135 思・考・想
わたしのオリジンスキル、『雪魔法』。魔法っていう名前だけど、オリジンスキルだから魔法にしてはいろいろとへん。
わたしの『雪魔法』は、3つでできてる。
ひとつは【私は雪、雪は私】。わたし自身とか、ほかのひとを雪にしたり、雪でまもったり、雪からまもったり。あくまで「人」に干渉する。
ふたつは【雪】。ペニテンテとか、ライトピラーとか、ダイアモンドダストとか。雪をあやつることができる。
さいごは【雪世界】。世界のうえから、わたしの世界で上書きする。自由にもどせるし、いりぐちだけ作ってべつの空間に作ることもできる。
わたしが『雪車』からクロくんをまもったのは、【雪】の力。雪でできてたから乗っ取って、カウンターした。
補助としてクロくんたちを強化してたのは、【私は雪、雪は私】の力。雪が降っている・雪がつもっている・雪どけ水がある、の3つの条件のどれかに当てはまる時、身体能力があがる。レベルアップでもらってる補正が、だいたい2倍になる。
だから、クロくんのとなりで戦えなくても、ある程度は力になれているとおもってた。
クロくんのレベル、高かったから。
でも、その強化も消えてしまった。じゃあ、私は今、何のためにここにいるんだろう……?
༅
「っ……ぐぉっ……」
大盾を創造し、『盾術』を最大限発揮して攻撃をいなす。だが、雨のように降り注ぐそれらを全て防ぐのは不可能だった。
頭と心臓を重点的に守った結果、傷だらけになった足には力が入らなくなり、いつ『天歩』が切れてもおかしくない状況になっていた。
それをなんとか誤魔化せているのは、ただただ創り溜めしておいたポーションのおかげである。
今となっては確認する術もないが、ステータスに防御力の隠し項目があることは分かっている。だから、できることならその防御力をガン上げする装備を身にまとってやり過ごしたいところなのだが……
防御専用のドレスコード──装備セットは、あいにくまだ用意がない。ATKなどのステータスについてはハッキリとしたイメージを固めにくく、更には〈天岩戸〉という圧倒的な守りを手にして気が緩んでしまった影響もある。
となれば、耐える手は考えるだけ無駄だ。時間がある時に創れなかったモノを、戦闘中に勢いと気合いだけで創れるわけが無い。
そう、そもそも俺は『魔力創造主』の性質上、事前に準備していた強力な道具による手数と即興で対応出来る柔軟性を強みとしているのだ。その柔軟性が届かない範囲の事に思いを馳せても仕方あるまいよ。
「……『魔力創造主』・【即興創造】」
創り出したのは、以前創ったことのあるダメージ軽減と痛覚麻痺の複合効果を持つ錠剤。
もう、何をするか誰でも分かるだろう。HPを削って、相手を先に倒すのだ。どちらが先に死ぬか。単純な話だろう?
༅
とうの昔に我の制御から離れた我が肉体は、小さき者共相手に──戦いに疎い我であっても鼻で笑ってしまうような、拙い戦いを続けていた。
我が受けたのは間違いなく洗脳だが、自我全てを乗っ取られた訳では無かった。伊達に1000年以上生きている訳では無い。永き時に鍛えられた我が精神を全て組み伏せる程の強さはなかったということだろう。
……1000年の時を越え、ようやく友人と呼べる存在を得た矢先に、我に宿った混沌の種。何者かが我に植え付けたそれは、邪悪の塊であった。
その種によってもたらされる全身と頭の痛みだけではなく、頭の中で常に囁くあの声。今となってはもうその声も聞こえなくなったが、我からすれば有難い限りだ。
我はこれまでの人生で、意図して他者の命を奪ったことはない。ただ、生まれ持ったスキル『侵食領域〈凍土〉』のせいで多くの命を奪い、生きながらえてきた。自我を持つようになってから時たま頭に浮かんだように自らの意思で死ぬこともできず、ただただ生きてきた。
……思考が纏まっていないな。うまく言葉が出てこない上、思考が飛んでしまう。この残された自我すらも消えようとしている、ということか。いや、目の前に迫っている「死」に、今更恐れを抱いたか?
1000年以上生きた我の、しかも望んだ死であっても、恐怖からは逃れられぬのか。我ながら如何ともし難いな。
ああ、しかし。最後に想うのが恐怖などであっては味気ない。そうさな、せめて我が友人たちの幸を祈っていようではないか──
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〈皇帝〉のバフ説明は入り切りませんでした。戦闘が終わってから余裕があれば入れたいところ。伏せたままもアリかな、とは思ってますが、なるべく書きます。
ちなみに、以前氷帝のセリフに出てきた〈火軍鶏〉〈盲暑〉が、氷帝の言う「友人」です。
それでは。