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028 赤豚

主人公が強くなるパートは一段落です。まあ勝手に寝ずに訓練して強くなっちゃうんですけどねこの人。誰だよ『不夜』のスキル加えたやつ。俺だわ。

今話ステータスの表記ないから誰も気付いてないけどスキル進化してるし。まったくもう!

 魔道王国エリフィンを目指す旅が始まって、はや2ヶ月。あと数日もすれば到着するだろう。この2ヶ月、色々なことがあったし、俺もルチルも、そしてアゲハも、かなりパワーアップした。Dランク試験の時に放った第三位階【風輪】がほぼほぼ全力だったルチルは、今や見る影もない。


 旅のメンバーは、俺、アゲハ、ルチルの3人で構成されている。俺の当初の予定では、迷宮内で使っていたフライトボードで向かうつもりだった。

 しかし当然、ルチルがフライトボードに乗れるはずもない。風属性魔法のスキルを持っているから特訓すれば乗れるだろうが、時間がかかる可能性が高かった。そのため、相乗り馬車を利用したり護衛依頼をこなしたりしつつ、フライトボードを乗りこなす練習をしていた。……といっても、1ヶ月しないうちに乗りこなすようになって、2人でヒャッハーしていたがね。私もあのころは若かった……


「ルチル、エリフィン(魔道王国)についた後にやることってあったっけ?」

「先にやっといた方がいいのは採取依頼の完了報告くらいね。商店街を見て回るなら、先に宿を取っておいた方がいいかも」

「うぃ〜」


 だらけきった返事をした俺は、おもむろに異次元倉庫から機械のようなものを出す。


「起動」


 その一言で、鉄の塊は鳥の形を取り、エリフィンの方へ飛んでいく。


「いつ見ても不思議ね、貴方の魔道具って」

「うーん、照れるな」

「褒めたつもりはないんだけど」

「あ、そう?」


 ルチルと中身の無い会話をしながら、意識を先程飛ばした機械(ドローン)に向ける。すると、ドローンの視点が脳内に浮かんでくる。


(ねえ、その役目私でも良くない?)

(ドローンの方がかっこいいだろにわかめ)


 アゲハがポケットの中から蹴ってくるのをスルーしつつ、見えたものを教えていく。


「おお、噂通りフライトボードみたいな魔道具が道を走ってるぞ!」

「ほんと!?……確かに凄いけど、似たものを持ってる貴方が何者か気になってくるわね……」

「あんまり下らないこと気にしてると太るぞ〜」

「太るの!?体型は関係なくない!?」


 そう。この会話だけでも分かっただろう。ルチル(こいつ)……なんといじられ役だった。最初の頃は真面目ちゃんの波動も感じていたんだが、どうやらしっかり者に見せかけたいじられ役という王道を歩んでいるようだ。

 ルチルがどうかは知らんが、戯れのようなやり取りは楽しい。コイツがどこまで着いてくるかは結局あやふやになってしまっているが、まあある程度は構わないか、と思うくらいにはルチルが横にいることが普通になってきた。


「ん?これは……」

「なにか見えた?」

「いや、違う。魔物が『気配察知』にかかったんだが、この気配……オークか?オークにしては少しおかしい気もするが……」

「嘘でしょう?王国の目と鼻の先の街道にオークが?すぐ討伐しにいきましょう!」

「『気配感知』。……近くに人の気配は無いな。駆除しておこう」


 そう言って、今乗っている魔法の絨毯(じゅうたん)(板ver)の速度を上げる。


「見えたな……ん?おい、ルチルなんだあれ」

「ちょっと待ってよ!『遠視』!……え、うそ?ユーリ、あれなに?」

「俺が先に聞いたんだが……」


 そこにいたのは、街道の脇に座りこんでいる、オークだった。特異なのはその色と武器だ。オークの全身は赤く染まっており、横に置かれている武器は明らかになんらかの力を持った魔道具の類なのだ。両手で扱うタイプの戦斧で、刃の間に赤い宝石のようなものが3つ埋められており、その宝石からは『気配察知』によって魔力を感じる。


「物騒だな……もしかして、やけに人の往来が少なかったのはこいつのせいか?」

「ありえるけど……だとしたら前の街でなんの情報も無かったのはおかしくない?」

「アイツの周りに争いの後が無いのも気にかかるな……どうする?」


 パーティを組んでいる以上、互いの意思を確認することは大事だろう。


「まあ、気になることは多いけど、街道にいる魔物なのは間違いないわ。倒す以外にないと思うわ」

「確かにな。……どっちがやる?一緒にやるか?」

「私がやるわ。援護よろしく」

「あい」


 ルチルが前に出る。オークの特徴は、馬鹿力と分厚い皮膚。通常の弓矢だと攻撃が通らないから、魔法主体でいくつもりだろう。


(じゃあ久しぶりに『札術』でも使うか)

「ルチルー、前で適当に意識向けさせるから攻撃は任せたぞ〜」

「了解!」


 自分でやれば一瞬で片がつくであろう相手だ。時間稼ぎくらいいくらでもできる。つまりはネタスキルで遊べるってことだ。


「【ポーカー】開始。MP5をベット。ドロー……選択。引き直し……ブタだ、幸先が悪いな。」


『札術』はかなり特殊なスキルだ。俺はトランプを使っているから技能の幅も広い。【ポーカー】は、MPのベット数、引き直しする札の選択がそのまま固定で詠唱になっている。詠唱に込める魔力が少なく済むのはいい点だが、とにかくデメリットが多い。


 1.ドローしたトランプが正面に浮かぶから、視界が遮られる。

 2.浮かんだトランプが敵の攻撃で潰されたら、MP100が代償に消費させられて役も無かったことになる。

 3.効果の高い役が異様に出にくい。体感では、普通のポーカーよりも確率が低い。

 4.効果のある役を引くまでは、ただただMPだけを消費するマシーンになる。


 良い点としては、


 1.いい役の効果がビビるくらい高い。

 2.俺がほとんど持っていない味方を支援する能力である。

 3.トランプを物理で使う訓練をしただけで、いろいろな技能が付いてきた。

 4.魔力を消費するが暇つぶしに使える


 といったところだ。


「よっ、ほっ……ドロー!……ツーペア。役はぼちぼちだが効果としてはハズレだな」


 ツーペアは、5枚引いたトランプのうち、同じ数字のセットが2つある役。割とよく出る役で、効果もまちまちだ。今回は、MP5のベット。効果は、味方(今回は俺とルチル)の物理攻撃にHP10点分のプラスだ。


(詠唱的にそろそろかな)


 ルチルは、最初風の第一位階で様子見していたが、途中から詠唱に入った。長さからして、おそらく……


「ッ!ユーリ!離れて!」

「了解っ!」

「いくわよ!【吹降紙(ふきおろし)】!!」


 予想通りだな。風属性魔法、第五位階【吹降紙】。ルチルが現状使える風属性魔法の中で、最も位階が高いものだ。

 魔力で生み出され、操られた強大な風が、赤いオークの上から吹き付ける。その風には、小さな紙片のようにも見える、魔力で作られた刃が混じっており、オークに傷を付ける。しかし……


「あのアホ」


【吹降紙】は本来、広範囲に攻撃する魔法だ。しかも、どちらかというと大多数に傷をつけつつ風で動きを阻害する補助の役割の方が強い。詠唱でアレンジして火力を高め、一点に集中させてはいるが、あれでは倒せないだろう。位階が高ければいい訳では無いという良い例だ。第四位階の方がマシだった。

 ルチルの方をチラ見すると、ダメージを与えても倒しきれなかったことに、悔しそうな顔をしていた。後で説教だな。


「ルチル!俺がやるぞ!いいな!」

「……了解ッ!」


 ふむ。ルチルの魔法を鍛えてやった師匠として、ここはお手本を見せるとしよう。

札術は作者のお気に入りスキルなので、ダンジョン以来の2度目の出演です。

今後の出番は……ないかもしれないけど……

他のスキルや『魔力創造主』の出番はここからたくさん増えると思うので、楽しみにしておいておくれ!

評価もよろしく〜

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