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113 星・帝都

 コツ、コツと靴の音が響いている。青みがかった黒いコートに身を包んだ長身の男が、部屋の中をグルグルと歩き回っているせいだ。

 カーペットも何も無いその部屋では、足音がよく響く。よく見れば、床には小さな傷がいくつも付いている。戦いの跡というよりは、気付かないうちに武器で床を擦っていた、というような小さな傷だ。


 ──この男の名はフェノン。とある組織のリーダーであり、紛れもない強者である。


1st(ボス)、また(せわ)しなく動いてるんですか? バレンタインさんに怒られちゃいますよ?」


「……レピアか。悪いな、()の動きが不穏で、つい」


「心配事は仕方ないですが、聖王国にいる私達にできることは少ないですよ。ボスはボスらしく、どっしり構えててください!」


「そういうのはガラじゃないんだが……」


 部屋に入ってきた女性と親しげに話すフェノン。組織のトップでありながら、その構成員との距離は近いようだ。


「この間変な能力者を1人殺ったんだが……その辺りからなんだよ、星の雰囲気が変わったのが。俺の行動で仲間に迷惑がかかるという想像は……精神的に悪い」


「私、補佐として長いこと貴方(あなた)のそばにいますけど、やっぱり()の方が色々と良かったです。()は、そんな小さな事で揺らぐことはなかった。……構成員を8人から増やしたのは、やっぱり間違いだったんじゃないですか?」


「……何度も言ってるだろ、目的からすれば、都合がいいのはこっちだ。俺達の目的を伝えられる人数には限度があるから、騙すことになって申し訳ないが」


「分かってます。カモフラージュ、ですよね? でも、それで犯罪組織として広まってしまうのは……私情でしかないですけど、やっぱり悲しいです」


 伏し目がちに、呟くようにそう言った女性に、フェノンが近寄る。頭に手を乗せ、そのまま2度撫でると顔を覗き込むように膝をついた。


「大丈夫だよ、レピア。名前を(けが)そうと、真実が隠されていようと、俺達の想いは本物だ。願いは真実だ。心の中までは(よご)れない。例え他の全員が敵に回ろうと、俺だけは絶対にブレない」


「……ごめんなさい。こんなことを言えば、貴方(あなた)が強がって(なぐさ)めようとしてくれるのは分かっていたのに」


「別にいいさ、幼なじみを慰めるのくらい、普通のことだろ」


「……ふふ、やっぱり素の口調の方が貴方(あなた)らしくて好きです」


 フェノンはその言葉に驚いたように目を見開いた。だが、1度目を閉じてすぐに元の表情に戻る。少し強引に表情を変えたのか、(ほお)が少しだけピクピクと動いた。


「シグ達が頑張ってくれてるんだ、仕方ない事とはいえ俺達がこんなにのんびりしてるのはな……何かやれることはないか?」


「あ、誤魔化(ごまか)すんですか? 相変わらずですね~。それに、お堅いところも相変わらず。でも、そう言うと思っていくつか案件を持ってきてあげました」


「……ありがとう、レピア」


「いえいえ。私は補佐ですからね」


 フェノンは1度窓の外へ目を向けた。別の国で頼み事をこなしてくれている仲間達のことを想起し、感謝を改めて思い浮かべる。

 10秒ほどそうした後、すぐ椅子にかけ直して机に向かった。


 世界を救う事を目的とした組織、〈救世七星(くぜしちせい)〉。彼らがどのようにして世界終焉の情報を得たのか。どのようにして世界を救うつもりなのか。

 それを知る者は極めて少ない。




 ༅




「なーんーではるばる帝都まで逃げてきたのにお前らがいるんだ!」


「そりゃ “寒波” が近くまで来てるって知ったらここに来るしかないもの。誰でも予想できるわよ」


「待ってるあいだヒマだった! これはベンショーだよ! ね、バレさん!」


「ベンショーの使い方が変なんだけど、そんな言葉どこで覚えてきたの?」


「え? えーと、むかしフェノンが言ってたし、さっきあっちの方でおじさんが言ってて思い出したの!」


 帝国の街から帝都まで、約3日程の強引な旅程で突っ切ってきたのに、例の3人組に先回りされていた。こちらは騎士団もセットの大所帯とはいえ、さすがに不審だ。転移とかしてないだろうな?

 そんな事を思いながら、これからの行動を考える。帝都に来たのは、俺達が皇帝に用事があるというだけでなく、“寒波” から逃れるため、という新たな理由もあった。


 この3人組がそれに合わせて帝都に来たというなら、 “寒波” が収まるまで帝都に留まってくれる可能性はある。だとすれば、“寒波” の正体が生物で討伐する流れになった時巻き込めるかもしれないな。


 “寒波” の正体が判明してないせいで対策もフワッとしたものになるのが気になるが……仕方ないことだろう。


 3人組に付き纏われるのは、もうついて行っちゃってもいいかな、という気分になったから許した。




 はぁ~……シロとか3人組とか “寒波” とか、いろいろ展開が急すぎて疲れちゃったよ……

 とりあえず、皇帝に会って用事を済ませるか……

評価お願いします。



救世七星の序列、置いておきます。ちなみに、この序列は彼らがじゃんけんで決めたので強さ順ではないです。


1st.フェノン・アルマーダ

2nd.アンティ・フィン

3rd.リコリス

4th.ニコ・ランバルラッド

5th.モア・クロウスター

6th.ハッピー=ハッピー・バレンタイン

7th.シグ・ガレット


それでは。

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