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134 凍柳紋

 ──シャラン。シャラン。シャラシャラ……



 鈴が鳴っているように錯覚するが、事実は異なる。俺の目の前に広がっているのは──氷で構成された、柳だった。


「ユーリッ!!」


「モア? ……ッ!?!?」


 モアの声に反応した次の瞬間、体中を駆け巡る強い衝撃。際限なく熱を与えられたような感覚のその正体は、雷撃だった。

 そして、その次に感じるのは本物の熱。左手が炎にやられて黒く焦げているのが目に入るが、アドレナリンのせいか不思議と痛みを感じない。


「ぐぁぁっ!! なんっっっだこれ!!! 幻覚か!?」


「HPは間違いなく減ってる! 本物だ!!!」


 モアはそう言うが、特別な幻覚スキルという可能性はやはり……そうか、スキル!


 目の前に広がる青みがかった氷の柳に、最近「柳」という文字を見た気がする、と脳が刺激される。


(確か氷帝(あの亀)のオリジンスキルに、それっぽいのが……『鑑定』。 ……『凍柳紋』、これか!)


 オリジンスキルという事は、ムラがある可能性は念頭に置く必要がある。オリジンスキルは個人の性格によって内容が大きく左右する。


 さっき洗脳が一時的に解けた時の様子からして、氷帝は我を強引に通す偏屈なタイプである可能性が高い。ひと言で相手の性格が分かるような能力なんて当然持ってないのでただの勘ではあるが。

 あと、洗脳によってオリジンにどんな影響が出るかも分からない。気を付けようとしてどうにかなるもんでもなさそうだが、一応頭の片隅に置いておこう。



 ──と、『高速思考』の中そんな事を考えるが、今は真上から選り取りみどりな攻撃が降ってきている状況だ。余裕はない。


「オブ、あ、ドレスコード:No.1〈冒険者〉。『簡易結界』起動!」


 オブジェクトコール、と口にしかけたところで〈天岩戸(あまのいわと)〉が破壊されたことを思い出す。すぐに代わりとして冒険者セットのコートに付けた『簡易結界』を起動した。

 しかし、次の瞬間ペキっという嫌に軽い音と共に、あっさりと結界が破られた。なけなしのMPで、しかも温存気味な舐めた強度じゃ及ばなかったようだ。仕方ない。


 俺が事前に準備していた「守り」の為のアイテムはそれなりに多いが、空中で使うことを想定したものはほとんど無い。つまりはもう品切れである。

 仕方ないので攻撃を甘んじて受けつつ、体中を蹂躙(じゅうりん)する痛みになんとか意識を保ちながら〈コア・ネックレス〉からエリクサーを取り出し、MPと共に持続ダメージで心(もと)なくなってきたHPを回復した。


 氷帝のスキルに単体攻撃が無いのはありがたいが、その範囲攻撃の威力が全部ぶっ飛んでるから全然楽じゃない。しんどい戦いだ。




 ༅




「え、剥がされた……? 嘘、こっからじゃ付けなおせないんだけど」


「……? どうしたの?」


 目のまえ──濃度の境界をはさんだむこう側では、氷帝(かめさん)のスキルだとおぼしき攻撃が、雨のように降っていた。

 クロくんが少年をたおしたのを見てもういっかい濃度3に入ろうとしたらはじまった()()は、いままでのスキルと方向性がぜんぜんちがう感じがした。


「私が付けた魔法陣が全部剥がされたわ。タイミング的に、この攻撃のせいね……」


「……やばい。たいへん。いかなきゃ。……でも……」


「あんま焦んなよ。俺よりつえーんだから」


「……サボり魔」


「サボってねーよ!!! 俺がいなけりゃもっと苦戦してるはずなんだぞアイツら!!! こっちがどんだけ神経使ってるか教えてーよ!!!」


 わたしのボケに激しくツッコミを入れた皇帝。しばらくはなし相手がいなかったから、テンションがあがってるのかも。

 さっきまで、よこに座ってるおんなの子をけいかいしてちかよって来なかったのに、なんできゅうに来たんだろう?


「……マズくねーか? この攻撃じゃ、俺のダメージ軽減も働かない。つーか、さっきから強化がうまく届いてねーんだよな。俺の能力の特性上、嬢ちゃんら2人がこっちに退避してきた辺りから正直そうだったんだが……今も続いてる違和感はそれとは別だ」


「強化無効空間かしら……いや、あの動き、ユーリくんが自分でかけた強化は残ってる……? いや、それよりモアはどこ? 死んでないでしょうね?」


 クロくんとモアさんの心配もしつつ、この後3人で話しあった結果。にげ道をかくほして待機する、という事で落ちついた。けっきょく、わたしはなにも出来ないままだ。

 【ペニテンテ】の侵食も、ほとんどこうかなかったみたいだし、わたしがかけてた強化も、消されてしまっているみたい。


 ……くやしい。かなしい。いろんな気持ちが浮かんでくる。たぶん、支援すらできなくなってヒマになっちゃったせいで余計にそう思っちゃうんだ。


 わたしは、静かに手をにぎりしめた。

痛みに慣れているユーリでもしんどいと感じる痛みでした。斬られる、殴られるとか筋肉がちぎれるのとはまた違った種類の痛みですから、そのせいでしょう。

ユーリは調子に乗って(自分は痛みに強い)と思ってるので、予想以上に感じた痛みにエリクサーを落としかけました。あほ。


痛みに強いのも間違いではないけど、炎とか電撃とかに対する痛みの耐性はほとんどないわけです。薄々自覚してたはずですけど、調子に乗りましたね。どこぞの暗殺一家じゃないんだぞ。頑張れユーリ。


シロと皇帝の支援、割と大事です。次辺りに詳細書けなければ、戦いが終わったあとに説明入れることになりそうです。


それでは。


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