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037 貴族

いやあ、難産でした。ウィズィ君は、初めは嫌味な傲慢中堅貴族を予定していたんですが、あまりにもセリフ構築が難しかった。〇フォイを参考にして、精進します。

「そこの美しいエルフのお嬢さん、貴女の名前を教えてはいただけませんか?」

「……?」

「ルチル、お前のことみたいだぞ」


 突然、ルチルが見知らぬ男に声をかけられた。声をかけてきた男は、随分と高貴そうな身なりだ。金のブレスレットなんて初めて見た。

 声をかけられた当のルチルは気付かずに周囲にエルフがいないか探していたので、横から小声で教えてやる。


「あ、私?」

「ええ、そうですよ、お嬢さん。……おっと、あまりの美しさに気を取られて、御無礼を致しました。私の名前はウィズィ・ラズダム。ラズダム公爵家の次期当主です、以後お見知り置きを」

「あら、これはご丁寧に、どうも……えっと、敬語は慣れてないの、変じゃないかしら……ですか?」

「ええ、お気になさらず。特にこの学校では身分の違いは問題にはなりませんから。外でも、冒険者の方が相手だとそんな事を気にする者も少ないでしょう」


 派手な身なりから、小説によく出てくる傲慢な貴族かと思ったが……存外に礼儀正しい。俺のことは完全に目に入っていないようだけどな。


「私はルチル……です。森から出て、今はこの人と一緒に冒険者をやってるわ」

「……ほう。男性とおふたりでとは……どのようなご関係で……いえ、初対面で話すことではないですね。重ね重ね失礼致しました」

「お気になさらないでください。……私とルチルはただの冒険者仲間ですよ。プライベートな関係ではありません」

「おや、そうなのですね。長い間共に戦えば、深い関係になるものとばかり……邪推でした、申し訳ない」

「……貴方は貴族でしょう?しかも公爵といえば……確かかなり上位のものだったはずです。爵位を持たないものにみだりに謝罪を重ねるのはおやめください、畏まってしまいます」

「これは……驚きました。ええ。忠言、聞き入れましょう」


 ウィズィは、突然横から俺が口を挟んでも驚くことなく応答してみせた。それはどこか、俺から声をかけることを待っていたようにも見えた。

 やたらと腰が低いのも気になる。ナンパ目的じゃないのか?ルチルにも春が来たかと思ったがぬか喜びだったか。

 最初の挨拶に親の爵位を持ち出すあたり、貴族パワーで無理やりナンパするのかと思ったんだがな。


「えっと……ウィズィ様、どのようなご用件でしょう」


 俺が不躾なことを宣ったからか、ルチルは分かりやすく話題の転換を図った。だがナイスだ、核心を突いたいい質問をするじゃないか。覚えていたら、あとでお菓子を買ってやろう。


「いえ、学園で一緒になる方々と親睦を深めたいと思いましてね」

「それは……試験は今からです、私達が落ちるかも知れませんよ?」

「おや、ご存知ないですか?そのような事は、ここでは中々起こらないのですよ。魔法さえ使えれば、いずれかのクラスには編入できるのです。裏を返せば、魔法が使えない者はそもそも試験を受けに来ない。今から行われる試験は実質、現時点の能力からクラスを決定する為のものなのです」


 ……なるほど、道理で。観光ガイドにはどのような者でも受け入れると書いてある割に、試験だけはしっかりやるんだなと少し違和感を感じていたが、納得できた。

 ウィズィは微笑を浮かべたまま、言葉を続ける。ハンドジェスチャーに伴って、金のブレスレット同士が擦れ、チャキと音を立てた。


「それに、あなた方程の力量があれば、他国のどのような学校であれ、落ちるということはないでしょう」

「……ふむ、それはどういった意図でしょう?」

「いえ、ただの勘ですよ。……試験前にお時間を取ってしまいましたね、私はこれで失礼します。では、また」

「……ええ、またいずれ」


 ルチルが横でぺこりと頭を下げ、ウィズィは離れていく。


「勘、ねぇ……」

「十中八九スキルでしょうね」

「まあ、そうだろうな。だが……」


 今の俺は、『鑑定』を誤魔化せる『隠蔽』のスキルを取得し、常に効果を発揮してステータスを偽装している状態だ。ステータスもスキルも、ルチルとほぼ同格になるように表示している。

 ルチルのステータスであの評価だ、と言われればそれまでだが……ルチルへの対応と俺への対応は明らかに違った。何が違うか、と言われると分からんが……


『隠蔽』を貫通、又は無効化してステータスを閲覧されたか、別の判断基準があるのか。公爵家の嫡男だと自称していたし、高価な魔道具って可能性もある。

 もしそうなら、スキルにせよ、魔道具にせよ、是非とも取得しておきたい。


「お、始まるか」


試験監督の教員が会場へ入ってきて、試験が始まる。いきなり実技試験だ、抑えていこう。

試験はカットです。また、なんで主人公が異世界に来てまで学園に通おうとしたのか語るのは、ちょっと先になりそうです。ごめんなさい。

少しずつ2章の本題に入っていくので、のんびりお待ち下されば幸いです。

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