106 一日休
「戦力の増強が必要だ」
「……突然どうしたんです? ユーリさんがこれ以上強くなるなんて……ダンジョンの全制覇でもする気ですか?」
「ここ最近、戦うことになると絶対何だかんだで決着まで持ち込めないことが多い。決定力の無さが致命的だ」
「決定力の、無さ……」
「ああ。という訳で、一撃必殺でどんな敵でも絶対殺せる武器を作ろうと思う。という訳で、1日休みをくれないか」
「それは別に構いませんが……その間、私達は買い物を済ませることにしましょうか」
ずっと考えていたことをようやく実行する時が来た。ウィズィに頼んでスケジュールの調整をしてもらい、1日時間を貰うことに成功した。
「え~、それじゃあ私達はどうするのよ~」
「知らんがな。探しものの続きでもしてたらいいだろ」
「……それもそうね、貴方以外にも候補は必要だわ」
「ふぁ……あれ、バレさん、用事は終わったのー?」
「あら、起きたのニコ? 用事は少しお休みになったわ、また捜索に戻りましょうね」
「んー。分かった~」
バレンタインに背負われ眠っていた少女が目を覚ます。どうやら、一旦俺への勧誘は辞めてくれるようだ。
「じゃ、そういう事で。俺たちは調べ物の続きして宿探さないとだから」
「そう……じゃ、また明後日会いに行くわね。それじゃ~」
「失礼する」
「ばいば~い」
「……は~い。もう来なくても良いからな~」
まあ、別に実害がある訳じゃないし。用事の邪魔さえしないんなら、そう邪険にする意味もない。
……少し時間が経って冷静になると、そう考えられるようになっていた。
「……行くか」
「そうですね」
(あ、マスターやっと見つけた! こんなところで何やってるの!?)
今更戻ってきたアゲハに、思わず苦笑が漏れた。
༅
さて、武器の創造を始めよう。
今回創造する目的は、決定打になる圧倒的破壊力・殺傷力を得ること。
魔法は長い詠唱が必要だから、決定打と呼ぶのは難しい。『詠唱形骸化』のスキルでズルもできるが、効果がかなり低くなるんだよな。
創造するのは、小剣にしようか。『神気』を混ぜ込み、防御と距離を無視して攻撃できる能力で。
こういった特殊な能力を持たせようとすると、途端に消費魔力がデカくなる。今の自分にできるのがどの程度の付加か見極めるのが大事だが、調節の塩梅が難しい。
とにかく、イメージを練って練って練りまくろう。形はシンプルな直剣型、剣身は細身、装飾も無し。
剣身を転移させて飛ばすのではなく、攻撃判定だけを飛ばすイメージ。座標を指定するのではなく、思考誘導で飛ばすイメージ。相手の防御やスキルをすり抜け、直接斬撃を与えるイメージ。『神気』で攻撃力を上昇させ、非物質にさえ影響できるようなイメージ。イメージ。イメージ。
もう一度、剣の形状から再確認してイメージをさらに固める。イメージ。イメージ……
「『魔力創造主』」
そうして、俺の目の前には何の変哲もない神剣が誕生した。時間にして、13時間の想像で創造だった。
いつものようにイメージの簡略化もせず、パターン化もできない新作でもあるから、時間がかなりかかってしまった。魔力も、エリクサーの4倍ほど消費している。失敗して無駄にならなくて良かった。
……切り札も無事完成したし、とりあえず、トイレに行くとするか。そろそろ我慢の限界だしね。
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ユーリがとうとう初見殺しの小剣を作ってしまいました。このままではこの物語が俺TUEEEEになってしまう……!?(※ なりません。)
ユーリがすっぽり忘れてることがあります。とある設定のし忘れです。……これについては3話くらい後に書くと思います。多分。