111 出発?
「世界が終わる……つってもなぁ、何すりゃいいか分からんし、神からのコンタクトもない。とりあえず、迫ってるっぽい “寒波” の対処が先かなぁ」
「かんぱ? ……『看破』?」
「俺もよく知らんが、なんか環境を侵食する冷たい奴っぽい。移動してるから魔道具って線は薄いだろうな。普通に考えりゃ魔物か神の仕業だ」
「……ゆやちゃん、知ってる?」
「はい。しかし、そんな事になっていたとは……たまたまとはいえ、このタイミングで戻って来られたのは運がいいです。恐らく、この世界で最も安全な場所の1つが、この帝国ですから。……とはいっても、安全なのは帝都だけですが」
「へぇ? 帝都には “寒波” の備えがあるのか?」
「……いえ、そう限定的なものではありません。もともと、我らが帝国は竜災が多い国でした。そのため、当初の目的は竜からの攻撃を耐えるためだったのですが──今代の皇帝は貪欲ですから。改良に改良を重ね、かなり汎用性の高い備えが完成したのです」
貪欲な皇帝、か。帝国といえば実力主義ってのはファンタジーのあるあるだろう。違和感ないな。貴族が主人公で内政やらなんやらで成り上がるってのもテンプレだけど……
この世界の帝国は前者。強い奴は優遇される傾向にある。しかし、弱い奴は切り捨てられる訳では無い。国という体裁を保ち、強国として隣国に威圧感を放つのは内政をしっかりして民を大事にしているからだ。
そして、その代わりというかなんというか、実力第一、弱い奴は死んでも文句を言うな、というスタンスなのが江閣宋だ。エリフィンで戦った傭兵もどきの出身国だな。
着物が普段着として使われているのが特徴であるその国は、老若男女問わず実力を要求する。力のない者は国の中心部へ立ち入ることすらできず、端へ端へと追いやられる。
そのため、国から出て行く奴がめちゃくちゃ多い。しかも、国の中心部に出入りできるような強者も、さらなる強者を求めて国外へ出ていくもんだから、人口が少なめだそうだ。
国内にいた方が強者が多い、と気付いた者がすぐ国に戻るため、致命的に少なくはないらしいが……1回は観光に行きたいな。戦いたい気分になったら遊びに行くか。
「じゃ、帝都行くか? 俺達も皇帝に用があるし丁度いいんだけど……」
「そうしよう」
「ならさっさと移動した方がいいな。最低でも、あの3人組がまた現れる前にこの街から出たい」
あの3人組とは、バレンタイン、瞬間移動カウンター男、幼女の3人組のことである。俺が休みをもらっていろいろアイテムを創っている間どこで何をしていたか知らないが、まだ合流していない事だけは確かだ。
そして、再開したが最後どこかへ連れ去られる可能性が高い。トンズラこそ正義という訳だ。
「よし、ウィズィはラウルとアンナを呼びに行ってくれ。すぐに出発する。旅の準備は気にするな、俺がなんとかする。……騎士団の分も俺が工面するから、キツい日程かもしれんが付き合ってくれ」
「我ら紅龍騎士団、帝国の敵でもないSランク冒険者に逆らう気はありません。ご意向に従います」
「助かるよ」
(アゲハ、ウィズィについて行ってくれ。なんかあったらピュネラの力を。頼んでいいか?)
(仕方ないな~、でもこれは串焼きだけじゃなくてお団子も貰わないと釣り合わないよ~?)
(分かった分かった。じゃあ任せるからな)
(あ~い)
アゲハを見送るために頭上を見上げると、予期せぬ強風に思わず目をつぶってしまう。レベルが上がって耐久力が上がろうと、魔力を含まない攻撃に対する耐性は強化されない。だから、俺の目は風には無力なのだ。風最強じゃん。
建物の間を通り抜け俺の顔を打つ風の冷たさが、どこか不吉なものを表している気がした。
評価お願いします。
話が進められなかったの申し訳ないです。
僕ではなくこの疲労を恨んでください。僕の方からも叱っておきます。
シロとユーリの会話に違和感を感じてる方もいるかもですが、0話が最初期とは変わっていてシロとの会話になってます。地球の頃から仲良かったアピールです。参考にしてくだされば幸いです。