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155 最後に滅

・前回までのあらすじ

異世界へ転移させられたユーリは諸々の戦いを経て軍事国家ランパードへ流れ着いた。ダンジョン産業が盛んであるランパードでなぜか森の探索を始めたユーリは、謎のメンツと共に謎の館へ囚われてしまう。謎解きをクリアしたが限界が来て部屋の扉をぶち破った彼らは、魔物(?)を躱してトイレへ駆け込むことはできるのか!?

 ──遭遇。


 〈人に近い構造の体を持ちながら常人の2倍ほどの大きさを持つその獣は、それだけで威圧感を放っていた。全身に毛が生えところどころに突起を持つその獣。最も目を引くその顔にのみ毛が生えておらず、そこには(ただ)れた花が咲き双眸は不安定に揺れている。瞳が時折顔から浮いて独りでに回る様は異様でしかない。三本の手は非対称かつ人間離れした証であり、見るものの心中を揺らがせた〉


 キツイ。見ているだけで気が滅入るような、神経から恐怖が入り込んでくるような威圧感。人間に近い構造だと? 目が2つあって二足歩行なぐらいしか共通点ないだろ。口が2つあってそこに歯がないのが個人的に物凄く嫌いだ。


 〈今まで出会ったどの魔物よりおぞましいその姿と雰囲気は本能に悪影響を及ぼします。隠蔽されたステータスに変動がありました。個体名:(ラノア)(フー)(幽崎 白夜)が一時的狂気に陥ります〉


 おいそれ絶対SAN値(正気度)下がってるだろ!!

 ……まずい、マズイぞ。


「タガミ!」


「承知した。『雷帝』を使用する」


 〈発動に成功しました〉


「『雷銘』・【紫薇放電(しびほうでん)】」


「あがっ!?」


「かひゅっ」


 こちらが動く前に昏睡したラノアは置いといて、俺が指さした2名をタガミが紫の電気で拘束した。

 阿吽の呼吸だ。奇跡に近いけどね。手合わせしたことがあって、しばらくダンジョンで俺の指示を見てもらってたからできたことだ。


 〈怪物のターンです。怪物は周囲の魔力を突起の先端に集め出しました。それに伴い、体表に魔力でできた薄い膜が張られました。個体名:ユーリのターンです〉


「はい?」


 嘘だろこれターン制なの? じゃあタガミは最初の順番だったってことか?


「ラノ……いや」


 ラノアに本当に動けないか確認することで俺のターンが消費されたらたまったもんじゃない。だってこいついかにも自爆しそうな体勢だし。


「『氷帝』」


 〈発動に成功しました〉


「…………『凍牢(とうろう)』」


 〈指定された目標を一瞬にして冷気が覆うのと同時に、対象から熱を奪いながら氷漬けにすることに成功しました。しかし、技が有効だった喜びも束の間、貴方は小さな違和感に気付きます。その正体は奪った熱を冷気に転用する流れに(ほころ)びがあることです。対象から上手く熱を奪いきることができず、結果的に周囲の氷がだんだんと薄くなっていきます〉


 ダメか。『氷帝』によって可能な攻撃手段は吸収・【雪車】・【凍柳紋(とうりゅうもん)】くらいだ。それらの中から迷ったあげく、その()の外にある安全策に走った上で失敗した。

 最悪だね!


「すまん!」


「最初の一手ならそんなもんだろ、気にすんな! それよりアンタらに萎縮されるほうが絶望的だ!」


「冒険者A……良い奴じゃねぇか」


「ははっ! じゃあ名前くらい覚えてくれよな!」


 〈個体名:リュオンのターンです。貴方は時間が経つにつれ怪物から感じる威圧感がだんだん強まっていることに気が付きました。また、それと同時に攻撃に関する行動が制限されていることにも気付きます〉


 ……ぬん。攻撃はもちろんできないし魔道具も使えない。動く途中で……なんというか……禁忌を感じる? というか? 動きを止めてしまう。多少移動するくらいはできるが、他人と場所は入れ替われないし当然攻撃行動にも入れない。多分回避すらできないぞこれ。


 〈個体名:フーのターンです。貴方は怪物の威圧感が突如として増幅したことに気付きました。それは怪物の後方から発せられている別の気配によるものだとすぐに理解することになりました〉


「えぐすぎんだろ!」


「狂気の沙汰だな」


「おいおい……どうすんだよこれ」


 追加の敵だ。外見は同じ。攻撃方法が一緒ならターン的な猶予はあるはず。でも余裕はない。


 〈個体名:フーの攻撃は確かに怪物へダメージを与えましたが、その硬い皮膚によってダメージは減衰されたようです。怪物の体勢を崩すことは叶いませんでした。追加の敵が1体出現しました。ターンが改変されます。個体名:タガミのターンです〉


「全力で」


「仕方あるまい。『雷帝』」


 武器(小太刀)から手を離したタガミがそう呟く。流れるように右手を前に突き出し、手のひらを真上に向けた。


 〈成功しました〉


「『雷銘(らいめい)雷神(オルソーザス)・仮説】』」




 その瞬間、世界は塗り変わった。




 景色も人も、何も変わらないはずなのに。その圧倒的でどことなく身に覚えのある、そんな存在感によって、まるで別の世界に紛れ込んだかのような錯覚を覚える。


 〈──エラー。想定外の出力を確認。摂理による空間の揺らぎを検知。館の構成が1部欠損する可能性があります。我が主(マスター)へ緊急の警告(アラート)を実行します。成功。尚も神力の増幅を確認。結界を貫通する恐れがあります。権能を貫通する恐れがあります。警告(アラート)の実行プロセスにエラー発生。我が主(マスター)の権能領域に一部エラーを検知──〉


 脳内に響く声に焦りが混じる。タガミの中にも何かが混ざっているようだ。いや、増幅する神力と魔力から察するには「混ざる」というより「変化する」と表した方が近い気がする。


 まあ、俺は前にも見たことあるし技の説明もしてもらったから知ってるんだけど。


「……(やかま)しい声だ。失せよ偽物」


 パチッ、と。静電気のような軽い電気の音が響き、システム……いや、ゲームマスター? の声が途切れた。


「くだらん小物相手になぜ吾輩を()んだ? ……いや、これは……そうか。あの小僧のちょっかいか。相変わらずくだらん悪戯が好きなようだ。変わっても変わらんのだな」


 高みに座する者の声。それは、俺が初めて〈氷帝〉の声を聞いた時のような震えを伴っていた。(おそ)れか、(おそ)れか。両方かもな。

 味方と分かっていても心胆寒からしめるのだ、この爪先から絡めとられるかのような気配は。


「まあよい。今はあまり離れられんからな。【(ほど)けよ】【霧散せよ】【順転せよ】。これで良かろう。……おいそこの。目を逸らすな前も会っただろう技能神の手駒よ。まったく……こやつに言っておけ。吾輩はしばらく降りて来られん。今後は模倣──偽物でやり繰りするしかないぞ、とな。ではな」


 霧散。急激な温度変化が体調に悪影響を及ぼすように、急激な神気の霧散は吐き気や目眩(めまい)を引き起こす。普段から神気に慣れていない周りのメンツは特にその他症状が酷く、まともに立つことすら難しいようだった。



 だが、その悲惨な顔色と引き換えに2体の怪物は跡形もなく消滅させられていた。

 ……タガミの奥の手は見ての通り強力だが、気まぐれで燃費が悪い。擬似的な神憑(かみがか)りだからそれも仕方ないけど。


「ぐぅ……3度目だがこの痛みには慣れんな……」


「さんきゅータガミ、助かったよ」


「よい。あの場面では仕方あるまい」


 タガミはそう言うが、実際問題俺にもやろうと思えばできたことだ。いやまあ、スキルに成功率とかいうクソシステムが引っ付いた現状での最善はタガミの()()であることに変わりはないんだが。


 それでも、全部任せてしまったことに多少の罪悪感はあった。デメリットもある技だしな。


「とりあえず、【紫薇放電】でもう1回そいつらを痺れさせといてくれ。発狂がいつまで続くか分からんし、あと10分くらい放っておこう」


「こやつらの回復はどうする? お主がやるのか?」


 ふむ。どうしようね。


「ま、どうせ10分は動けないんだし。回復薬くらいちまちま創ることにするよ」


「そうか」


 はあ。トイレ……行きたいな……

ちょっと前に投稿したと思ったらしていませんでした。ごめんなさい。

最近はずっとラブコメの沼に浸かってそれ系の執筆をしようとしています。オススメのラブコメアニメあったら教えてください。最近見たのは俺ガイル、五等分の花嫁、とらドラ、着せ恋です。そして冴えカノを見ている途中。対戦よろしくお願いします。

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