014 雪 / side雪屋鵠
設定だけが溜まり続けてる。
転移の際の光に思わずつぶっていた目を開くと、次の瞬間には太陽の眩しい光が目を刺した。開いた目を一瞬で閉じて、強い光から反射的に目を守る。
「…………?……ここは……」
目を細めながら辺りを見回す。すぐに、多くの人々がこちらを見つめながら自分を取り囲んでいるのに気が付いた。
「…………ちょっとだけ……あつい……かな……」
そんな中漏れるのは、恐怖でも不安でもなく、だんだんと強くなっていく不快感。だが、それもある程度は仕方の無いことかもしれない。なぜなら彼女は、マフラーにイヤーカフ、手袋までしている。明らかな重装備だからだ。
転移する前、日本は春だったのは先に述べた通り。にも関わらず、彼女はこの服を着ている。これが彼女の基本装備なのだ。
そしてようやく、周りのざわめきに気付く。既にそれはかなりの大きさになっていた。
「今、突然現れたわよね……?見間違いじゃなくて……?」
「ああ、間違いねぇ。俺はちゃんと見てた、うっすらと光が刺したと思ったら、次の瞬間には……」
「見たことない服……それに……もしかして天使様?いや、まさか女神様……?」
「おかーさん、あの子どこからでてきたの!?」
右も左も分からない異世界だ、動くに動けない。キョロキョロと周りを見回し、その様子を大人数が見守る。いつまでも続くかに思えたその時間は、唐突に終わりを迎えた。
「どいてください! 警備隊です! 通して! いったい何事ですか!」
「これは……? この子を囲んでいた、んだよね……? すまない、これはいったい?」
少女を囲む人だかりをかき分けて来た人物達は、物々しい鎧に身を包み、その腰には剣を差している。いかにも兵士といった者たちが4人ほど、輪の中に割って入り、中心にいる少女を警戒しつつ事情聴取を始めたのだ。
そして、ほとんど間を開けずに、更にもう1人。4人とは違って、周りを囲んでいる人々に似た服装をした人物が入ってきた。
「おいおい、警戒するのは分かるけどさ? いかにもな中心人物を放っておくってのはどうなんだよ?」
「た、隊長!?」
「あー、今は敬礼はいいから。非番だし。それよりもこの子だよ。この中で直接話を聞いたものは?」
隊長と呼ばれた男は、兵士だけでなく周りにいる人々にも視線を飛ばし、少しの間返事を待った。そして、誰もいない事を確信すると小さくため息をつき、中心にいる少女に声をかけた。
「はぁ……まあいい。お嬢ちゃん? なにかやってしまったのかな? あー、サイフを落としちゃったとかかな? それとも、ご両親とはぐれてしまったのかい?」
「……?」
「……あー、まず、俺の言葉は分かるかい?」
「……(コクリ)」
「そうか。おじさんの名前はグレイル。この街の警備隊……衛兵と言った方が分かりやすいかな? とにかく、見回りなんかをしたりする人だ。お嬢ちゃんのお名前を教えてくれるかい?」
「…………しろ。」
「……そ、そうか。いい名前だな。(やべぇ……会話のテンポが遅いしやりにくすぎる……つーか俺子ども苦手なんだってどうすんだよこれ……)」
と、成立しているかどうかも怪しいやり取りをしているところに、他の兵士から小さく声がかかる。
(隊長!……その、信じられないことですが、証言がどれも一致しているため、嘘をついているとは考えにくく……)
(らしくないな、カイト。そんなに言いにくいことなら場所を移すか?いや、そうだった、道の真ん中を塞いでいたんだったな。とりあえず『鑑定』持ちがいる本部に移動させるから、そこで報告してくれ。)
(了解です!)
そしてその間少女は、神と話した(?)時のことを思い出していた。
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「よくぞ『合格』したのう。白い子よ。名前はなんと言うのじゃ?」
「?」
「……」
「……?(聞いてなかった)」
「…………ま、まあよい。わしの名はリベルタ。お主に分かりやすく言えば「神」の1人ということになる。……(中略)……『合格』したお主には、お主の望むモノを1つ与えよう。能力でもアイテムでも、なんでもよいぞ」
「……………………雪が、いい。」
「…………あ、うん。こっちでいい感じのを作っておこう……。さて、ここからは『合格』した5人のうち、ファーストを除いた4人に伝えることになっておる情報じゃ」
「……?ファースト……?」
「うむ。『合格』した者の中で、審査項目の合計得点が最も高かった者のことじゃ。お主らの中では、黒野祐里という者がそうじゃな。彼には、ほとんどの情報が制限されておる。向こうの世界の神からの要請じゃ。因果を司る神じゃから、何かしらの理由があるんじゃろう。詳しくはわしも知らんよ。奴の言うことを聞く義理もないが、まぁ、手間が省けるのなら喜ばしいからのう」
「くろ、くん……しんじゃう?」
「まさか。いくら情報がなかろうとも、自分で全てを切り開くじゃろう。それは『合格』した者全てに言えることじゃよ。そしてお主もその1人じゃ。さ、まずは《ステータス》について話そう……」
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「あー、シロちゃん?ここにいると道が塞がれてしまうんだ。場所を移したいんだけど着いてきてくれるかい?」
「(コクリ)」
(あのかみさまが言ってたこと…今、できるのかな……『鑑定』)
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〜ステータス〜
名前:雪屋鵠
性別:女
年齢:17
種族:ヒューマン
職業:無
レベル:1
HP:10/10
MP:25/25
・ベーススキル[P]
無
・ベーススキル[A]
無
・ギフトスキル[P]
『成長判定:雪(-)』
・ギフトスキル[A]
『鑑定(max)』『知識庫(-)』
・オリジンスキル[P]
無
・オリジンスキル[A]
『雪が降る(1)』『雪が積もる(1)』『雪が溶ける(1)』
称号
異世界人
雪を愛する者────────────────────────
※P→パッシブ、常時発動。A→アクティブ、能動的発動
(できた! これ……『成長判定:雪』……いいのくれた、うれしい)
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『成長判定:雪』:雪に関するスキルを覚えやすくなる。雪に関するスキルの成長率に補正。雪が降っている時、ステータス2倍。雪が積もっている時、ステータス2倍+移動に極大補正。あらゆる状況で滑らなくなる。
※ギャグは対象外
『雪が降る』:雪を降らせることができる。
『雪が積もる』:雪を積もらせることができる。
『雪が溶ける』:雪を溶かすことができる。
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(とりあえず、くろくん……さがして、おしえなきゃ。)
「お、おい!?お嬢ちゃん!?どこに行くんだ!戻って!ちょ、ちょっと!!!聞こえてないのか!?」
……この少女が黒野祐里に会うのは、まだまだ先になりそうだ。
ステータス表示が最終決定したので修正しました。