022 羽
題名変えたけどまだ仮題。良いのが思い付きません……
生命の創造は初めてな上に、今回は特別だ。慎重にいきたいという思いがあったため、俺は意識することを箇条書きにしてまとめていた。
・妖精型、レベル50。
・人格を持つ。
・他人から見えなくなるスキル『透明化』を持つ。
『魔力創造主』で設定できる項目は、今だと頑張っても5つが限度。人格を付けることに意識を割くことになるだろうから、マージンを取ってこの3項目にした。
「っし……」
気合を入れたことによって声が漏れたことに気付くことはなく、少しずつ意識を深く潜らせる。
「明確なイメージ、適切な魔力、今できる技術の範囲内で最大限を。『魔力創造主』!」
ひたすらにイメージする。
大きさ、バランスといった大まかな部分から、容姿、能力といった細かい部分へ。頭の中で、3Dの精巧なモデルを造るようなものだが、人格や能力といった形に表せないものを付加するという要素が、難易度を一気に引き上げているのが分かった。
能力の付加は今ままでも大量にしてきたが、人格は次元が違う。単に情報量という面を見ても分かるだろう。趣味嗜好から思考回路、それらをまとめる性格など。設定しなければならない内容は山ほどある。
果たして、本当にそんなことが可能なのか?いや、できるはずだ。やってみせるのだ。なぜなら……
「っ……頼む、目を開けてくれ……」
なぜなら。
「うぅ……あ、れ……?……マスター?あぁ、そっか……後悔してるの?」
「………………いいや、してないさ。後悔なんかしたらお前に失礼だろ?」
ホッとしてる安心したことで返事が遅れた俺を見て、妖精は笑っている。
「あはは、うん、そうだね。ふふ、相変わらず、シリアスな場面では堅いんだね。これからよろしく?」
「ああ。しばらくよろしく頼むよ。」
難易度からして不可能である人格の付与。その難易度を大きく下げる抜け道。実在の人物をモチーフにする。
あの日、あの時。目の前で死んだ妹を基にして。黒野祐里は数年越しに妹と再会した。……それが紛い物だと、両者共に理解しながら。
とうとうやってしまったか。今の気持ちを一言で言うのならそれだろう。実をいえば、最初にギフトスキルの詳細を見た時からこのことを考えていた。死んだ妹の人格を何らかに付加させることを。
死者への冒涜だろうか? 天国から何か裁きが下るだろうか? 魂の存在は個人的に信じてないが、神がいることは知ってしまったし、何があってもおかしくない。
俺が創造したつもりでも、魂が定着している可能性すらある。……いや、さすがにこれは与太話だな。
目の前でふよふよと浮いてあたりを見回している妖精を見ながらそんなことを考えていると、とあることに気付く。
「……そういや、お前のことなんて呼べばいいんだ?」
妹の名前で呼ぶつもりはさすがに無い。一応名誉のために言っておくが俺はシスコンではないのだ。
「そんなのマスターの自由だよ〜! 超絶美少女ちゃんでも天才美少女セクシーウーマンでもなんでもいいよ!!」
「なんでそんなに美少女を推してくるんだ……。そうだなぁ、じゃあ……朱羽。お前は朱羽だ。」
「アゲハって揚羽蝶の揚羽?」
「いや、アゲハ蝶にかけてはいるけど違うな。朱色の朱に羽でアゲハだ。」
「ふぅん。……なんかセンス良さそうに聞こえるけど……私の羽ってピンクじゃない? 朱色ってすごく濃い赤じゃなかった?」
「そういうのは気にしたら負けだ。……実は俺もちょっと思ったけど。」
「えぇ〜!別の考えてよ〜!」
こいつめ。気持ちは分かるが髪を引っ張らないで欲しい。
「仕方ないだろもう俺が気に入っちゃったんだから! なにより語感が良い!! そしてこれ以上いい名前が思い付く気がしない!!」
「なんでそこでドヤ顔すんのよ……でも、ぐふふ、アゲハ、朱羽かぁ」
ふっ、やはりセンスは似通っているようだな。俺の気に入った名前をお前が気に入らない訳が無いんだ。……あとその笑い方はやめた方がいいんじゃないかなぁ?
「じゃ、改めて。これからよろしくな、朱羽」
「うん、よろしくだよマスター!」
あまりに眩しい笑顔にクラっときてしまった……ん、いや、これホントにクラっときてないか……?あれ……?
「すまんアゲハ、少し疲れたみたい……」
「え、ちょっと突然なに!? 大丈夫!? マスター、マスター!!!」
そしてそのまま、俺は意識を失った。
会話文と地の文の行間をどうするか迷っています。最初と書き方が変わってるし今後も試行錯誤していくので、ご了承ください。