032 邂逅
俺ガイル完見ました?僕はあまりにも最高すぎて恋愛もの書きたくなりました。でも、僕は(言い方は悪いですが)俗に負けヒロインと呼ばれる人達の描写で心がやられてしまうタイプなので、設定を考えるだけでしんどくなりそうなんですよね……
「ここがエリフィン唯一の冒険者ギルド……」
「これは……すごいわね……」
初めの街……そういや、あの街の名前はなんだったんだろう……あの街の冒険者ギルドとは比べ物にならない大きさと豪華さだ。中に入って見てみると、受付の数も多いことが分かる。右サイドに階段があり、2階へと続いている。酒場は併設されていないのか、入口から見た限りは見当たらなかった。
「2人で並ぶ必要もないけど……どうする?」
「一応、ここのギルドは初めてだから。2人で並ぶことにしない?」
「うん、それでいいよ……ん?」
ふと、こちらをじっと見つめる人物と目が合う。同い歳か、少し下くらいの少女。長い黒髪は途中でひとつに束ねられ、赤い縁のメガネの奥に煌めく紅い瞳が印象的だ。
「ユーリ?……あの子と知り合いなの?」
「知らないけど……『鑑定』されたのか?感知できなかったけど」
「ユーリが感知できないんなら『鑑定』じゃないでしょ……さすがに」
「……おいルチル、こっちに来るぞあの子」
「やっぱりアナタの知り合いなんじゃないの?」
「いや、もしかしたらそうかもしれんと思い始めたところなんだ。人の顔と名前を覚えるのは苦手だからな」
「なんでそこでドヤ顔するのかよく分からないんだけど……」
一応、入口横のスペースにズレて少女を待ち受ける。さすがに入口で話し込んでギルドからの印象を下げるのは後々面倒そうだからな。
少女は俺たちの前まで来て立ち止まる……が、少女が何も言わないので1分ほど重い沈黙が続く。
「……なn」
「貴方は何者?」
(おいアゲハ、俺の親切心から出た第一声を潰されたぞ、これはバカにされてるのか?)
(マスターならそれも有り得そうだね)
(おいどういうことだそれ)
「……ユーリだ。冒険者をしてる。ランクはDだ」
「同じく、冒険者のルチルよ。ユーリとパーティを組んでるわ」
「そう。よろしく。でも私が聞きたいのはそれじゃないわ」
やはり『鑑定』されたか……?『気配察知』と『気配感知』でも気付けなかったが……
「では何を?」
「貴方が何者なのか。……いや、やっぱりいい。こっちに来て」
「は?……おい、引っ張るな!」
「ちょっとユーリ!」
(あははは!マスター、女の子に力負けしてる!!あはははは!)
少女は俺の手を引っ張って……って、マジでコイツ力つえーな!もしかしたら俺よりレベル高いんじゃないか?それかパッシブのスキルかだな。
「ッ!『魔道』・力道!はあ、ちょっと待ってくれ!」
「……強化系のスキル?力負けなんて久しぶり……」
「なあ、もういいから、とりあえずどこに連れて行くのかくらい教えてくれないか?」
「奥の酒場。私の仲間に会わせる」
「はあ?なんでそんな……初対面だぞ?」
こんな何を考えているのか分からない少女に、初対面だからなんて常識論で止めようとするあたり、俺もかなり動揺しているようだ……いや、こんな現実逃避してる場合じゃないな。
「私は貴方に用事がある。だから来て」
「……なあ、ルチルー?助けてくんないー?」
「貴方が力負けするような相手に私ができることなんてないわよ……はぁ、しょうがないわ。先にこの子の用事とやらを済ませましょう」
「面倒事は勘弁して欲しいんだが……分かった、分かったから引っ張らないでくれ!」
(ぷぷ、マスターそんなに女の子に主導権渡したくないの〜?)
(茶化すんじゃねぇ!くそ、おかしい。俺に女難の相なんて無いと思うんだが……地球じゃ女子と関わったことなんてほとんどないんだぞ……)
少女について扉をくぐる……階段があったのと逆、入口に入って左手の隅にある少し大きめの扉だ。そこをくぐると、かなり広い酒場になっていた。さっきのホールとほぼ同じ大きさだ……酒場とギルドが、背中合わせのようになっているんだな。
酒場の、さらに奥へと連れて行かれる。なんだろう、さっきからやたらと視線を感じる……
「いた……」
少女の呟きが耳に入ってきた。視線の先を見てみるが、どのグループを見ているのかは判別できない。
「リコリス!シグ!」
「おー、時間かかったなアンティ……あん?誰だお前ら?おいアンティ、今度は何拾ってきやがった」
「ちょっとシグ?人に向かって"何"とか言うものではないですよ?」
「う、わーるかったってリコリス……んで、お前さんらはどちらさん?」
「シグ?謝るなら私じゃなくてこのお二人にでしょ?」
「リコリス、シグ、長くなるんだからそのやり取りは今はやめて……」
なんだこの一癖も二癖もありそうな連中は……それに、二人とも……強い。リコリスと呼ばれた方は魔力をあまり感じないが、立ち振る舞いから隙が無い。シグと呼ばれた方は、かなり強大な魔力を感じる。下手したら俺よりMP高いぞ。それに、腰にさげているのはどこからどう見ても銃だ。この世界に来てから初めて見た。
「あー、俺はユーリだ。ただのDランク冒険者だよ」
「えっと……私は、ルチルです。ユーリとパーティを組んでて、ランクも同じよ」
「……まあ、何にせよ挨拶は返しておこう。俺はシグだ。冒険者ランクはCだよ」
「こほん。初めまして。私はリコリス。ランクはAよ……アンティ、貴女は自己紹介したの?」
「私はアンティ。ランクはA」
シグがランクCだと述べた時は何も反応しなかったルチルは、リコリスがランクAだと言った瞬間に息を飲んで、それから全く動かなくなった。……あれ?こいつ瞬きもしてなくない?
「えー…っと、なんで俺たちはそんな高ランクパーティに呼び出されたんだ?」
「あー、えっと、本当にすまんがちょっとこっちで話をする時間をくれないか?何か注文して食べて行くといい……悪いから俺がおごるぜ?」
「ほんと!?ユーリ、ここはありがたくおごられましょう!」
「……おいルチル、こっちが恥ずかしくなるからそこではしゃがないでくれ……」
シグは苦笑して、アンティ達と話しだす。俺たちは、隣のテーブルで注文を吟味し始めた。
注文した料理が届き、半分ほど食べ進めたところで、シグから声をかけられた。
「ユーリ!話は済んだ。そいつまで食べきったら話を聞いてくれ。……いや、遠慮しないでくれ。待っとくよ」
シグは随分と罪悪感を感じているようだ……ルチルが、すごく幸せそうな顔でステーキを頬張っているから、というのも大きいだろうけどな。
ステーキを食べきったルチルは少し寂しそうにしていた。食いしん坊キャラまでかっ攫うとは……恐ろしい子……将来は属性過多でギャルになるんじゃないか?
ルチルが食べきったのを見たシグは、俺の方に向き直って声をかける。
「さて……じゃあユーリ。早速だが、俺と戦ってくれないか?」
最終回を見終わったあとの喪失感や虚無感はいつまで経っても慣れません。
最初は最終回だけ見ずに終わっていたんですが、それではそれらの感情からは逃げられますが、物語を殺しているようなものだと気付きました。
難しいものです




