ついに出会ったご主人様
そうしてついに辿り着いた10階層目。ここまではなんとか飛刀だけで来ることができたが、ピーの話ではここには階層主と呼ばれる強力なモンスターがいるらしい。
「もう一度確認するが、その階層主とやらはそんなに強いのか?」
「強いなんてもんじゃないもしゅ!相性とかも関係してきますが、普通に1人で戦うやつは自殺志願者もしゅね。」
どうもマジらしいな。コイツの言うことはあんまりあてにはできないが、実際この階層に入ってから嫌な気配がずっとへばりついているようだ。
どうしたもんかとそんな事を考えていた時だ。
「グルァァァァァ!!」
少し離れた所からとんでもない威圧感を感じる咆哮が聞こえてくる。
「まさか……」
咆哮の聴こえてきた方向を見ると、赤い鱗に青い瞳のドラゴンが1人の女に向かって突進していく所だった。
「危ない!!」
俺は後先考えずに女を横から突き飛ばし、ドラゴンの突進をなんとか回避させる。
「ん?何だお前は?」
女は平然とした顔でそんな風に呟く。一応助けてやったのにあんまりな態度だと思ったが、その風貌を見て文句なんかどこかへいってしまっていた。
プラチナブランドの髪に赤と青のオッドアイ、そして均整のとれた素晴らしいプロポーション。何より中世の芸術的な絵画から抜け出してきたかのような美貌。
俺は魔物と遭遇している事実も忘れ見惚れてしまっていた。
「おい、私に見惚れるのは別に構わんが、突っ立っていると死ぬぞ?」
そんな風に言われ、俺は慌てて現状を思い出す。どうにかしてこのドラゴンを倒さないと俺も彼女も仲良く奴のお昼ご飯だ。……まぁ晩御飯なのかもしれないが。
くだらない事を考えてる間にもそいつは口から炎をこちらに向かって吐き出してくる。
「火喰い丸!!」
ここにきて初めて出番がきた刀だがそのイメージ通り奴のブレスはおれの火喰い丸によって綺麗に切り裂かれる。
「ほぉ。」
女性は何故か興味深げに俺の事を見ていたが、こちらに余裕はなく、どうやって倒そうかと必死に考えていた。
そのまま何度かドラゴンと切り結んだものの、奴のブレスは火喰い丸が、青い瞳から繰り出される氷の光線は氷零丸が斬りふせる。
しかし、こちらの攻撃も飛刀は奴の鱗に弾かれ決定打にかける。そんな時に忘れかけていたが、ピーが追いついてきていた。
「置いていかないで欲しいもしゅ!置いていかれたらボク魔物に食べられちゃうもしゅ!!………ってドラゴンもしゅーー!?」
「あのバカ!!」
ドラゴンがピーに気づき、今まさに噛みつかんとしていた。
飛刀で切りつける…ダメだ、奴には通用しない。どうすれば…ヤバイ!!ピーの奴完全にびびって動けなくなってやがる。
ダメ元でも奴との間に割って入らなければ!
俺がピーを救う為走り出そうとしたまさにその瞬間手にしていた二本の刀から声が聞こえてくる。
「我等の力は炎や氷を操るだけに非ず。守りたいものがあるのなら今こそその名を呼べ!」
急速に活性化する脳裏に一本の刀の名が浮かぶ。それはかつて雷を切り裂いたという逸話が残るほどの名刀。
「雷切ぃ!!」
俺が名を呼んだ瞬間、二本の刀は一つの大刀となり、俺の身体は雷の速度でドラゴンへと迫り、真っ二つにしていた……