おかしくなる
ガーベラには特に目立った外傷は無く、体調が悪くなることもなかったが、おかしな言動が増えた。
突然ヤルポノカノスが明日来るとか言い始めたり、夜中誰も居ないのに1人でぶつぶつ喋ってケラケラと笑い出したり、
隣の家の住民に、頭を変えられたと言って殴り込みに行ったり(後日お詫びの品を持って行き謝罪した)して私はとても迷惑していた。
島にはこのような症状を抱えた患者が7人程いた。
島の島民達は、その症状を抱えた者のおかしな言動を笑い、酒の席で晒し物にしたり、あるいは嫌悪した。
その中でも一番苦労しているのは患者の親族で、母が父が子が叔母が叔父が兄弟が、日に日におかしくなって行くのを見ていられるのは1人も居なかった。
ガーベラの様子も変わり、いつも怒った顔をして訳の分からない事を喚き散らしながら生活している。
私を罵倒し、物を投げつけ人格の否定を行う。
周りの人間と衝突して社会的に孤立し、更に患者を介護する人間すなわち親族も患者と同等にみなされる。
いままで仲よくしてきた隣人、友達、家族が私を白い目で見てくる。
前にもこんな事があった。
だが出来なかった。
しかし今はどうだろう。
私を縛るものは一つも存在しない。
私がどれだけお前の尻拭いをしてやったと思っている。
どれだけお前の罵倒に耐えた思っている。
私は覚悟を決めると、拳銃に一発だけ弾を装填した。
そしてベッドの上で寝ているガーベラに向けて銃口を向けた。
後は引き金を引くだけ…引くだけ…
「どうした?その女を殺すんだろ?」
誰かが私にそう話かける
「なにを戸惑っている撃て!」
「この臆病者め!」
「女1人殺せないのか?」
「もう嫌なんだろ?そいつを撃てば楽になれるぞ」
そして言葉に惑わされた私はガーベラを撃った。