001 風
行頭の空白が反映されないのはなぜだろう。
某県立九里行成高校。県内有数の進学校にも関わらず部活動にも力を入れており、全国大会に出場する部活が複数ある。古くから続く公立校であり、偉人も数人排出している。
テスト順位である程度のクラス分けがなされ、学生達は日々勉学に励んでいる……が、そうでは無い奴もやはりいるものだ。部活動に力を入れすぎて勉学を疎かにしたり、単に素行が悪かったり。逆に、突出して頭が良すぎる奴もいる。
そんな奴ら(俺含む)が集められているのが、このクラス。通称「余り物」だ。
自分で言うのもなんだが、俺はちょっと浮いてた。名前は、「黒野祐里」 と少し中性的で浮いてるって程じゃない。ま、性格に難ありってとこか。理屈っぽいしね。だから、俺がこのクラスに入れられたのは仕方ないかもなって思ってる。
だが、俺が霞むくらいこのクラスの奴らはキャラが濃かった。名前はまだほとんど覚えていないが、特徴だけはだいたい覚えてる。
さて、本日5月6日木曜日はゴールデンウィークが明けて一発目の登校日だ。うん。言いたいことがある。周りの奴らも同じ気持ちなんだろうなってすぐ分かる顔してるよ。
……ずばり言おう。すんごい眠い。とてつもなく眠い。暖かな春の日差しと、中庭の常緑樹の香りを運んでくる柔らかな風。加えて昼食終わりの4限目だ。そしてとどめに、国語の授業を受け持っている担任のしの先生の子守唄のような声。
これで眠くならない奴は、不眠症かなんかじゃないかって疑うレベルだ。俺の前の席はカタブツロングちゃんなんだが、こいつまでもが既に夢の世界に行っているようだ。たしか名前は黒瀬とかなんとか。俺と同じく「黒」が苗字にあることだけは覚えている。
さて、授業に意識を向けると余計眠くなるからと半ば意地で意識を逸らしていたが、どうやら俺も限界のようだ。おやすみ〜。
༅
目が覚めると、そこは雪国だった。嘘だ。だがまあ雪のように真っ白でなにもない部屋であることは間違いない。壁も床も天井まで真っ白なその部屋は、おそらくだがそれなりの大きさだと思われる。ほんとに真っ白でイマイチ距離感が掴めないんだよね。
「うわっ!?」
ビックリした、他のヤツらもここにいたのか。後ろにいたからすぐには気付けなかった。現状が理解できずに固まってしまっていたってのもあるだろう。
辺りを見回したが、ここにいるのは俺のクラスメイトと眠りに入った瞬間に授業をしていたしの先生だけみたいだ。
……問題が発生した。由々しき事態だ。誰から起こしたらいいか分からんぞ。
男子はあんまり仲が良い人がいない。キャラが濃いことが分かった上で自分から声かけるのは勇気がいるんだ。もちろん俺には無理だった。
女子はセクハラだのなんだのと難癖付けられそうで触りたくない。先生も女性だし同じ理由でダメだ。まあ、女性の中なら比較的マシな選択肢ではあるが……うむ。困った。
〜 2分後 〜
よく考えたら俺が最初に起きてしまった時点でパンツ見放題な状況だ。疑われてもおかしくないし、証人がいないから弁解も意味ないだろう。初めから詰んでいたってことだ。悲しいけど、悩む必要はもうないかな。さっさと先生を起こしてしまおう。
「先生、しの先生! 起きてください!」
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