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092 鬼と蛇

「お邪魔するよ」


「貴様……ワシらを殺しに来たか」


「当然。あ、ブラン国王じゃん。お久しぶりです」


 魔法で感知していたジジイ共のいる部屋に到着する。その部屋は存外に広く、ジジイ共の席があるのにまだ随分と余裕があった。ジジイの席は円形になっており、その中心にブラン国王が写った画面が存在している。魔道具によるものだろう。


『ユーリ殿……その部屋に届いていた報告で、ある程度状況は把握している。この国の者として、巻き込んだことを謝罪しよう』


「気にしてないすよ。バカがバカしただけでしょう?」


『そのジジイ共の目的は国内外の支配らしい。お前を巻き込んでしまったのは、その本質を見抜けず、抑えられなかった俺の責任だ。……今まではその目的を明言せず、表向きは高位研究機関として活動していた。功績も多く、貴族との繋がりもあっめ手を出すのが難しかった……だが、それでも俺達が見抜くべきだったのだ。お前に迷惑をかけてしまうなど、あって良いことではなかった!』


「フン。ほざくなブラン。お主が国王でいられるのは、ワシらが各貴族に働きかけ、裏から手を回したからだ。愚直なお主であれば、政策の誘導は容易(たやす)かった。この国を実質的に支配していたのは! ワシらなのだ!」


「追い詰められてるのにそんなこと言えちゃうなんて、ここの爺さんはどいつもこいつも元気だなぁ」


「追い詰められているだと? ガキが舐めるな! 奥の手を用意するのは当然のことじゃ! 来い! キコケロ!」


「……バカが。自分から手札を晒すヤツがあるかよ。不意打ちの線を消しやがって、何がしてぇんだクソジジィ共がよぉ」


 ジジイの呼びかけに応じて姿を現したのは、口が悪い長身の男だった。2メートルありそうな程の身長と、ガタイの良さが威圧感を感じさせる。赤色の髪も特徴的と言えなくもないが、この世界ではそれほど珍しいモノではない。


「っ……今だけはその態度を許そう。キコケロよ、奴を殺せ。それで全ては上手くいく。この国も、その外も。ワシらの物だ! ブラン、お主もそこで眺めておくといい! 救国の英雄が(たお)れる光景をな!」


『ふざけるなっ! 貴様らはっ……』


 ジジイの1人がそう言うと、ブランの声が聞こえなくなる。どうやら、姿が見えるだけでなくミュート機能も付いているらしい。さっきから気になってたけど、あの魔道具高性能だな。


「奴は犬共を壊滅させた男だ。くれぐれも油断するでないぞ!」


「油断するなだぁ? 自尊心のくっだらねぇセリフ吐いて不意打ち潰しておいてなんだそりゃあ? ……チッ、クソ。まあ、契約は契約だ。てめぇにゃ死んでもらうぞ、ガキ」


「わざわざ宣言するとか、優しいんだなおっさん。『天眼』起動。『鑑定』」


 ────────────────────────

 〜ステータス〜


 名前:キコケロ・トゥークドック

 性別:男

 年齢:32

 種族:ヒューマン

 職業:傭兵

 状態:憤怒(増進)

 レベル:131

 HP:8593/8593

 MP:2992/2992


 ・ベーススキル[P]

 『高速思考(7)』『感情増進(-)』『動体視力強化(6)』『鎖導師(1)』

 ・ベーススキル[A]

 『鎖術(8)』『鞭術(8)』『身体強化(3)』『無属性魔法(7)』『魔道(7)』『凝固(4)』『透視(3)』

 ・ギフトスキル[P]

 無

 ・ギフトスキル[A]

 無

 ・オリジンスキル[P]

 無

 ・オリジンスキル[A]

 無


 称号

「鎖使い」「悪鬼」「知性的な鬼」

 ────────────────────────


「ンなもん時間稼ぎに決まってんだろうがよ、カス! 『俺の鎖は龍の鱗! 全てを塞き止める絶対の盾にして、全てを切り裂く絶対の(やいば)!!! 【強化】!!!』」


「ッ!?」


 突然の詠唱に意識を正面へ戻すと、突如として背後から金属音が聞こえてくる。

 その音と、今しがた『鑑定』で得た鎖使いという情報が結びついた瞬間、無詠唱で背後に土壁を創造した。


 次の瞬間、ドゴォッ! と土壁が破壊される鈍い音が響く。だが、俺はすでに身を投げ音の発生源とキコケロを両方視界に収められるように動いていた。


「……チッ。これで本当に正面から殺すしか無くなったな。イライラするぜ」


 ……不意打ちができなくなったと怒りをあらわにすることで、不意打ちは無いと思い込まされたのか。頭のいい、いやらしい戦い方をする奴だな。苦手かも。


 ガガガッと床をえぐりながら、鎖がキコケロの元へ戻っていく。


 その鎖は、鎖と呼ぶべきか迷うほど特殊な形状をしていた。1辺30cm程のひし形をした鉄板が連なっているのだが、そのひし形の頂点が段々と細くなっている。床に簡単に刺さったことから、かなり鋭いのだと分かる。

 鎖の全長は、パッと見ただけでは分からないが、10mは優に超えているだろう。


(『鑑定』)


 ────────────────────────


 〇ラードゥンカーの鎖


 ・傭兵キコケロの注文通りに作られた、世界に一つの特殊な形状をした鎖。

 ・持ち手があるので鞭ではないか、という製作者の言を、キコケロが断固として拒否したため分類は鎖。

 ・製作者はヘルマン・オーグランヘル。鍛冶師ではなく彫金師だが、特殊なスキルを用いて制作した。

 ・ひし形の鉄片を噛み合うように配置した時、辺から魔力を吹き出し盾になる特性がある。

 ・魔力で操作可能。

 ・『所持者固定』を持つ。

 ・固有技能を持つ。

 ────────────────────────



 強度の強化はさっきかけてた『無属性魔法』だけか。だったら箔刀(はくとう)で切れるな。そう断じると、すぐさま攻撃に移る。


「『召喚』・箔刀(はくとう)。参る」


 さっき目覚めた部屋に隠しておいた箔刀を再度『召喚』し、一気に距離を詰める。鎖の間合いなんて分からないけど、近距離苦手そう。切れ味と軽さに特化してる箔刀(はくとう)なら、初手のびっくりで倒せる可能性もある。


「あせぇよ! 暴れろラードゥンカー!! 【鎖刃泳蛇(さじんえいだ)】!!!」


「ッ!?」


 キコケロが叫んだ瞬間に、鎖が彼の周囲で暴れ始めた。守りの技か? とそう思った瞬間、鎖の端が俺の顔向けて飛んできた。さながら、蛇が飛びかかってくるようだ。


「チッ!」


 なんとか箔刀(はくとう)で鎖を切り捨てるが、ひし形の鉄片が回転していたせいで頬が切り裂かれた。血がドクドクと流れているのを感じる。

 ポーションを創造しようとしたが、再び鎖が飛びかかってきて、それを切り捨てて凌ぐがまたもや軽傷を負う。そして、その展開がもう一度繰り返された。


「うざってぇ! オブジェクトコール・天岩戸(あまのいわと)っ!!!」


 守りを固められながらチマチマとちょっかいをかけられる状況が想像以上に面倒くさく、怒りに任せて盾を呼び出した。

 オブジェクトコールは、俺の創造物を手元に呼び出す魔道具だ。『召喚』のスキルに似ているが、先にあったのはオブジェクトコールの方だ。『召喚』は『召喚』で、俺の創造物以外も呼び出せるので区別はできる。やってないけど。


 〈天岩戸(あまのいわと)〉は、俺が唯一創った盾であり、滅多に使わない倉庫番である。重く、でかく、固い。

 名前と素材による魔術的強化もしてある。アマテラスという大神の神話に準えた強化だ。本家の天岩戸はその名の通り岩なので、それに準えてこの盾も岩でできている。


「膠着は望むとこじゃないけど、面倒なのは勘弁。でもちゃんと潰すから安心してくれていい」


「ざけんなっ! ぶち抜けラードゥンカー! 【閃鎖葬牙(せんさそうが)】!!!」


 天岩戸(あまのいわと)は、神々が尽力しても開けなかった扉。お祭り騒ぎに釣られてアマテラスが自ら戸を開くまで、開くことはなかった。……魔術的な強化は少しだけとはいえ、鎖なんぞに破られることは無い。

 しかも、アマテラスが隠れた洞窟まで結界で擬似再現しているから、盾を回り込んでの奇襲も受け付けない。まさに鉄壁だ。強力な攻撃なら普通に破られるし中から攻撃できないっていう欠点もあるけどね。


「『魔道・【天道】』。『詠唱形骸化』・『強化せよ・【身体強化】』『詠唱形骸化』・『強化せよ・【縦横無神(じゅうおうむじん)】』。『天眼』『天歩』『隠者』『奏者』起動」


 バフもりもりの装備効果もりもりだ。オーバーキルの謗りも受けよう。ちなみに、『天歩』は『空歩』の強化版。移動速度上昇と接地条件の短距離転移付き。『奏者』はイヤリングに付けた新能力、道具を複数同時に操る能力だ。平たくいえば武器の遠隔操作だな。

 さて、箔刀(はくとう)よ。本日最後の仕事だぞ。


「今ここに岩戸は開かれ、世界に光が戻る」


 俺の言葉で、〈天岩戸〉が消失する。この盾、下手に魔術的強化をしたせいで、今のセリフを言うか面倒臭い手順を踏まないと収納できなくなったのだ。これも、倉庫番になってる理由のひとつだな。


 盾を攻撃し続けていたキコケロが、盾の消失に一瞬呆ける。だが、バカめとでも言いたげにニヤリと笑った。


「バカが! その盾に隠れてりゃこっちはうつっ!?」


 『魔力創造主(マジックメイカー)』で創造し、『隠者』で隠した2本の鉄杭(てつくい)を『奏者』で操り、キコケロの周りで暴れている鎖の合間を縫って襲う。

 だが、鉄杭が鎖を通り過ぎた瞬間、キコケロが驚いたように突然身をよじったため、奇襲は失敗に終わった。


 でも、体勢が崩れたなら真正面から詰めて終わりだ。視界もブレてるだろうしな。


 3種類の身体強化で異常なスピードに達した俺は、瞬きよりも速い速度でキコケロの元へ辿り着く。邪魔だった鎖を4回切ったのにその速さだ。異常だろう?


「すまんな。傭兵だし死は覚悟してるだろうけどそれでもな」


「待っ」


 決着は着いた。

評価お願いします。

下の☆を★にしてくれると嬉しいです。


バフ盛る時間あったら現時点の主人公もかなり強めです。そこにアゲハが居たらもう手がつけられませんね。


この章ももーちょいで半分くらいになると思います。気合い入れていきます。

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