109 追跡者
短いです。
「いなかった」
「ですが、数日前まではいたという事でしたから……急げば追いつけるかもしれません!」
「ゆやちゃん……うん。行こう」
「ええ、ええ! それに、今回は予定まで聞けましたからね! 今までのように宛のない散策とはわけが違いますから!」
魔道王国について、騎士団の力も借りつつクロくんをさがし始めたのが今日の朝。
国王に会ってからは、話はトントン拍子で進んだ。一応、私たちは帝国の使節団のような立ち位置らしい。そして、この国の国王は帝国皇帝と仲が良いらしい。皇帝本人が、王都の設計図なんかを作ってあげたのだと自慢していた。
そのおかげでいろいろと優しくしてもらえたから、皇帝には帰ったら感謝を伝えようと思う。
「でも、意外。クロくんが学校にいってたなんて」
「そうなのですか? シロ様は、クロ様が何をなさっていると考えていたのですか?」
「え? ……うーん、やまごもりとか? 」
「えぇ……どんな人なんですかそれ」
「てきとーな人。基本的にやさしいけど、案外そうでもなかったりする。それに、意外とぬけてるところもある。あと、好意をもたれると距離をおきたがる」
「ほうほう……それはまた難儀ですなぁ……」
クロくんは名前を覚えるのが苦手なだけでなく、人の顔もすぐに忘れるから認識していないんだろうけど、私とクロくんのであいは高校じゃない。……古参アピールじゃないよ?
この白い髪のせいで人から忘れられるという経験がなかった私からしたら、いつまでたっても思い出す気配のないクロくんの様子は新鮮でおもしろい。
「シロ様、ユナ様。ブラン国王様より移動用の浮遊板をお借りしました。クロ様も同じものを使っているらしいので追いつけはしないでしょうが、離されもしないでしょう」
「分かりました。であれば、悠長なことはしていられませんね。それなりの量買いましたし、食料は問題無いでしょう。荷物と装備の最終確認だけして移動を再開します。各員に通達を」
「はっ!」
ゆやちゃんの号令で兵士が走っていく。浮遊板……当たりまえといえば当たりまえだけど、私は乗ったことがない。少したのしみ。
移動ばっかりで何もない日々だけど、流れる雲をながめるだけの日々も悪くない。むしろすき。
でも、クロくんを見つけないとっていう焦りが、その心地いいはずの日常を少しじゃましてくる。クロくんも私もわるくない。わるいのは──
「シロ様、準備ができたようです。行きましょう」
「うん」
これだけ長い時間をかけて動き回って、やっとクロくんのいた痕跡が見つかった。この太い糸をだいじにしていこう。
༅
「お待た~」
「ユーリさん、公衆の面前でその発言はさすがにどうかと……」
「いや下ネタじゃないが!?」
頭上で爆笑する妖精を無視して、さっさと話を進めることにする。
「で、後を追ってきてた騎士団ってのはどうなった? 俺の『気配察知』にはまだ引っかからないけど」
「まだすこし間があるはずですが……私達がこの街に滞在して今日で3日目です。追いつかれてもおかしくないでしょう」
「そうか。じゃ、一旦ドローンで見てみてもいいかもな」
再開の瞬間は、もうそこまで迫っている。
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ホントに分からないんですけど、ゴールデンウィークってまだ続いてます?
自分、忙しくて休みの実感がずっとないままです。悲しい。