることにしよう。
メインストリートに出て依頼書に書かれている店の位置を探していると、街の賑やかさが改めて感じられた。俺は、それに少し違和感を抱き、ルチルに話しかける。
「なあルチル、ここの人達はあの赤いオークのことを知ってると思うか」
「え?……うーん、国の入口が封鎖されてるんだからさすがに知ってるんじゃない?」
「まあ、そうだよな……じゃあ、なんでこんな呑気に過ごしていられるんだろう。あのオークを討伐せずに放置していたってことは、この国の、討伐できるだけの戦力が遠征か何かでたまたまいなかったとか、そういうアクシデントがあったってことじゃないのか?」
「言われてみれば、確かに……でも、この国の1番の強みは戦力、それも魔法と魔道具によるものよ?魔法はともかく魔道具が使えないって……うーん?」
ルチルが首を傾げて考え出すのを見て、俺も思考の海に沈んでいく。
「あの門を見ただけでこの国の魔道具のレベルの高さは感じた。門に攻撃能力が無いとは考えにくい……となれば、許可が降りなかったか、特定の条件が必要で満たされなかったか、そもそも討伐の必要がなかったか……いや、こちらを見て襲ってきた上に前の街で警告もされた。実害は少なくともあったはずだ……ふむ、気になるな。依頼が終わったら少し調べるか」
(……アゲハ、少し飛んでくれ)
(ふぁ〜あ、あい、りょーかぁい。危なくなったら戻るね〜)
『透明化』を発動したアゲハが飛び立つのを感じて、思考を終わらせる。
ふと顔を上げると、ルチルと目が合った。
「相変わらず考え出すと長いわね?」
「悪い悪い、そんな呆れた顔しないでくれって」
ルチルは小さく首を振ると、横に目を向けた。その先にあるのは質の良さそうな武器の置かれた店だ。センスがいいな。
「それはともかく、もう着いたわよ?」
「……いつの間に。やるな」
「なんでこのタイミングでキメ顔してるの?はやく入りましょう、そろそろ依頼時間だわ」
「うお、マジか。おいルチル、速くしたまえ。主人が待っているだろう」
「何こいつ1発殴っていいかしら」
結局殴らないルチルは優しすぎると思った。
༅
「じゃあ、おやっさん」
「おうよ、兄ちゃん、姉ちゃんも!今日は助かったぜ!どうしても親父の見舞いに行ってやらないといけなかったんだ!店を閉めるか迷ったが、依頼を出して良かったぜ!」
「満足してくれたんなら良かったよ。次来る時は多分客としてだな。ここの武具は質が良いからな、また来るよ」
「お世辞はよしてくれ、兄ちゃんが今つけてるバケモンみたいな装備持ちにゃぁウチの装備は格落ちするだろう。だがまあ、姉ちゃんの分なら喜んで拵えるよ!ほれ、依頼完了のサインだ、報酬はギルドで受け取ってくれ!ありがとな!」
この世界でも別れに手を振るというのは共通しているらしい。手を振って別れを告げ、そのままギルドへ報告に向かう。
「いやぁ、おっちゃんもいい人だし客の質も良い。すごい店だな」
「ギルドと提携してる店で問題起こしちゃ最悪ランク降格もありえるもの。冒険者が問題を起こさなかったら、大体客の質は良くなるわ……まあ、さっきのお店は店主さんの人柄もすごく影響してるみたいだけどね」
依頼中に店主の顔なじみと思われる人達が、彼の父親への見舞いだといくつか品物をあずけていったのだ。たくさんの人に慕われているのだろう。
「性格が良い人と仲良くすると自分も性格が良くなった気になって気分が良いな」
「だいぶ頭悪いこと言ってるわよ?気付いてる?」
喋っていることはいつものようなたわいも無いことだが、視線は通りに並んでいる店に向く。
「この国は今まで通ってきた国より過ごしやすそうだよな……活気もあるし経済も回ってる」
「確かにそうね。この国にあるダンジョンは素材がおいしいらしいし、冒険者にとってもかなり良さそうよね」
「あー、ダンジョンとかあったなそんなんも。風呂に入れなくなるから嫌いなんだよなあれ」
「え?フロアタグが使えないダンジョンがあるの?」
「は?フロアタグ?なんだそれ?」
ルチルの驚いた顔がこちらに向けられている。俺の困惑したような顔と数秒見つめあったあと、ルチルが口を開いた。
「10階層以上の階層があるダンジョンに入ると、フロアセーブとフロアロードっていう文字がステータスの上に表示されるわ。階層の入口付近でしか使えなくて、セーブは進んだ階層を記憶して、ロードでそこまでショートカットできるの。転移魔法って奴ね」
「そんな便利機能が……」
「結構有名だけど、ダンジョンに潜らない人にはあんまり知られてないから……そっか、そういえばユーリも最近冒険者になったばっかりだったわね。強いから忘れてたけど……あれ?でもさっきの言い方、ユーリダンジョン入ったことあるの?」
この世界に飛ばされてからまだ数ヶ月。どうしても抜けてしまっている常識があるのだが、そこを突かれてしまった。面倒事に巻き込むのを嫌って身の上を話していないが、一緒に過ごす時間が長いほど隠すのも面倒になってきた。
俺がフロアタグとやらを知らなかったのは、おそらく愚者のタロットで変なところからスタートしたせいだろう。ダンジョンの入口を通ることがトリガーなんだろうな。……さて、どう返答したものか。まあ、誤魔化す姿勢を見せれば察して引いてくれるか。
「……ああ。あるよ。ダンジョンの入場制限も知らなかった頃にな。まあ、あんまり突っ込まないでくれ」
「了解。やぶ蛇が怖いもの、忘れることにするわ」
「びっくり箱と呼ぶことを許してやっても良いぞよ?」
「どういうキャラなのそれ」
予想通り、追求せずにすぐに引いてくれた。最初の頃は質問も多かったんだが、俺がほとんど誤魔化していたせいか、一種の諦めの境地に至ったのだろう。そんな時、視界に飛び込んでくるものがあった。話題の転換にも丁度良いので、それに言及する。
「……そっか。治安良さそうなこの国でも、やっぱり浮浪児はいるのか」
「服装からして孤児院の子じゃなさそう……スラムからメインストリートまで来たのかもしれないわ」
「え、それってまずくないか?」
「他の国と違ってこの国だとスラムは完全に国の管理下よ。でもあの動き……」
「うーん?盗みか?……いや、これって……」
「「逃げてる?」」
ルチルと俺は一瞬顔を見合わせると、ほぼ同時に浮浪児に向かって走り出した。
メインストリートを横切って近付くにつれ、その子供がなにか叫んでいるのが聞こえてきた。
「誰か!……はぁ、はぁ、誰か助けて!」
日常部分を多めに書いてしまうのは、当初の予定の名残です。異世界日常ストーリーを書くつもりだったし今もその気持ちが割と残ってる。ただ、主人公が勝手に動き回るから……もう……誰だよ気まぐれ設定付けたやつ……俺だよ……
学園に入りたがるとかどう考えても不自然でしょう?主人公がどうしてそう動いたか考えてはいるけどちゃんと描ききれるか不安です。就活の行き先も不安です。やりたいこととか小説書くことと読書とゲームと歌うこと以外ない
どうやら心が荒れているようです。ごめんなさい。




