017 街
時間が空いてすまない…やっと人間と接触できたよ……
転移光が収まり、目を開ける。よし、どうやら図らずも夜に出てこられたようだ。周囲に人影もない。ついそのことにツッコミを入れてしまった……が、遠くから声が聞こえてきた。
「おい!転移陣の光だ!きっと攻略者だぞ!!急げお前ら!!」
目を開いた瞬間は、夜なら目立たないだろうと思って喜んだのだが。逆に光で目立ってしまったようだ。
すぐさまノヴェルスローブの認識阻害を発動し、同時にローブとブーツの効果で空へと逃げる。夜の闇に紛れることで認識阻害が強く働くのも期待しながら。
ただ、いくら認識阻害が付いているとは言っても、効果が発動している間は淡い燐光を発しているから過信しすぎることはできないんだよな。まあかっこいいからって理由でわざとそう創ったんだけどね。
そんなことを考えていると、下から聞こえていた声が一段と大きくなり、自然と耳に入ってきた。
「お、おい!上になんかいないか!?まさか、あいつが攻略者なんじゃ!?」
「やっべ見つかんのはえーよ」
誰だよ隠蔽と発光の効果一緒につけた奴。俺だわ。後で発光は消しておこう。
そして、俺は迷わず逃げの一手を選ぶ。下にいるおっさんの顔が怖いからな。
初めての場所だから土地勘がないが、適当に逃げてなんとかなると信じたい。兎のいた森しかり、ダンジョンしかり。俺はこういう時の運はいい方だ。人の運とかは壊滅的なんだけどね……まあ今はそれはいい。
とりあえず……街の外壁と思しき方へ、すたこらさっさ~
転移した場所から離れていく途中、ふと後ろを振り返るとダンジョンの姿が見えた。高く高くそびえる、なんだか威圧感を感じるような荘厳な塔だった。
ダンジョンのフロアは絶対あんなに横が狭くないけどな。て、てゆ〜かぁ? ウチはあのダンジョン攻略済みだしぃ? よゆ〜だったしぃ?
…………ちょっと気圧されたのを隠そうとして、内なるギャルが出てきてしまったようだな。もうお前の出番はないからお家へお帰り。
༅
はい。という訳で着きました街です。この街の名前はカルロ。二等迷宮の近くということで、結構栄えていたのですが、私が迷宮を攻略したので大騒ぎだったようですね。
まあ全部想像なんですけど。
だってまだ街に入れてないもん。なんも分かんないし。
「いや、だからさ? ほんとここまで休まずにきてめちゃ疲れててさぁ……」
「だーから無理なんだってば。あ、さてはお前知らないで来たのか? 近くですごい噂になってるらしいんだが……いいか? ダンジョンが攻略されたのは喜ばしいことだ。そして、攻略者はとんでもない量のお宝やら、スキルオーブやらを手にしたわけだ。しかし、この街のアホなお偉いさん方は、攻略者が出てくる前に、それの半分を税として納めろと言い出した。当然、攻略者が名乗り出るわけもねぇんだが……おこったお偉いさんは、街の出入りを禁じて内部で攻略者探しを始めたんだよ」
(すんごい長ゼリフを一気に言ったなおっさん)
「嘘だろ?転移の光もまだ無かったんじゃないのか?」
「ああ、そっちは知ってんだな。実際転移光を見たやつはいないんだが、2日経っても攻略者が表れないからな。お偉いさんは、俺達が見逃したか見たのに隠してるんだって騒いでんだよ……。ダンジョン前の警備隊も俺達門兵も、呆れ返って半分以上サボってるのが現状さ」
「みんなサボってるんなら俺一人を見逃したっていいじゃんか!」
「い〜や、そういう訳にはいかねぇんだな?なぜならば、久しぶりのお客さんで気合が入っちまったからさ!」
「クソだりぃ!」
「面と向かってそういうこと言うんじゃねぇぞボウズコラ」
「は〜分かった分かった、仕方ねぇ、別の街に行くよ」
「なんだよ、引かれるとそれはそれで申し訳なくなるじゃねぇか……俺が言うことじゃねぇが、すまねぇな」
「そんな真面目な顔すんなよ、さっきまでのニヤケヅラの方が似合ってんぜ〜」
……はぁ、第一街人との接触は良好だったが、街へは入れなかったな……。まあ、言葉が通じると直接確認できただけでも良しとするか。
さてと、じゃあ不法侵入でもしますか!
さすがに街の閉鎖理由が訳分からなかったので、修正しました。