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142 日常・移動

「ユーリ、様。ごはん、できました」


「ん、あい~。もーちょい待って~」


「ぁ、はい。わかりました」


 ところ変わってユーリ一行。シューケッツの森で異変が起こり始めた頃、ユーリはとことん自堕落な生活を送っていた。

 氷帝との戦いで頑張ったご褒美だとか、せっかくメイドとして着いてきたんなら少女(ラノア)に仕事をあげた方がよかろうだとか、無意味に理論武装したユーリがだらけきっていたのだ。


 もちろん、ユーリの頭の中からは『氷帝』の力を使いこなすためにずっとひとりで優雅(自堕落)に過ごしていた記憶はなくなっている。あの期間は確かにスキルの訓練こそしていたが、生活リズムは狂いきっていたのだった。


「……そろそろ飽きてきたな。手持ちの武器はだいたい一瞬で手元に創りだせるようになったし、ダンジョンにでも遊びに行くか?」


「ほう、それは良いな。吾輩、ダンジョンという言葉は知っておるが実際に目にしたことはまだないのだ」


「へー……そだな、ラノアのレベルも上がって欲しいし次はダンジョン行くか! となれば……次の目的地は軍事国家ランパードだな」


 軍事国家ランパード。七国の中で最も高い武力を誇り、その源にあるのはその七国の中で最大数のダンジョンによる多くの武具やポーション、魔道具といった副産物、そして高いレベルを揃えたダンジョン攻略者たちであった。


 他国との違いでいえば、そのランパードと純華聖王国の2国のみ、奴隷制を採用してもいる。犯罪奴隷、借金奴隷の2種類に分けられるそれらは、契約魔法の1種である奴隷契約によってなされる。


 犯罪奴隷はそのまま、犯罪等によって奴隷と落ち強制力が厳しく設定された者たちのことだ。この場合は全ての命令に強制力が生じる。生々しい話性的な命令も含まれるが、死に至らしめることだけは禁止されている。ただその分、その犯罪が冤罪ではないかは非常に厳しく精査される。

 借金奴隷は、元々は借金が返せなくなった者を一時的に奴隷として扱ったことに起源する。現在は、経済状況が苦しくなった者や奴隷になりたいという奇抜な性癖を持つ者の駆け込み寺のようになっている。

 この場合は、事前に奴隷と奴隷商人の間でどこまでの命令を受け入れられるかを決めておき、契約者にはそれも踏まえて契約するかを決めてもらうことになる。かなり特殊な形態である。


 ──というのも全て、本で読んだ内容だが。


 なんとも退廃的な話だが、この世界の歴史を否定する気もなければ、変な正義感で奴隷を解放したいとも思わない。この世界では──いや、その国ではそれがルールなのだ。

 エリフィンの闇の部分のような正真正銘の悪とは違って、不当に奴隷へ落とされることも無いみたいだし借金奴隷の方は人権が守られているようだしな。


「よし、そうと決まればとりあえずメシだ」


「うむ、そうしようではないか」


「ぁ、こちら、です」


「お、うまそ~」


 目的地は決まった。そうと決まればすぐに動こう。軍事国家ランパードは、今いるエリフィンと隣接している国だ、移動に時間はかからないだろう。




 〇──〇──〇──〇──〇──〇──〇──〇




「着いたー!」


「着いたのか?」


「着いた、んでしょうか?」


 着いたのである。そう、軍事国家ランパードの首都に……ではなく、ランパードという国に入るための関所に、である。

 そして、関所を通るために並んでいるであろう人々の列が、ずらりと続いている。ヘタすりゃ500メートルは並んでいるのでは? と感じるほどだ。


「ヘタすりゃ500メートルくらい並んでるんじゃね?」


 思わず言葉にまでしてしまった。だが、それほど長い列なのだ。

 ランパードへ続いているという道に沿って来てみると、急に人の列にぶち当たった。


 不思議に思って最後尾にいた商人らしき人物から話を聞き、関所での審査待ちの列なのだと分かったのだ。


 よくよく目を凝らせば、確かに列の先頭には門と……謎の、赤い線があった。柵のように、左右へ赤い謎の線が伸びていたのだ。


「なあおっさん、あの赤いのはなんだ?」


「へぇ、こっから見えるのか? ……まあ、あれは目立つからな。目が良い奴なら見えるか。あれはな、〈境界〉だよ。ランパードの土地を囲うように貼られた、一種の結界みたいなもんだ」


「国土全部を囲ってるのか? そりゃ……めちゃくちゃすごいな。魔道具か?」


「ま、そういう噂だな。真実は国王とその周囲のお偉方だけが知ってるんだって言われてる。だがまあ、効果だけ広まってりゃ十分なんだろう。許可なく通ろうとすれば……ドカン、さ。あれが貼られたのは数年前だが、今じゃこの国に入ろうとする奴で知らない奴なんて……アンタくらいのもんさ」


「へぇ……」


 商人がここまでペラペラと情報をくれるのは、単純に賄賂(わいろ)のおかげだ。と言っても、貨幣をそのまま渡したのではなく、お手製の魔道具を1つくれてやったのだが。


 あーだこーだと世間話をしているウチに日が暮れてきた。列は3分の1ほどしか進んでおらず、まさかと思いながら商人に聞いてみると……


「その通り。ランパードへの関所は、通称〈渡り日の門〉。数日に渡って待たされる、最悪の門なのさ! はっは、知らなかったってーことは、準備もしてないって事かな? 諸々、お安くしとくぜ?」


 野営の準備なんてどうとでもなるので軽く断ったが、予想外な所で足止めをくらってしまった。

 ただまあ、この商人のようにランパードへ入ってからのツテが作れそうなのは少しおいしいか。


 焦る理由もないんだ、ゆっくり構えていこう。

地図とか乗せられたら良いんですが……やり方わりません。次あたりで少し詳しめに解説しますね。


それでは。

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