010 愚
急に強くなるよ〜
「この木ちょうどいいし、今日はこれくらいにしとくか……『鑑定』」
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〇status
・基本情報
名前:黒野祐里
種族:人族(異世界人)
年齢:17
性別:男
状態:正常
・個体値
Lv:5(4↑)
MP:600(300×2)/300
STR:18(13↑)
VIT:29(17↑)
INT:35(18↑)
AGI:19(14↑)
DEX:21(14↑)
LUC:11(1↑)
・スキル
ベーススキル
◎パッシブ(常時発動):『マルチタスク』『瞑想』『思考加速』『無想剣』『風導師』『悪路走破』『気配察知』
◎アクティブ(任意発動):『全属性魔法』『無属性魔法』『剣術』『槍術』『札術』『投擲術』『遠視』『暗視』『気配感知』『鑑定』
オリジンスキル:『四季風』
ギフトスキル:『魔力創造主』
・称号
「異世界人」
「慈悲深き者」「無慈悲なる者」
「魔法使い」「魔術師」「魔力貯蔵庫」
・備考
体内魔力の圧縮により容量が実質的に2倍になっている。
称号:「魔力貯蔵庫」により魔力干渉力が上昇している。
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この森を出ようと歩き始めてから、約1週間。化け物と呼べる程にステータスが上昇していた。特に魔力がな。それぞれの個体値が5倍以上になっているし、スキルもかなり多くなっていた。
「暇つぶししかやってないのになぁ……」
本人は、冗談でもなんでもなく本気でそう思っていた。実際は、歩いている間常に魔力を練り続け、一角兎を襲っていた狼のような魔獣、「地狼」を殺し尽くしたり、マルチタスクで様々な行動をスキルへ昇華しようとしたり。本人の気質や、運の要素も大きかった。……祐里は全く気付いていないが。
祐里がこんなステータスになるまで色々試していたその行動には、一応理由があった。
1番大きかった理由は、ギフトスキル『鑑定』、そして『知識庫』が消滅したことだ。正確に言えば、消滅の3日前に、各スキルの横に唐突にカウントダウンが表記されたのだ。そのカウントダウンを鑑定してみれば、「当スキルが消滅するまでの時間を示している」と出るではないか。
手当り次第、思いつく限り全てのことに鑑定をかけ、調べあげた。この世界で情報を得る、(今のところ)唯一の手段であるそれを失うのは痛すぎるわクソッタレと、愚痴を幾度もこぼしながら自身の強化も並行して行ったのだ。
その結果として、ベーススキルの『鑑定』も手に入れたが、はっきりいえばグレードダウン。手に入れて最初に行った「月」に関する鑑定をもう一度行うと、「不明」と表示されたのに青筋を立てた祐里は、『魔力創造主』でポテチを創り自分を諌めたが、それは別の話だ。
スキルの扱いも上手くなり、自身のステータス鑑定での表記を増やしたり、『魔力創造主』による創造のコントロールもある程度できるようになった。
そして何より、魔法と魔術を使えるようになった。テンションが上がったせいで、マルチタスクの稼働も無意識にやめて、しばらく遊んでしまった。そのすぐ後に、現状を思い出した祐里は自分で自分を殴っていた。
༅
「そろそろ森出るか、割と飽きたし。」
そう、実はこの男、既に脱出の方法を手に入れていたのだ。ただその方法が、割と危険というか、何が起こるか分からないものだったので、躊躇っていたのだ。
自力での脱出ができればそれが1番だとは思っていたが、『鑑定』による地図を拡大・縮小して調べた結果、直線距離で5kmはあると分かった。そのため、ほぼ諦めてもいた。
一言でいえば、チキっていたのだ。だがその臆病な心は今、「飽きた」という理由でどこかに飛んでいってしまった。もう心は決まっていた。
「…………よし」
森では今まで中距離で戦うスタイルを好んで使っていた祐里は、この旅の間に学ランやカッターシャツを捨て、コートに変えていた。そのコートの内ポケットから取り出したのは、1枚のカード。祐里の前に掲げられた、「0 The fool」と書かれたその縦長のカードは、魔力によって淡く光りだす。
「愚かなる者の彷徨い。『放浪者』」
次の瞬間、祐里の姿が掻き消える。その場に残されたのは、静寂と魔力による燐光、そして祐里の残した足跡だけだった。
レベルは上がってないけど、自己研鑽と調べ物はめちゃくちゃした。そんな感じです。
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