ランクDとモンスター
神官達に連れて来られたそこは俺が思い描いていたダンジョンよりもやや非現実的なものだった。
洞窟のような場所から奥へと進み、扉を開けるとそこには下方向へと続く階段があった。
まるで、ゲームの世界だな。
「貴様のようなものでもカミラ様が力を使って召喚されたのだ。せめて他のものの邪魔にぬらぬよう早々に食われてくれ。」
桃花やクラスメイトもいなくなった今コイツらの態度もあからさまなものになっている。
「この王都のダンジョンは地下100階まで続いていると言われているが、現在の最高到達地点は40層だ。まぁ、一回層の魔物にも太刀打ちできない貴様には関係ない事だがな。」
鼻で笑いながら神官の1人が俺に告げてくる。
「早く地下に降りろ!私達はここの入り口を封印せねばならないんだからな!」
俺をダンジョンに放り込んだ後逃げられないように封印するらしい。手の込んだ殺し方で泣けてくるぜ。
「次に会う時があったら覚えてろよ」
どこかのやられキャラのようなセリフを吐きながら俺はダンジョンへと一歩を踏み入れた。
ある程度強がってここまで来たものの、やはり未知の世界で一人きり、しかもダンジョンにいきなり放り込まれたとなれば心細くもなる。
「あ〜、でも仕方ないよな」
あのまま俺がゴネていれば間違いなくあの女は桃花の事も処分しようとしていただろう。
ここは俺1人の命で桃花が助かっただけ良しとしよう。まぁ、死にたくはないし死ぬつもりもないのだが。
「刀召喚」
俺の唯一のスキルらしい刀召喚を使ってみる。
ウインドウにいくつかの黒く塗りつぶされたスペースと、疑心刀の文字が現れた。
「疑心刀」
俺が呼ぶと手の中に禍々しい色合いの刀が現れた。脇差よりは長く大刀よりは短いそれは確かに刀と呼ばれるもののようだ。
「何か特殊な力でもないとこれ無理ゲーじゃね?」
クラスメイトが魔法や超常の力をスキルで得ている中俺は刀を召喚するだけ。
そりゃあ厄介払いもされるわな。ただ勝手に呼ばれて勝手に厄介払いされた方はたまったもんじゃないが。
さて、現状の戦力はこの刀と今までやってきた剣の鍛錬だけ。これだけで魔物とやらとどれだけやれるか解らないが、死なないためにも何処かの出口を探しますか。
「ピギー!!」
通路の奥の方からまんまスライムの様な生物が三匹現れた。
ここが分水嶺だな。この世界の魔物がどの程度の力なのかはわからないが、俺の攻撃が全く通用しないのなら俺はコイツらに溶かされて終わるしかない。
まぁなるようにしかならないか。
俺は1番近くにいたスライム?に突きを叩き込む。スライムはその身体の柔らかさからか、動きを止める気配はない。
「あ〜まじでやばいかも」
俺はどこか他人事のように言いながら回避行動をとろうとしたのだが、何故かそのスライムは残りのスライムへと攻撃を仕掛けだした。
「仲間割れか?」
冷静に観察しながら何が起こっているのかを観察していく。どうも俺が突きを放ったスライムだけが仲間へと攻撃を行い出したようだ。
「なんでアイツだけ…?」
そうこうしているうちに他の2匹に攻撃され、ドロドロと溶けてスライムは消えてしまった。
「まぁ、よくわからんが1匹減っただけでも僥倖だな。」
俺は続けて少しダメージを受けているように見えるスライムの方へと近付き、上段から一気に斬りつけた。多少効いているのか、少し動きが遅くなりながらもスライムはまだ動いていた。
しかし、また俺が斬りつけたスライムが残りの一匹へと攻撃しだしたのだ。
程なくして更に1匹のスライムが消え去り、仲間に裏切られたスライムが1匹だけ残される。
「まさかこの刀の力なのか?」
疑心刀という名前から考えるに斬りつけた対処を疑心暗鬼にさせ、同士討ちをさせるといったところか。「そういえば、あのクソ女の魅了にも抵抗したとか出ていたな」
今思えば、俺と桃花はなんらかの力で魅了を防いでいたのだろう。俺の場合はこの刀だったというわけだ。
そう考えると、この刀の力のおかげで俺はあの時あの場で殺されずにすんだのかもしれないな。
何はともあれ、残っているスライムをどうにかしなければいけない。
1対1なら流石にあんな流体動物に負けるわけがない。俺は、突きや斬りはらいなどでダメージを少しずつ与え、どうにかスライム達の討伐に成功する。
「そういえば、1対1になるとこの刀の力は働かないんだな。」
最後の1匹は真っ直ぐに俺に攻撃を仕掛けてきていたので、他に対象がいないとこの力は働かないようだ。
「レベルが上がりました」
急に目の前にウインドウが現れ、レベルが上昇した事と、ステータスが上がったことを告げてくる。
「やっぱりレベルとかステータスって言われてもよくわかんねぇな。」
少し体に力が入りやすくなった気はするが、どの程度強くなったのかはよくわからない。
「まぁ、なんとか魔物を倒す事が出来るってのもわかったし、少しずつ探索してみるか。」