Dランクげっ歯類と親交を深める
カピバラのピーと出会ってから同じ階層を探索してみたが、ご主人様とやらは見つける事が出来なかった。
「ご主人はこのダンジョンの第五層にある薬草を取りに来ていたもしゅ。もしかするとそこまでボクの事を探しに降りているかもしれないもしゅ。」
このダンジョンの魔物の強さが層によって違っている事には気付いていたが、第五層とやらの魔物に俺の力は通用するのだろうか……
まぁ考えても仕方ないし、どのみちそのご主人とやらに助けてもらえなければ、俺は1人でこのダンジョンのあるかもわからない別の出口を探さなければいけないのだ。
だったら、この刀召喚のスキルで行ける所までいってみよう。
しかし、さっきの飛刀なんかはBランクだと言われていたクラスメイトのスキルとそんなに違わないように思えたのだが……。
まぁ、あのクソ女がDランクだと言うのだからそうなのだろう。別に今更俺のランクが何であろうが何も変わらないしな。
「んじゃ、とっととお前のご主人様を探しに行くとしますか!」
俺とピーは第三層へと続く階段に足を踏み入れた。そこには先程と違い、小さな川のようなものが流れる草原のような階層となっていた。
「なんでダンジョンの中なのに普通に川とか流れてんの!?」
「ダンジョンなんだから、そりゃ川ぐらい流れてますよ!もしゅ。優さんは田舎者なんですか?バカですか?もしゅ。」
急にげっ歯類にディすられた…。とりあえずイラっとしたので頭にチョップを入れておく。
「痛い…………もしゅ。 」
なんだかんだこのげっ歯類とは仲良くやっていけそうだ。人間相手のコミュニケーションが壊滅的な俺にも、コイツは普通に接してくる。
「バカやってないで、さっさとお前のご主人様を探しに行くぞ!」
「きゅ!きゅきゅ!」
気合いが入ると元の世界のカピバラのようにキュルキュル言ってるのも可愛いっちゃ可愛いし、不安だった心も少し解れてきた気がする。
少し気持ちも落ち着いたので、俺たちは第三層をご主人とやらを探すため、くまなく調べていくのだった。
「そういえば、ピーはこのダンジョンに来るのは初めてなのか?」
俺は少しでも先の階層の情報が得られればと思い、進みながらカピバラに尋ねる。
「第5層まではご主人と何度か行ったことがありますよ、もしゅ。逸れちゃうのは今回が初めてもしゅけどね。」
どうやらピーは何度かこのダンジョンに来たことがあるらしい。
「なら、この先にどんな魔物がいるか教えてくれないか?今の俺じゃ戦えない魔物とかいるとヤバイしな。」
「構わないもしゅよ。この第三層には、猫型のおっきな魔物がいるもしゅ。よくボクの方を見てヨダレを垂らしていたのが怖かったので、よく覚えているもしゅ。」
話を聞く限り、まんまライオンの様な魔物が思い浮かぶんだが…。まぁ遠距離から飛刀で斬ってれば大丈夫か。
「確か第四層には火を噴くトカゲがいたもしゅ。一度そのトカゲの火でボクの自慢の毛が燃え出した時には死を覚悟したもしゅ。」
やっぱりコイツは見た目通り鈍臭いみたいだな。
ただ、俺も油断してると同じ事になりかねないので注意は必要だろう。
「第5層には二足歩行する牛の魔物がいたもしゅ。ご主人がミノなんとかって呼んでたもしゅ。」
ミノタウロスか。ゲームの中ではよく見る魔物だが、当たり前だが戦った経験などないのでどの程度の強さなのかはわからない。
なるべくなら早めにご主人とやらと合流したい所だな。
「ありがとな、ピー。一応の対策も考えたから、先に進もう。お前は俺の後ろを警戒しながら着いてきてくれ!」
「合点承知の助もしゅ!」
よくわからない掛け声と共に俺たちは第三層の奥へと向かって歩き出すのだった。
その頃優のクラスメイト達はランクに分けられ、スキルの検証と模擬戦のようなものを行っていた。
「まずは、貴方さま方がどのような力を授かったのか理解して下さい。その上で切磋琢磨して、魔王の軍勢を滅ぼせるようになって頂きます。」
カミラによって魅了されている面々は何故自分達が戦わなくてはいけないのか。そんな事を考えることもなく、我先にと模擬戦に挑んでいく。
「Sランクが2人は今回は上出来でしたわね。」
カミラは誰に言うでもなくポツリとそう呟く。
「今度こそあの魔王から領土を奪い、私の.私による.私のための王国を築いてみせますわ!」
恍惚とした表情でそう呟くカミラの姿からは、狂気が滲み出していた。
今回召喚された彼等はまだ知らない。この女によって過去何度も異世界召喚が行われ、その度に戦争の駒にされていた事を。
そして彼等はこれから知る事となる。この模擬戦の結果、使えないスキルだと判明したもの達は人体実験の被験者とされ、二度と自我を持つことはないということを……
「優君……」
そんな中、木下桃花は模擬戦を終了し、ダンジョンへと連れて行かれてしまった幼なじみの優の事を想っていた。
何故あの時もっと反対しなかったのか。何故もっと助けになれなかったのか。自分は幼き日にあんなに助けてもらったのに……
いくら考えてもどうにもならない事ではあるが、自分の不甲斐なさが嫌になる。
そんな風に思考の海に沈んでいると、急に声をかけられる。
「桃花ちゃん!浮かない顔をしてどうしたんだい?」
話しかけてきたのは、神城結城だった。
「アイツのことを考えてるのかもしれないが、あんなDランクのやつのことはさっさと忘れてもっと親交を深めようよ!」
以前から何かと優の事を悪く言い、自分に馴れ馴れしく話しかけてくるこの男の事が桃花は少し苦手だった。
「神城君、優君の事を悪く言わないで。こんな世界に急に連れてこられて、勝手にランクがどうとか言われてもそんなものなんの意味もないでしょう?」
桃花は2人しかいないSランクの1人であるし、そのスキルも治癒魔法と身体向上系魔法その両方を初めから最高ランクまで使う事ができるという破格のものだ。しかし、本人はそんな事はどうでもよく、優のことをどうにかして助けたいとそれだけを考えているのだが。
「成瀬のやつは君には似合わないよ。君に似合うのは、同じSランクである僕のような選ばれた男だけなんだよ。」
桃花からすれば何を言っているのか理解もできないし、いい迷惑なのだが、周りの女子達からはとてつもない嫉妬の視線を浴びている。
「はぁっ。」
と、ため息を1つ吐き自分の身体能力を向上させてみんなが視界に入らない位置まで瞬時に移動すると、また優のことを考えながらどうすればいいか。と、考え続けるのであった。