034 青龍
「『青龍』!『赤龍』!」
「よっ、うおっ」
シグの扱う銃が2倍になり、弾幕は3倍になった。本領発揮という所か。まだ余裕そうに見えるが。
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〇蒼龍
・シグ・ガレットの能力で生み出された魔導銃。魔力を弾にして放つ。純粋な魔力を込めただけで着弾点で氷結が起きる。水属性魔法、氷属性魔法を込めることができる。連射可能だが、魔力操作が難しい。
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もう片方の銃も厄介な能力だ。そして、それをシグの技術が余計に強力なものにしている。氷結からの爆発で氷の欠片を撒き散らしたり、水蒸気で煙幕代わりにしたりと、二丁の銃を使った合わせ技が高頻度で、そこかしこで起こされる。
「ほっ、【身体強化】!」
「無属性魔法か。レベル1か?」
「さあな!!オラァ!!」
接近戦には、本気を出しても─『魔力創造主』を使ったとしても─持っていきづらくなってきた。弾幕が多すぎるんだ。先程に比べて、赤龍から飛んでくる弾の数も増えている。二丁拳銃での扱いに慣れて片方だと上手く扱えないとか?……いや、あれはただの手加減だろうな。
「『魔道』・【天道】!」
「基本属性レベル10か。そりゃあその強さならその位は持ってるか……『魔道』・【核道】」
俺が使った強化スキルに反応して、シグが同じスキルの違う技能を発動した。『魔道』スキルは、基本属性魔法のいずれかをレベルmaxまで上げると自動的に獲得できる強化系のスキルだ。【力道】は物理的な力の強さ、【天道】は移動速度、【核道】は魔力攻撃の強化だ。
「疾ッ!」
「突っ込んで来るよなぁそりゃあ。『集え、水の元素。円環を為し、我に歯向かう者へ、裁きを!』【水輪】!」
「くっ!?」
シグが使った水属性第三位階は、俺の突撃を容易に受け止め、水の棘で反撃してきた。
「【装填】」
「!?」
シグは、役目を終えて消えようとした水属性魔法を銃に込めてこちらに向ける。
「【解放】」
「ッ!!!『創造』!!!!!」
ほぼ条件反射で咄嗟に創造した鋼鉄の壁は、魔法の銃弾を完全に受け止めてみせた。ただし、着弾と同時に展開した無数の棘によって、跡形もなく破壊されてしまったが。
「今のスキル……オリジンか?それともユニーク?」
「はぁ……咄嗟に使っちゃったか……いくらでもやりようはあったのに……勝手に縛りプレイして追い詰められて焦るって間抜けすぎないか……」
シグの問いかけを完全に無視して嘆きをつぶやく。シグは先程までの楽しそうな顔から一転、真剣な顔でこちらを見ている。
「……ここまでにしようか。俺もアンタも、まだ余力は大きそうだが……これ以上は必要ない」
「?それはどういう……」
今度は自分が疑問を放置される側になってしまった。
シグはアンティの方を向いて呼び寄せると、短く質問を投げかける。
「どうだった」
「……ダメそう」
「はぁ……そうか、今回もダメか。いつ見つかるのかねぇ……」
「落ち込まないでください、シグ。うざいですよ」
「いや酷くねぇか!?……はぁ。ユーリ、すまなかったな。ほれ、金貨20枚だ。遠慮せず受け取ってくれ」
シグは仲間からの冷ややかな目から逃げるためか、こちらに話を振ってくる。
「どうも。で?結局何がしたかったんだ?」
「……まあ、お前と今後会うこともないだろう。言ってもいいか。俺たちの目的は……世界を、救うことだ」
「……は?」
「はは、まあそうなるよな。気持ちは分かるぜ」
「……世界を救う?魔王を倒すとでも言うつもりか」
「あん?なんであの魔帝国の帝王サマを倒さなきゃなんねぇんだ。お前もよく分かんねぇ奴だなぁ」
「あんたに言われたくはない」
「……俺たち救世七星は世界を救う為に動く。もうすぐ終わる世界から、人々を救うんだ」
「おい、宗教勧誘か?やめてくれよ神は信じてないんだ」
会ったけどね。
「詳しいことは……まあやっぱり言えないんだ。もうすぐ言えるようになると思うが……まあそれはいい。世界はそう遠くないうちに終わる。アンタも……いや。なんでもない。信じなくていいよ、でも頭の片隅にくらいは残しといてくれると嬉しいよ」
「……世界を救うって奴が、大勢を人質にするのか?あの時の殺気は冗談だとでも言うつもりか?」
「冗談だなんて言うわけないだろ。全部本気さ。本気で救うしその為なら人質もとる。ただまあ、目的のためなら俺たちは悪人になるが、他の悪人は許さないぜ。歪だなんていちいち言わなくていい、理解してるからな」
「……なんだそりゃ。宗教にしてももっと上手い文句があるだろ」
「はは、確かにな。だが事実だ。……迷惑かけたな、俺たちは退散するよ」
「貴方がリーダーみたいになってません?不服なんですが」「シグにリーダーはさすがに……ぷぷ、似合ってない」「うっせーぞおめーら!」と賑やかに去っていく3人を眺めている俺の脳裏に、ふと神のセリフが浮かんできた。
“ 時間はそう残ってないよ。君たちが送られた理由は『融和』なんていうふわっとしたものなんかじゃない。”
俺たちが転移することで世界の終わりを止めさせる?一体どうやって?神があんな適当な説明で送り出しておいて?……訳が分からないな。
あんな説明で、彼らを信じる人なんていないだろう。いくらAランクの肩書きがあってもだ。ただ、シグの……いや、シグ達の目は、本気だったように思える。信じて貰えないという諦めの中に、必ず救うという決意があるような……いや、やめだ。俺は読眼術なんて特殊な能力持ってないしな。
「ルチル」
「すごい戦いだったわ……ユーリの動きが速くて、後半は目で追いきれなかった。シグって人の魔道具の攻撃も凄かったけど、1回も当たらなかったユーリはもっと凄い……」
「うん、そうだな。今度速い相手に魔法だけで対抗する練習でもするか」
「……手加減してくれると嬉しいのだけど」
「よかろう、全力で相手してやるぜ……」
こんな平穏な世界が見せかけにすぎないことも、脆く儚いことも、俺は知っている。ただ、今回は被害者で終わるつもりはない。
(世界が終わるなんていうクソ理不尽、真実なら止めてみせる。命を賭けて)
主人公の過去編をいつ挟むか悩む
あと戦闘シーン書くの難しすぎる
そして原神忙しすぎて昼夜逆転が酷い
次話はルチルさんが祐里を師匠と呼ぶ理由でも書きましょうかね




