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112 闇・少女

 そこは、暗すぎて何も見えない空間だった。見えないから、どの程度の広さなのかも、何か物が置かれているのかも分からない。そこで、一人の男が手慰みにカードを(もてあそ)んでいた。

 なぜ、その様子が観察できるのか。それは、男の持つカードが淡い光を放っているからだ。ただ、魔力光とも異なるその光は強いものではなく、やはりどうしてもその空間の様子は(うかが)い知ることはできなかった。


「1枚落ちた……なぜこのタイミングで14(節制)が……」


 小さな呟きは突然だった。先程までの静寂を破って発したその言葉は、意味を理解するのにも苦労する短さだ。

 そして、次の瞬間、暗闇の中に新たな存在が現れた。その存在──男は、現状を理解しているのかすぐに体勢を変える。まるで王の前に(ひざまず)く家臣のような、かしこまった態度だ。


「……こうしてまた貴方に逢えたこと、嬉しく思う。だが、それは私の死も意味する。力になれなかったこと、申し訳なく思う」


「なぜ死んだ……お前は生存に特化しているだろう……」


「確かに。だが、タロットを以てしても敵わない相手がいたのだ。ただ、それだけのこと」


「名前と……所属は分からないのか……」


「名前はフェノン・アルマーダ。所属は……救世七星(くぜしちせい)、と。その組織の、序列一位だとも」


「分かった……ご苦労……」


 新たに現れた男の言う事を信じるのなら、彼は死んだという事になる。とすれば、ここは死後の世界なのだろうか?

 男達のやり取りはそれだけで終わり、気付けばその空間には最初からいた男一人のみが存在していた。途中で増えた男がいつ消えたのか、光カードを持った男が何の反応もしなかったので察することができなかった。


「はぁ……ここに……いや、俺に……観測者……? 本当に……珍しいな……」


 独りに戻った男が、またもや突然呟きを発する。顔も、視線すらも動かさず周りの状況を把握しているような雰囲気だ。


「新たな(ひず)み……? 悪いが用事ができた……盗み見るのは後にしてくれ……」


 男のその言葉と同時に、黒い空間が侵食するかのように暗闇が広がる。カードの発する光が消えるのとはまた違った様子だ。そして、男の姿もみえなk




 ༅




 グラン帝国の隣国である軍事国家ランパード。この国には、スラム街がとても大きいという特徴があった。

 そして、そのスラム街の奥地で強面の男達と一人の少女が対峙していた。いくらランパードのスラム街が広いからといって、こういった光景は滅多にあるものではない。


「ナニモンだ、テメェ」


「あたし、ポワ! あのね、仲間を探してるの! これくらいの男の子なんだけどね、すごく強いの! 知らないかなあ?」


「……ハッ、ハハハッ! 人探しィ!? そんなガキ探しにこんなとこまで来たのかよォ! でも残念だなァ、もし本当にここまで来たんなら、死んでるぜ、そいつ!」


「えぇ? ルルクは死なないよ?」


「……はァ? 何言ってんだお前?」


「おい、いつまでおしゃべりしてんだよ。もう()()()()の時間でいいだろーが」


「……ああ。それもそうだな。こんなガキ馬鹿にしても面白くねーしよ」


 気付けば、男達が少女を取り囲んでいた。ニヤニヤと緩んだその顔と彼らの会話から、何を考えているか想像に(かた)くない。


 ──だが、この世界では女性や子供が弱いとは限らない。性別ではなく、スキルが強さの基準なのだ。


「よく分からないけど、おじさん達は敵なんだね? あんまり使っちゃダメなんだけど、しょうがないなあ…… 『第一(はじめまして)深傷(ポワっていいます!)』!」


 少女の声と共に、足下の色が変わる。まるで水面に絵の具を垂らしたかのように、波紋と共に水色が広がった。

 そして、その色は再び変わってしまった。それは、赤。少女を取り囲んでいた男達の血が、水色を塗りつぶしてしまったのだ。


 気付けばそこは、地獄絵図。体中を切り刻まれた男達と、(おびただ)しいほどの血で地面が埋めつくされていた。

 そんな地獄の中心に立つ少女に、声をかける少年が1人。


「おい! 宿で待ってろって言ったのになんでこんなとこいるんだよ! ボクの命令が聞けないのか!」


「あ! ルルク! ルルクだー! 良かったあ、いなくなったからずっと探してたんだよー!」


「はあ!? 出ていく前にちゃんとあのデカブツを見学に行くって言ったぞ!? あれ、ボクちゃんと言ったよな?」


「デカブツー? 倒してきたの?」


「……いや。めんどくさそうだったからやめた。それより、アイツを倒そうとする奴と遊ぶことにしたんだ。お前はどうする?」


「んー? んー、私はお腹すいたからいっかなあ! そーだ、ルルクご飯食べいこー! ね、ほら、行こーよ!」


 少女に手を引かれ街の外へと向かい始める少年。自分が来た道すら覚えていない様子の方向音痴な相方少女に、少年は思わず天を仰いだ。

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こういうの書いてみたかったのでやりました。満足です。


ポワ=ポワ・ポチャちゃんは初登場です。098話の意味深少年の相方です。俗に言うアホの子です。方向音痴でもあります。

ビジュアル設定は以下の通り。

141cm、E、ピンクがかった白い髪、ポニーテール


深くは言うまい。

それでは。

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