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137 勝・別離

 なんだこれは。『氷帝』に〈混沌の種の欠片〉……いや、前半はまだいい。後半はなんだ? 何を言っている?


 突如頭に響いた声には、覚えがあった。前に1度だけ聞いたことのある声。前回は、最初に転移した森でオリジンスキル『四季風』を得た時だった。

 そして、街に出てからこの声について調べると以外に一般的ではないという事実に驚いたのだ。


 この声は、基本オリジンスキルか『〇神の加護』のような特別なスキルを獲得する時にしか聞こえてこないらしい。そして、オリジンスキルを持っている人間はかなり珍しい。神の加護スキルも、オリジンスキル程ではないが珍しいものだ。

 オリジンスキルは、国に10人いるかいないかというレベルで少ないらしく、加護は50人いれば多い方だという。


 経験する人間が少ないのだから、この声についての資料が少ないのも納得だ。



 ──などと、現実逃避しているのもそろそろ苦しくなってきた。種族の偽装……確認せざるを得ない、か。


「『鑑定』」


 ───────────────────────

 〜ステータス〜


 名前:黒野祐里/ユーリ

 性別:男

 年齢:17

 種族:ハーフ(エンジェル/ヒューマン)

 職業:冒険者

 レベル:235

 HP:124/27968

 MP:80/58861


 ・ベーススキル[P]

『マルチタスク(max)』『高速思考(max)』『身体操作(max)』『魔力操作(max)』『無想剣(max)』『魔導師(max)』『風導師(EX)』『土導師(max)』『気配察知(max)』『不落の陽(EX)』『風読み(8)』『神気(8)』『病気耐性(3)』『状態異常耐性(6)』『精神汚染耐性(2)』『想像力(max)』『直感(6)』『天秤(1)』『MP自然回復速度上昇(1)』

 ・ベーススキル[A]

『基本属性魔法(火5、水7、風9、土8)』『光属性魔法(1)』『闇属性魔法(2)』『無属性魔法(8)』『回復魔法(max)』

『剣術(6)』『刀術(6)』『槍術(6)』『弓術(6)』『盾術(6)』『棒術(6)』『札術(6)』『銃術(8)』『鎖術(6)』『鞭術(6)』『投擲術(6)』『瞳術(max)』『罠術(7)』『体術(6)』『創武器術(6)』『魔術(2)』『魔法陣術(5)』

『鑑定(max)』『遠視(7)』『暗視(max)』『気配感知(max)』『魔道(8)』『治癒鑑定(-)』『蘇生(1)』

『フレッシュ(max)』『召喚(7)』『擬態(4)』『詠唱形骸化(5)』『製図(5)』『描画(4)』『スキル譲渡(-)』『スキル貸与(1)』

 ・ギフトスキル[P]

『氷帝(1)』

 ・ギフトスキル[A]

『魔力創造主(-)』『氷帝(1)』

 ・オリジンスキル[P]

『碧翼(-)』

 ・オリジンスキル[A]

『四季風(max)』


 称号

「異世界人」「神と対話せし者(完全隠蔽)」「不敬」

「慈悲深き者」「無慈悲なる者」「熊殺し」「鬼殺し」「盗賊殺し」「氷帝殺し」

「風好き」「土好き」

「魔法使い」「魔術師」「魔力貯蔵庫」「魔力操作者」「魔力使い」「魔力技巧者」

「武芸百般」「全てを扱う者」「進む者」「痛みに怯えぬ者」「痛みを受け入れた者」

「創る者」「飛ぶ者」「走る者」「凍らぬ者」


 ────────────────────────



「…………は?」


 エンジェル? ……天使? 俺が? …………は???

 いや、そこ以外にもおかしい部分がある、なんで武器術のスキルレベルが軒並み下がってるんだ? 『創武器術』より前に取ったスキルは『罠術』以外全部レベルmaxだったのに……


 混乱しながらステータスにあらかた目を通し終わったその時、俺は身体の内側から熱いモノが溢れ出てくるのを感じた。

 まるで新しい内蔵が湧いて出たような、奇妙な感覚。ただ、少なくともそれは『四季風』を──最初のオリジンスキルを獲得した時には感じなかったモノだった。


「ぐぁ……あ、つ……ッ!?」


 その熱が高まり、声を我慢できない程の熱量に達した時。




 ──俺の背には、青く煌めく翼が生えていた。




 ༅




「クロくんッ!?」


 わたしにしては珍しい大声がでて、しょうどう的にからだが動く。敵をやっと倒せたというのに、あの苦悶の表情。……いやな予感がした。


「クロくん、だいじょうぶっ!? ……ね、クロくん、きこえてる!?」


 わたしの声はクロくんにとどいていなかった。彼の目にわたしは映らない。それは、わたしとクロくんとのこころの距離を表しているようで。


 そして、クロくんのからだが大きく揺らいだと思ったら……つばさが生えていた。

 ………………いみがわからない。なにコレ??? ぜんちょうもみゃくらくもふくせんもなかったよ??? つばさ……いや、あらためてかくにんしてもいみがわからない。


 突然のことにどうようしてさいしょ気付かなかったけど、クロくんの……なんというか、気配がかわってる? ふんいきじゃなくて……ことばにするのがむずかしい感覚。


「なんなんだよコレ……」


 クロくんもなにが起こっているかわからないみたいで、なにかにおびえたような顔をしていた。

 その顔を見ていると、なぜかもどかしい感覚におちいる。こんな場面でなんでこんな気持ちになるのか、わたしにもわからない。


「ッ!? これ……ッ!!」


 すると、クロくんが急にあせった顔をみせる。いま気付いたようにわたしの顔をみると、口をひらきかけ……そして、やめた。

 そのまま顔をそらすと、結局なにもいわないままどこかへ走りさろうとする。それは、ダメだ。


「っ、クロくん、待ってっ!!!」


「……悪い、今はお前に構ってられん。今はとにかく人里から……人間から離れないと」


「!? なに、それ……その、はねのせい?」


「いや、全然違う。氷帝を倒したせいでそのスキルが俺に移っちまった。この凍土、消えてないんじゃなくて一瞬消えた後俺が再展開したものっぽい。とにかく、少なくともこいつの制御ができるようになるまではお別れだ」


「っ! そん、な……せっかく、せっかく……いろいろがんばって……」


「すまん。バレンタイン達にも謝っといてくれ、俺はアイツらに着いて行けない。──────じゃあな」


 クロくんは別れをつげる前に小声でなにかをつぶやいたけど、わたしにはきこえなかった。クロくんが身をひるがえし、ふくがはためく。もう、わたしに顔をむけようとはしなかった。







「……帰りましょう。帰り道を考えたら、もうHPが限界よ」


 バレンタインにそうやって声をかけられてようやく、わたしはわたしが声をあげつづけていたことに気付いた。




 わたしたちは勝って、生きてかえれるけど、その勝ちをもぎ取った人だけが一緒にかえれず、とちゅうクロくんをくるしめた少年に肩をかさないといけないことが、とても、とても腹立たしかった。

別れです。ユーリはシロに向かってのセリフの中で言及しませんでしたが、ウィズィ達も放ったらかしてのお別れになります。


そして、3章本編はまだもうちょっとだけ続きます。

今回の章は、対比が目的なので。



ユーリ達がんばって勝ったのに気持ちよく終われないとは……一体なぜなのでしょうか。


それでは。

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