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145 探掘開始

 あの後、ギルドマスターは外出しているようで謝罪され、こちらとしても特に用がなかったのでそのまま逃げるように立ち去った。


 青い顔でしきりに謝罪を繰り返していた受付嬢は、あまりに悲惨な雰囲気だったのでチップで誤魔化そうとしたら更に狂乱し始めたので……宥めるのにかなり時間がかかった。

 詳しくはあまり思い出したくないのでここらでやめておこう。


 そして今。絶賛ダンジョン攻略中である。


「久しぶりだけど落ち着くなぁダンジョン。楽しいなぁ」


「ここまで地形が切り替わるとはなぁ、実際目にしてみると驚きを隠せぬ。見るもの全て興味が尽きぬぞ、まるで言語と知能を手にした時のようだ」


「いい表現だなそれ」


 潜っているのは〈探掘開道〉というダンジョンだ。推奨冒険者ランクDで、初心者向けのお手軽ダンジョン。鉱石が採れるのが特徴の洞窟型ダンジョンで、階層の概念が無い。

 ひたすら奥に進んで、たまに魔物とぶつかって、最奥にボスが待ち構えている形になる。


 採取できる鉱石は主に、魔鉄という魔力を多く含んだ鉄である。採取する時点では不純物の多い魔鉄鉱石という物で、熱や魔力をを加えて加工したりスキルを使ったりして鉄になる。

 当然ミスリルなんかの希少鉱石がこんな所で採れるはずもないのだが、俺としては十分満足していた。


「にしても、魔鉄鉱石ばっかりだな。量はそこそこあるからいいけどさ」


 そう言って、『炎帝』の力で魔鉄を加工する。専門にしてる奴に頼むのもいいが、こういうのも経験だ。失敗しても何かの役には立つだろう。

 ……ん? なんで俺が『炎帝』のスキルを持ってるかって? そりゃあ当然、〈炎帝〉を倒したからだ。まあ色々あって、力の一部を借り受けられるような形になってる。詳細はまた今度話そう。


「さっきからやたらと鉱石を掘り当てているが、そういうものなのか?」


「ん? あー、なるほど。違うよ、魔道具のおかげ」


矢張(やは)りか。吾輩はてっきりスキルかと思っておったが……」


「目の中に、っていうか目と一体化してるんだよ。そういう魔道具なの」


 使っているのはスキル『神眼』の魔力視効果だ。魔力が見えるようになるもので、目と一体化しているコンタクトに付けたスキルの1つである。


「それは奇っ怪な。そのような面妖なもの、寡聞にして初めて知ったぞ」


「そりゃそうだ。俺が創ったんだから」


「……おお、なるほどな。世界に1つの、ということであるか」


 さて、そもそもなんで石掘りなんてやっているのかといえば、『魔力創造主(マジックメイカー)』のためである。

 最近は特に使っていない効果だから忘れてしまいそうになるが、『魔力創造主(マジックメイカー)』は素材を使った創造ができる。色々とお得だし素材によって意図しない特徴が表れて面白いのだ。

 鉱石なら強度に変化が出たり、見た目も大幅に変わることが多かった。溜めておけるだけ溜めておきたい素材なのだ。


「魔物きたぞー。ラノア準備して」


「はい」


 忘れては行けないのが、今回の目的。ダンジョンで遊ぶのは前提として、建前としてはラノアのレベル上げが最大の目標である。故に、サポートはしても魔物を倒す主体となるのはラノアが望ましい。

 この世界で、俺はほとんどルチルとの2人組だったから経験値の分配について調べられていない。だけど、戦闘経験を積む意味でもラノアが主体となって戦えるようになるのは大事だと思う。


 って。何マジメなこと考えてるんだ俺よ。子どもの育成方針考えてる親かと思ったぞ気色悪い。

 そもそもな話、俺は子どもが嫌いである。前にも誰かに言った気がするが、何度でも言おう。力を持たず、理不尽に抗うことが出来ない存在。だから……いや、これは建前だな。

 幼い頃の記憶が刺激されてめんどくさい。だから嫌いだ。本能に近い。無意識に拒絶しそうになる。


 ……なんでこんなことやってんだろうな、俺。あー、エリフィンでも同じこと思った気がする。


 そんなことを考えていると、ラノアの気配が急に薄くなる。普段からあまり喋るほうじゃないし、目立とうともしていないから気配は薄いが。『気配察知』的な意味で、気配が薄くなった。スキル『魔素排出』の応用だ。

 暗殺者型のラノアは、本来正面戦闘を得意としていない。暗殺者って基本的にバレたら終わり、バレないように手を尽くす人たちのことだから。


 別にそれでもいいと思う。殺す相手が人間だけなら。でも俺に着いてきたいって言ってたし、レベル上げの効率を考えても魔物の相手は必須。

 ダンジョンでたま~~~に落ちるレベルアップポーションも、俺なら量産しようと思えばできる。ステータスの伸び率が悪くなるかも、とかの考えられる不都合込みでラノアにアンケートをとった結果、レベルアップポーションには頼らない、という結論に至った。

 故に、正面戦闘の技術を磨いてもらうしかない。


 まあ、暗殺者型なんだから正面戦闘が正面戦闘であってはいけないけど。


「言ったこと忘れないようにね~」


「はい」


 俺自身が暗殺者型ではなく力押しを好む以上、教えられることは多くない。だから、教えたのは「いかに暗殺へ持ち込むか」だ。……どっかのヌルヌルした先生の受け売りだが。いや、これはその先生に敵対してる人の教えだっけ?

 目眩しなんかの方法に加え、この世界なら敵の攻撃ターゲットを自分に集めるスキルもある。そういったスキルを持つ人間を将来仲間にして活動するかもしれない。身に付けておいて損は無いはずだ。


「終了、しました」


「お疲れ様。ポーションいる? 飴は?」


「飴を、もらいます」


「はいどうぞ」


「ありがとう、ございます」


 ポーションは、HP・MPを回復。体力の回復はおまけ程度。『魔力創造主』で創った()は、体力回復に特化したもの。ポーションと違って腹が膨れるほどのものではないから気軽に摂取できるが、溶けて効果が出るまでにタイムラグがある。

 トカゲの魔物が消えてドロップが出現するのを眺めながら、俺もラノアと一緒に飴を口に入れた。


「よし、ここは粗方採掘し終わったから場所を変えよう」



 これが、今日からしばらくの日常になりそうだ。

ポーションは水なのでお腹に溜まります。傷に振りかけても効果はありません。

なので、戦闘中に摂取する事が難しく、その分治癒術が使える人間は重宝されます。


それでは。

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