閑話 未来想う午後の一時
私、雪屋鵠が、異世界ベテルの大陸ガルディア、その中にある七つの国のうちの1つ、グラン帝国に転移してから1ヶ月が経った。クロくん……黒野祐里くんや、他のクラスメイトに会うことは、まだ叶っていない。
「おや……シロ様。どちらへ?」
「てきとーに歩いてるだけだから……気にしないでいい」
「そうでしたか。失礼致しました」
私がこの国に転移した後、衛士に保護され、騎士に保護され、あれよあれよという間に皇帝ジンクに謁見した。そして、どういう訳か、かなりの高待遇で城に住まわせてもらっている。……改めてまとめると、より訳が分からない。私は勇者なんかじゃないことは、分かって貰えたはずなんだけど。
「シロさまー!」
「む、ゆやちゃんの声……ふっ」
「にゃああああああっ!!どーして避けるんですかシロ様!!」
「いや、うけ止めたら、死ぬ……」
「あっはっは!相変わらず面白い冗談ですね、シロ様!!!」
このうるさい美人は、ユナ・ヤスベラ。帝国に存在する4つの騎士団の中でも、最も強いと噂されている紅龍騎士団の副団長だ。明るい赤色の髪は、ここが異世界だと強く感じさせる……と思ったけど、私の髪も白かったし、クラスには私の他に白い髪が2人と金髪が1人いた……いや、金髪だけは地毛じゃなかった。
「シロ様!また私と、魔法戦してくださいよ!いや、今度は騎士団の他の奴らを揉んでやっても良いですよ!」
「やらないから……近くで叫ばないで……」
「むう、それは残念です!おっと、そういえば私団長に呼ばれてたんでした!それでは!!!」
嵐だった……私の周囲にいなかったタイプだからか、余計に疲れを感じる。悪い子ではないんだけど……
私がほかのクラスメイトを探し始めてすぐに、大多数の居場所が分かったと、皇帝ジンクから教えてもらった。でも、クロくん、ゴートくん、かよちゃん、さとうくんの4人は、そこに含まれていないと思う。クラスメイト達が見つかったノーランド王国は、38人の転移者を迎え入れたとだけ公表したらしい。私のクラスは篠宮先生含めて43人。足りないのは、5人。私がそこにいないことも合わせて考えると、『合格者』だけが含まれていないことは予想が着く。
神様は、合格者じゃないと他の神様を救えない、効果が無いと言っていた。情報が伏せられてるクロくんに早く会わないと。
地球と、ベテル。2つの世界が壊れるまで、時間はそんなに残ってない。神様を助けて、どうにかしないと。
──全部が無くなる前に。




