122 創・観・始
お久しぶりです。
間が空いたので簡単なあらすじです。
異世界に転移させられたユーリは、気の向くまま適当に生活していた。ある日、とあるお使いを頼まれ旅に出たユーリだったが、旅先の国にとある脅威が迫っていると知った。成り行きで、ユーリ・シロ・バレンタイン・モア・皇帝はその脅威の排除へと動いていた。
現在地──“凍土”内、濃度2と3の境界
(ッ!? なんだ、氷!? つめてぇ!)
「ちょっ、ユーリ!? 展開! 複製、展開!」
「クロくん!? 『雪魔法』、【私は雪、雪は私】っ!!」
後ろで手を尽くす仲間の声は、俺に届かない。俺を覆う分厚い氷は、唯一アゲハの『念話』だけを通した。
(マスターッ! 私がねじ曲げようか!?)
(やめろ! まだ温存しておけ! 俺が何とかする!)
俺はアゲハの心配する声を即座に拒絶する。さて、どうしたものか。この氷結現象は、多分濃度3特有のもの。一旦濃度2まで退避するのがいちばん簡単な解決策だろう。
だが、前に創った転移の魔道具は今は使えない。あれは、地面に突き刺して2点間の移動を可能にするものだ。濃度2に目印を刺してない以上、どうやっても転移は不可能になる。
となれば、退避は諦めてとりあえず氷結を解除するしかない。
(オブジェクトコール:天岩戸ッ!!!)
心の中で詠唱の起句を唱えると、凍った俺の目前、亀との間に大きな岩が出現する。そして、それと同時に俺の氷結が解除された。
天岩戸は、外界との隔離を実現する。あらゆる攻撃も妨害も、この盾の前では無力だ。
そして、この盾の効果で解除されたということは、あの氷結は維持にコストがかかるタイプのもの。単なる低温の結果でもなければ、凍らせるだけのスキルとも違うってことだ。
「……迂闊すぎたな。魔力が……ここでポーションを切らされるのはめんどいな」
見てみれば、魔力が5分の1ほど減っている。濃度3にいた結果か、氷結によるものか。天岩戸を消せば、またすぐにMPが減っていく可能性が高いか。
後ろを見れば、天岩戸のエフェクトで見にくいがシロやバレンタインの姿が見える。氷結が解除されて一安心、といった様子だ。天岩戸は背後からの視線だけは防がないからな。
安心しても不用意に濃度3へ踏み込まないあたり、彼女たちは俺よりも幾分か慎重──というか、冷静なのだろう。
しかし、面倒なことになった。天岩戸は外界との隔離を実現する、とさっき言ったが、そのせいで転移の魔道具が上手くはたらかないのだ。濃度2へと退避するのは、少し難しい。
それより、亀がまだ俺達に直接攻撃する素振りを見せていない今のうちに、氷結の対策をした方が速いだろう。
「『魔力創造主』」
氷結対策、と考えるとイメージが難しいな。それより、周囲の状態を固定した方が簡単だろうか。いや、それじゃコスパが悪いしやっぱりイメージが固めにくい。……仕方あるまい。魔力はかなり持っていかれるだろうけど、汎用性があってイメージが比較的しやすいものにしよう。
魔道具を想像し、創造しながらそれとなく亀に目を向ける。とんでもなく大きな亀だ、単に踏みつけるだけでも強力な攻撃へと変わる、暴力と呼べるほどの圧倒的な大きさとそれに伴う重さ。
ゆっくりゆったりと動かされる足は、地面につく度に軽い地震かと思う程に大地を揺らしている。
下から見ただけでは分かりにくいが、最も特徴的なのは背中側──つまりは甲羅だ。大きく透明な石で形成されたその甲羅は、透明であるはずなのに内部を見透かすことを許してくれない。
いくつもの石が折り重なり、その切片で何百、何千という回数屈折された光が内部を隠しているようだ。石自体が持つ光属性の魔力がそれを為しているという。……これは『天眼』+『鑑定』による情報ね。
パッと見じゃ1枚の甲羅、というか石のように見えるが、小さな石の集まりとは。内に秘めたる集合体恐怖症をいたぶられるような見た目じゃなくて良かったよ。ほんとに。
「っし」
時間をかけ丁寧に創りあげた魔道具が、俺の手元でその姿を見せた。外見は小さな銀色の飾りがついたヘアゴム。持たせた効果は、『封印無効化』『危険察知』だ。
今回の本命である『封印無効化』は、氷結を封印の一種と見なす前提のスキルだ。体全てを覆うのであれば、封印として対処できるはずだ。確信はないが、『直感』と俺の予測がそう言ってたから仕方ない。
『危険察知』のスキルと違って、『封印無効化』は装着部位との関連付けがしにくい……つまり、イメージを固めにくかったから、少し時間がかかってしまった。
だが、これでようやくスタートラインには立てた。前座が長かったが、ようやくバトルシーンだ。気合い入れてこう。
さて、バトルシーン書き終わったら投稿再開と言いましたが無理でした。
ストックはそれなりに溜められたので、書きながら毎日投稿でいきます。お待たせして申し訳ない。