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イレギュラーと破壊者

ボームス市にて


既に開戦から1年が経過していた。


戦争期間を含めると、この世界に放り込まれてから、3年経っていた。


未だに自分がここに来た理由は分かっていない。


だが、今やることは分かっている。



アドラー軍駐屯地武器庫にて


「新しい装備だ、ある程度の改造を施してある」


逸見がアンネとアンナに見せた物は、


シモノフPTRS1941対戦車ライフルに、光学照準器を取り付けて、銃身を12.7mmに対応した物に取り替え、銃身とガスチューブを切り詰めて、サプレッサーを取り付けた物だった。


平たく言えば、取り回しを良くして、持ち運び易くした物だ。


「車に載せるにしても、デカいし、持ち運びにくかったからな」


「次からはこれを使え」


「少しガタつきがありますね」


「急造品だからな、そこら辺は自分で調整してくれ」


「だがこれで、市街地でも大口径ライフルを使えるようになるぞ」


「長過ぎて、建物に持ち運べなかったですからね」


確かにこのサイズなら、1人で持ち運んで1人で運用出来るし、反動を押さえる為に、わざわざ弾薬の火薬を減らして使うことも無いだろう。


アンナは、早速整備に取り掛かる為に、銃をバラし始めた。


「まぁ、今月はこれを使う機会は無いだろう」


「何せあと3時間後には、列車に乗って本国へ帰還だ」


「ここで今、お祝い用のビールを開けてしまいたいぐらいだ」


すると、アンネがニヤニヤしながら、紙袋を開けた。


「実を言うと、ここに今冷えたビールがあるんですよ♪」


「おお!いいじゃないか」


しかし、栓抜きが無かった為、別の道具を探す事になった。


「栓抜き無かったか?」


「無いですねぇ、スパナならありました」


「開くかなぁ?」


栓を開けようと、スパナを当てたその時、テーブルがカタカタと揺れた。


それは、散々目にしてきた光景であり、我々にある事を知らせる合図でもあった。


「爆弾だな」「爆弾ね」


逸見はアンネと顔を見合わせると、準備しろと言った。


駐屯地内は大混乱となった。


「緊急連絡、市内全17箇所で爆発を確認」


「憲兵隊本部、市庁、警備航空隊基地が攻撃を受けた」


「現在本部との連絡不能、出動可能な部隊は駐屯地司令の判断に従え」


駐屯地内では混乱が起き、いつもは敬礼をしながら通らなければ行けない廊下を、兵や士官が全速力で駆け回った。


「整備兵も武装させろ!」


「なに!銃が足りない?この前押収した短機関銃が武器庫にあった筈だ、1人でも多く武装させて警戒に当たらせろ!」


郊外に置かれた基地からだと即応が困難な為、市内に小規模な駐屯地を置いたのだが、基地に比べ脆弱な部分が多く。


敷地の外の建物から攻撃を受けたりするので、少しでも多くの人員を警戒に充てたいのだ。


「闇雲に救援に向かっても、敵の攻撃を受けるだけだ!市内の状況を確認する為に偵察チームを向かわせろ」


「それならさっき独立大隊の連中が車と弾薬を持って出ていきました」


「なに?連中何をするつもりなんだ」


逸見率いるガーベラ隊は、騒ぎに便乗する市民の対処に当たっていた。


「7月暴動を思い出すな、あの時もこんなだった」


「隊長、凱旋門広場で市民が集まってデモ行進をしてるようです」


「何でまたこんな時に?」


「さっきの爆発で、俺達の頭(司令本部)が吹き飛んだからな」


「ここぞという時に仕掛けてきた訳か」


車内で会話をしてる最中も、銃声があちこちから聞こえてくる。


だが1つ奇妙な事があった。


銃撃音に混じって、列車のブレーキ音のような音が、断続的に聞こえてくるのだ。


非常に奇妙だが、今はそんな事に構ってる暇は無いと思い、車を走らせた。



司令本部前にて


「よし、お前らに暴徒鎮圧のやり方を教えてやろう」


「先ずはG3(第3中隊)分散して攻撃しろ、脚を狙え」


「我の数よりも敵の数が多い、狙撃手は1人で100人を足止め出来る」


「G2(第2中隊)は、デモ隊と正面から対峙せよ向こうが、レンガを投げたら撃っていい」


「ヴァイアー曹長!貴官はG2の援護に回れ!」


「私は、司令本部の機能を復旧させる」


「少しでも敵を足止めしろ!」


了解(ヤヴォール)!!!」



下水道にて


「上は爆発で大混乱な筈だ」


暗がりの中、カラカラと瓶が音を立てる。


「よし、この上が敵の脳だ」


「電気系は遮断したが、まだ生き残りが沢山居る」


反抗組織のメンバーは、マリーゴールドの花が彫られたコインを手にしていた。


彼らは、ラリルトエ教の信者だった。


彼らにとってマリーゴールドの花は、シンボルであり、神が造った物なのだ。


そして、その名を冠する者は、正に神に選ばれし者なのだ。


だが彼らには不安が残っていた。


何故ならそのマリーゴールドの名前を持つ者は、銃ではなく、剣を持っていたからだ。


いくら神から認められた男と言えど、それは余りにもイレギュラーな存在であった。


「そんな物でどう戦うと言うんだ」


メンバーの1人が懐疑的な目を示していた。


すると、マリーゴールドこと勇者は、剣を抜き真上へ向かって光を放った。




凱旋門前にて


「各員、各個に射撃せよ」


壁に10cm程の穴を開けて、デモ隊を狙撃する。


脚を狙って狙撃。


デモ隊が散り散りになって、逃げ出した。


脚を撃たれた人間を救助しようと、鉄板を持った人間が近づいてくる。


「そんな物でなんになるってんだ」


パシュっと、サプレッサー特有の銃撃音が耳に届く。


鉄板を貫き、腹に命中する。


「酷いことしてるよなぁ、私って」


そう呟くと、無線から応答が入る。


「こちらアンネ、そちらの地域に敵狙撃手を確認した、どうぞ」


「了解対処する、通信終了」


「移動するよ」


スポッターと共に、狙撃手を見つける為に移動しようとしたその時。


鉄矢がレンガを貫き、スポッターの頭を文字通り釘付けにする。


「なぁ!」


アンナは、マンションの4階から、窓を突き破り飛び降りた。


「わぁぁぁ!」


降下訓練で学んだ、五点着地で何とか骨を折らずにすんだ。


一息つく暇も無く、次の行動に移す。


先ずは、装填作業に取り掛かる。


スコープを薬室の上に固定した為、クリップ給弾が出来ない。


その為面倒だが、一発づつ装填する。


「鉄矢で狙撃してくるなんて」


荒い息遣いで、汗を拭う余裕すら今のアンナには無かった。


アンナは、無線機と背嚢を放棄して、体を身軽にする。


アンナを狙撃した者も、再装填を終えて、場所を移動する。


狙撃戦の始まりだ。



司令本部にて


突如現れた敵に、拳銃や短機関銃で応戦するが、全く歯が立たない。


「なんだあれは!?」


「銃弾を弾き返してやがる!」


机やドアを盾にしながら、警備兵と事務員が応戦が、放った弾は全て無力化された。


「畜生!逃げろ」


鷲兵は、イレギュラーの魔の手から逃げようと、外へ通じる扉へ走るが、その行く手を、反抗勢力が塞ぐ。


「死ね!侵略者共め!」


腹を撃たれ、階段から転がり落ちる兵士達。


投降した者は、その場で処刑された。


上下真っ二つになった将校の死体。


爆発から生き残った職員は、抵抗虚しく殉職した。


反抗組織の1人が、死体を蹴りあげた。


「弟の仇だ!」


「何が君の弟は患者だから処分しただ!」


「弟はどこも悪くなかったのに…」


怒りをぶつけるが、心は晴れず、虚しいだけだった。


すると、反抗組織が集まっていた一室が爆発する。


彼らは、何が起きたかも分からず、死に生き残った者は、激しい銃撃を受ける。


「キキョウ、援護を!」


イサカM37を、スラムファイアしながらテロリスト達の腹を抉り出す。


ショットシェルを詰めると、脚を撃たれ仰け反えったテロリストの腹目掛けて、連射する。


腸の破片を被りながら、何度も撃ち込む。


ショットガンを装填しながら、逸見は、


「腸が温かいな」


と言った。


「キキョウ、司令本部の復旧は絶望的だな」


誰の目から見てもそれは明らかであり、弾痕と死体の数が、それを物語っていた。


火薬と猛烈な血の匂いがしてくるのは、単に死体からだけではなく。


逸見が先程男の腸内で、肉と鉛のスクランブルを朝食代わりに作ったからだ。


すると、妙な音が聞こえてくる。


列車のブレーキのような音が、その音を聞いた逸見は、その場に居る全員に笑いかけると。


「全員伏せろ!」


と怒鳴った。


次の瞬間、壁がバターみたいにとろけたかと思えば、天井が崩れて、屋根が無くなった。


「総員退却せよ、こいつの相手は私がやる」


目の前に立つ男は、剣を携え、仁王立ちしていた。


「どうもこんにちはお名前は?」


「誰が名乗るか」


「では、私にも名乗る義務は無いな」


「トトキア村虐殺事件の首謀者として、貴様を連行する!」


逸見は、ため息をつくと、散弾銃に炸裂弾を装填する。


「来いよ!英雄気取り野郎!」

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