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129 神弟子

(血界があるからバレンタインとシロは氷帝から守れてたが……いや、急に出てきたからってこのガキ2人を敵判定するのは速いか? ……でもここは濃度3、普通の人間じゃ凍ってすぐ死ぬ場所だぞ? そこで平然としてる奴なんだから……)


 予想外の展開に、頭の中は軽いパニック状態だ。だが、それも『高速思考』のおかげで一瞬でおさまる。


「何者だ。答えなければ敵とみなす」


 俺より圧倒的に冷静だったモアが、俺より先に口を開いた。そこから放たれた誰何(すいか)を、男の方の子供が面白くなさそうに鼻で笑う。


「馬鹿じゃないの!? こんなとこにいる奴なんて敵に決まってんじゃん! はぁーあ、ちょっと白けちゃったよ。これでもし弱かったら……そーだなぁ、暇つぶしに帝国でも潰そっかな~」


大言壮語(たいげんそうご)(はなは)だしいな。……ユーリ、俺の今日のスキルも、この黄道十二門の魔導書も、手加減には向いていない。奴らの対処は任せていいか?」


 何気ない風にとんでもない事を呟く少年に、モアは苛立ったように俺の方を振り返りそう告げた。

 どこが琴線に触れたのか分からないが、まあこちらとしては問題は無い。


「了解。亀も巻き込む攻撃する時は、タイミングを図るか合図するから」


「分かった。あのどん亀を倒してこの寒波が消えれば、色々とやりやすくなるだろう。こっちもなるべく早く片付けよう」


 目線で軽く合図してから、俺は子供共に向き直り、モアは氷帝へ接近していった。


「フン。ボクの相手を1人でするつもりか? 痛い目見ても知らないからな!」


「お手柔らかに頼むよ、少年」


「なにカッコつけてんだ、キモっ! ハッ! 一瞬で細切れにしてやる!!!」


 この厨二ズムの良さが分からんとは、まだまだお子ちゃまだな。……とまあ、それはともかく。

 “細切れにしてやる”ってことは剣か斧使いかな? 接近戦で負ける気はしない、全部のスキルがレベルmax──10だからな。


「……舐めてるのがわかり易すぎるんだよ。やっぱ期待はずれか? ──『神説(しんせつ)()(つき)』」


「ッ!?」


 相手が何かしらのスキルを発動した瞬間、身を包んだ寒気(さむけ)に驚く。この凍土の対策として、通常の寒さはほぼ完全に遮断できている。

 ……と、そこで気付く。ああ、これは悪寒だ。ひと回りもふた回りも歳下に見える少年に、恐怖を感じているのだ。そう、これはあの時、この世界に来てすぐの森で見た、虎と同じ──


(『神眼』起動、『鑑定』)


 ────────────────────────

 〜ステータス〜


 名前:ルルク・カトレア

 性別:男

 年齢:11

 種族:ヒューマン

 職業:ショタ

 レベル:518

 HP:88923/88923

 MP:-/-


 ・ベーススキル[P]

 『気配察知(max)』『高速思考(max)』『神気(8)』『無病息災(max)』『身体操作(9)』『詠唱破壊(-)』『無尽魔源(-)』

 ・ベーススキル[A]

 『基本属性魔法(土max)』『発展属性魔法(炎EX、雷8、命7)』『炎神魔法(6)』『剣術(max)』『槍術(9)』『弓術(8)』『看破(max)』

 ・ギフトスキル[P]

 『二柱の加護(-)』

 ・ギフトスキル[A]

 『炎神(エルツィコア)(使用不可)』

 ・オリジンスキル[P]

 『神説・炎存体(エルツィコア)(-)』

 ・オリジンスキル[A]

 『神説・詠み月(max)』『神説・駆け鼠(ランペルラット)(-)』


 称号

「元捨て子」「神の弟子」「強者殺し」「希望の欠片」「闘う者」

 ────────────────────────



 ──いつからこの世界は神界対戦に突入したのか。なんで俺の前にはこんなバケモンばっかり出てくるんだ。

 俺の将来の目標は“運命”を司る神を殴り飛ばすことに決定したぞ。今。


「炎の剣か、面倒な……」


「ハハハッ! 面倒だなんて思うまもなく死ぬからさ、気にしなくても全然いい……よぉっ!!!!」


「チッ!」


 この少年のステータス。神の加護やら変なスキルやらに目が行くが、まず問題なのはレベルの差が大きすぎることだ。

 この年齢でどうやってここまでレベルを上げたのか……はなんとなく分かるけど、レベル差300は普通にキツい。視覚及びそこから通る電気信号を補助しているコンタクトと『高速思考』、そして『身体操作』のスキルがなければ今の一瞬で俺は死んでいた。


 別に死んでも問題ないという気持ちは変わっていないが、そういう話ではなく。


 パッシブスキルの『風読み』が、珍しく風向き以外の情報を俺に教えてくれる。「様々な要素から見て劣勢、体勢を立て直せ」、と。

 んなこた分かってるんですよ。相手がそれを許してくれる訳ないってのも分かってるんですよ。『高速思考』の中でこんなことを考えている今も、少年は容赦なく炎の凝縮された剣を振ってきているのだ。


「このっ! ちょこっ! まかっ! 逃げるなぁっ!!!」


「アホか。逃げないと当たるでしょうがっ!」


「当たれって言ってるんだよ!!! 」


 理不尽なワガママボーイだな。シンパシー感じちゃうぜ。


「つーか、さっきのスキルって身体能力向上と炎の剣の創出だけか? オリジンにしちゃしょっぱいスキルだな」


「はあ!? うるさいうるさいうるさい!!!! 死ね!!!」


 11歳らしさ満載の罵倒と共に放たれたのは、炎で形成された矢。速度はそこそこだけど、俺の頭が数瞬前まであったところを正確に撃ち抜こうとしていたそれを、俺は余裕を持って避ける。


(不意打ちは下手くそだが戦闘技術は高い、剣の振り方も術理が乗ってるのを感じる。神から剣術と弓術まで教わったか。とすれば俺が知らない技能を使う可能性があるな。警戒しよう。……とりあえず、こっちからもちょっかいかけてみないと始まらんな)


「……ふぅ。『創武器術(そうぶきじゅつ)』、開始」


 俺の両手には、既に武器が握られていた。

評価・ブクマしてくださると嬉しいです。



〇ルルク・カトレア

月神(オルトマ)炎神(エルツィコア)によって育て・鍛えられたヒューマンの子ども。出生不明。孤児だったポワ=ポワ・ポチャを救い、行動を共にしている。年齢は11歳だが、11年生きてきたという訳ではない。深紅の髪と黒い瞳を持つ。

好き:楽しい戦い、ドラゴン

嫌い:退屈な戦い、ゴブリン


『無尽魔源』……世界から魔力を奪い、使用できる。この際、元々の自身の魔力は同調及び調整に使用され、その魔力が尽きた後MP完全回復までこのスキルはクールダウン状態になる。

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