025 験
矛盾指摘あればどんどんください
『〇魔法』→『〇属性魔法』に記述を変更しました
『〇属性魔法』→『基本属性魔法(〇x)』に記述を変更しました
やあ。久しぶり。
スキルが使えなくなって……というか、本来の状態になってから、早くも1ヶ月が経とうとしている。
スキルは無事に使えるようになった……と言っていいのか分からないが、まあ、あのダンジョン……なんの楽園だったっけな? あそこのボスくらいなら問題なく倒せる程度にはなったよ。
『魔力創造主』の新たな制限も知れたし、スキルってのは基本的に技能を習得しないと使えないってことも知った。知れば知るほど、自分がどれだけ無茶苦茶なことをしてたか分かって笑っちゃったくらいだ。
『魔力創造主』のルールは、今までに知っていたものだと、以下の通り。
・創るものの能力、またはレアリティ等によって消費する魔力が増大する。
・魔力が不足している、イメージが不安定などの理由で失敗すると、なぞのゴミができあがる。
・自分から、だいたい1メートルくらいまでなら離れたところに創造することもできるが、普通よりも集中しなければならない。
・創造したものは、離れた所にあるものでも、自由にタイムラグなく消滅できる。消滅には魔力を使わない。
・創るものには特殊な能力を持たせられる。
そして、更新された、発見したルールはこれだ。
・既に物質が存在する場所に重ねるように創造しようとすると失敗する。
・自分の知識を超えたものを創造することはできない
2個目はつまり、「自分の知らない〇〇について詳細が書かれた本」を創造することはできないってことだ。
イメージ不足による失敗と少し似ているが、イメージ不足の方は、馴染みのないものを創ろうとしているのにイメージを固める時間が足りなくて失敗したり、よく知らない物を創ろうとして曖昧になるっていうことだから……ああもう、ごちゃごちゃしてきたな!!!
というか、大事なのはそこじゃないよ! スキルを使えるようになった方が大事! 話を進めよう!
まあとにかくそういうわけで(どういうわけだ?)、俺は別の街へ向かうことにした。道中の街で冒険者のランクを上げたりダンジョンを攻略したりしつつ、最終的な目的地は魔道王国エリフィンの首都、エープラインにある魔法学院だ。
……いろいろ他の国や地域について調べたんだけど、楽しそうなところはそんなに無かった。その数少ない候補地の中で、今の気分に合っているのがその学院なわけだ。
技能神が見せてくれた【技能】について、より詳しく学べそうでもあったからな。
༅
「ユーリさん、がんばってくださいね」
「ああ、ありがとう」
ギルドの受付嬢であるミアさんに激励の言葉を貰い、所定の場所に移動する。
俺のランクはだいぶ前にFランクからEランクになっており、その後のゴタゴタからしばらくしてから、修行もかねていくつかの依頼を達成した。確か5つくらいかな? それで条件を達成したようだ。試験を受けて合格することで、晴れてお試しランク終了。初心者であるランクDになることができるのだ。
ようやく討伐系の依頼も受けられるようになるし、ダンジョンへ入ることも許される。……そう、ダンジョン、実は入るのに許可がいるらしいかった。これを知った時は、絶対に攻略したことがバレないようにしようと、改めて心に決めた。
そして、今から受ける試験に合格した後に、ここを出て魔道王国エリフィンを目指すことになる。いいよな、エリフィン。語感がいい。
森時代に『鑑定』で調べたんだが、確か魔法の探究だけじゃなくて魔道具制作も盛んらしいから、そこも楽しみにしている。一応ではあるが俺も魔道具を創ってるからな。
ミアさんと話していると試験時間になったようで、試験官らしき人物が奥から出てきた。
「さて、Dランク昇格試験を受ける奴はこっちに集まってくれ!」
「じゃあ、行ってくるよ」
そう言って、大声を出した男のところに向かう。ミアさんは小さく手を振ってくれた。かわいい。
「ふむ、お前も受験者か?」
「ああ」
「じゃ、ランク証明証を見せてくれ。……よし、確認した。じゃあ、そっちで少し待機しててくれ。暴れたりするなよ?」
「了解〜」
待機を指示された場所には、既に数人集まっていた。そして、俺の後にも数人の列ができていた。意外と受験する奴は多いんだな。
そう思いながら周りを見ていると、目を引く女性を見つけた。
きれいな金髪に翠色の目。軽装な分、背負った弓の大きさには意外感を感じさせられる。そして……
(エルフか……獣人は街中でもまあまあ見たが、エルフは初めてだな)
特徴的なとがった耳でしかエルフである証拠はないが、十分だろう。ファンタジーでお馴染みの、あのエルフである。
(『鑑定』かけてみるか……?いや、やめておこう。感知されて面倒ごとになっても困る)
そこまで考えて、彼女もこちらを見ていることに気付く。そして、数秒間見つめ合った後に同時に目を逸らした。
(今『鑑定』をかけられた……? 分かんねぇな、感知苦手だ)
祐里がそんな事を考えている間、エルフ側は『鑑定』の結果に慄いていたのだが、結局祐里が気付くことはなかった。
༅
「よし!今回のDランク昇格試験の受け付けはここまでとする!では奥の試験室へ移動するので着いてこい!」
そう言うと、試験官は直前に出てきた通路へと戻っていく。
(やっぱこの道、ギルド職員用じゃないんだな……たま~に冒険者が入っていくから不思議には思ってたんだ)
そんなことを考えていたのは祐里だけではないようで、他の受験者もキョロキョロと周りを見ながら試験官の後を着いていった。
「へぇ……」
試験室に到着すると、誰からかそんな声がもれた。さすがにメインホールには引けを取るが、部屋1つの大きさだと考えると破格の広さで、造りがしっかりしていることも見て取れる。
部屋の奥には的のようなものも見えるし、壁際には木でできた武器がいくつも用意されている。そして何より、壁と的からは魔力を感じる。コンタクトに魔力を流して「魔力視」してみると、それがよく分かった。
おそらく無属性魔法の技能【強化】をかけられているのだろう。
全員揃って周りを見ていた俺たちに向かって、試験官が声をかける。
「さっそくだが、試験を開始する! が、まず初めに、言うことがある! Dランクは初心者を意味するが、紛れもなく正式な冒険者である! 規模の小さな盗賊を殺すことも出てくるだろう! 冒険者登録の際に説明されただろうが、Dランクからは依頼失敗時の違約金も発生する! 基準に達していない者は容赦なく落とすので、くれぐれも油断しないように!」
「「「はい!」」」
受験者の中でも、やる気のある……というか、比較的真面目そうな連中が元気に返事をする。約15人中4人くらいか。ちなみに俺は、元気な返事に隠れるくらいの声量で、「あ〜い」と返事をした。
「試験内容は実技のみだ! 向こうの的に向かって魔法、または攻撃性のスキルを放ってもらった後に、木製の武器で俺と戦う模擬戦を行ってもらう!」
「「「はい!」」」
「俺はBランクだからな、当然だが、模擬戦では俺も手加減をする! 全力でかかって来ていいからな!」
(……へぇ、この人がBランクか。人が固まってるし今なら『鑑定』かけても誤魔化せるかな)
この世界では、『鑑定』スキルは特殊なものだ。人類全体のうち3〜4割が先天的に覚えるらしい。そして、『鑑定』のスキルオーブ(後天的にスキルを得られる玉)も、他のオーブに比べて多く流通している。
そのため、6割程度の人が『鑑定』を覚えることになるらしい。商人になるには必須だとも言われているな。
また、『鑑定』の流通に対して、ステータスを偽装したり隠蔽するスキルの流通は極めて少なく、値段にして5倍以上の差があるらしい。
……まあ全部本に書いてあったことだが。
そして。人が大勢いる場所では、『鑑定』をかけた相手を見つける方法は、俺の知る限りでは自分の方を向いている相手を目視で見つけるしかない。
つまり、この場で『鑑定』しても犯人が俺だとバレる可能性はゼロなのだ!!!
と、いうことで。
(『鑑定』)
────────────────────────
〜ステータス〜
名前:シール
性別:男
年齢:34
種族:ヒューマン
職業:剛拳家
レベル:67
HP:2841/2341(+500)
MP:1275/1275
・ベーススキル[P]
『気配察知(8)』『不眠(5)』
・ベーススキル[A]
『基本属性魔法(火4)』『無属性魔法(6)』『拳術(8)』『衝撃波(8)』
・ギフトスキル[P]
『剛体(6)』
・ギフトスキル[A]
無
・オリジンスキル[P]
『不撓不屈(2)』
・オリジンスキル[A]
無
称号
「スライム殺し」「スライムの天敵」「スライムを打ち破りし者」
「拳信者」「拳で軟体を砕く者」
───────────────────────
(ただのヤバい奴じゃったか……)
いったいスライムになんの恨みがあったんだろうね。
アゲハは宿で寝ています。でも途中で起きて、外に遊びに行きました。屋台から漂う美味しそうな香りにつられ、透明化を駆使して串焼きを1本だけ失敬したあと、また宿に戻りました。
宿に帰ってきた祐里に怒られるまであと3時間。
追記:ランクがおかしくなっていたと指摘を頂けたので、書き直しました。応急処置的な修正なので後で再び修正する可能性ありです。また0話から読み直して矛盾点は探しますが、気付いた方がいらっしゃればコメントください!
ホントにありがとうやで……