敵は全ての市民
白衛帝国(ガルマニア国側)にて
白衛帝国、正式名称は、
白銀大地及び黒土大地防衛帝国
慣用的な呼び名としては、
ガルマニア=ブルシーロフ 二重帝国
世界最強の大陸国家である。
両国合わせ常備軍451万人、予備役40万人に加え、準軍事組織である「国境警察」及び「民間狙撃兵団」の総数は、およそ700万を超えるという。
しかし、二重帝国と言えば聞こえはいいが、両国は水面下で対立しており、現在発生している鷲萸戦争では、両国が武器と人員を輸出しあっている状態が続いていた。
そんな調子の為なのか、両国の関係は、国境の解放や技術交換、共同軍事演習に留まっている。
そして、ここガルマニア国防省では、観戦武官からの情報を元に、次の支援策を、むさ苦しい会議室で議論していた。
「スロム攻防戦で、誘導ロケットの使用が確認されたようだ」
「まぁ、十中八九うちの技術だな」
「連中も本気を出してきたと言うことだ」
「どうだろう、この際6号戦車を投入すると言うのは」
「駄目だ超重戦車は重すぎる、鷲国の機械運用能力では使い物にならない、やるとするなら5号戦車が適任だ」
「では、そのように」
眼鏡を掛けた男が、観戦武官から提出された書類を捲る。
「戦闘機と小銃火器は、自主生産してるんだな」
「だが、うちの装備と似通ってるコピー品か?」
「いや、一部の装備は、こちらが正式採用する前に開発してた」
「向こうに優秀な技術者が居るんだろうな、流石我々と同じ血筋だ」
攻勢から1カ月後の大隊にて
列車から降りてくるヴァイアー曹長を前に、逸見は歓迎の意を表した。
「よく戻ってきてくれた」
「はい、逸見中佐殿」
ヴァイアーの乗る戦車が撃破された後、戦車が無く戦車兵達は、暇を持て余していた。
だが新型戦車が来るとの事だったので、本国へ帰還して訓練を受け後、また戦地へ舞い戻ってきた訳である。
「ヴァイアー曹長、あと1週間で休暇だと言うのに、わざわざ戻ってきたのは何故だ?」
「それは、新しい戦車を見せびらかしたかったからですよ」
「はは、こいつめ」
移動しながら、お喋りに華を咲かせていると、大きな凱旋門が見えてくる。
「隊長見てくださいよ!これが世界7建築の一つハホックの凱旋門ですよ」
それは、ここにきた時に見た、50mは優にあるような建築物で、白い石材に、天使がラッパを持った彫刻が彫られていた。
「なんだが、パリみたいな景観の街だよな」
「何ですパリって?」
「いいところだぞ、前に行った時は、市民全員がモロトフカクテルを奢ってくれた」
「はぁ、そうですか」
揺れる車内の中、ヴァイアーはとある質問をする。
「ところで中佐、どうして装甲兵員車で移動するんですか?」
「ん?まぁそれはなぁ」
バーン!チャリチャン!
突如前方を走っていた警戒車が、吹き飛ぶ。
「こういうことだよ!」
「IEDだ!応戦しろ、こそこそ隠れやがってこのパルチ野郎」
ガバメントのスライドを引いて、薬室に弾薬を装填と同時に撃鉄が起きる。
「バックしろ!早く」
後ろに下がろうとすると、今度は後方のトラックが脱輪して、完全に身動きが取れなくなる。
車の上で、火炎瓶やら手榴弾が音をパリンゴトンと音を立てながら、爆発する。
「どうしましょう!どうしましょう!」
運転手が、おろおろしながら、指示をこう。
人は、慌てると同じ言葉を繰り返すのだ。
「落ち着け運転手、手榴弾ごときじゃ貫通しない、問題は…」
後ろで応戦していたトラックが、何か筒状の物を投げ込まれ、大爆発。
「連中の手製爆弾だ!」
爆発で、トラックが吹き飛び、装甲車が辛うじて通り抜けられそうな道が出来る。
「さあ突っ走れ!」
何か人間のような物を引き倒し、バウンドしながら、安全圏まで退避する。
機銃手が、バリバリとMG34を撃ち込む。
「こちらG1、警備航空隊へ連絡D3区画で攻撃を受けた、航空機の支援を要請する」
「了解、空中待機中の機体を送る」
無線交信が終わると一難去ってまた一難、次は街路樹に突っ込み、車がスタックする。
「機銃手死んだ!最高にヤバいな!さぁ降りろ!降りろ!」
護身用のMP40を持たされると、ヴァイアーと運転手、逸見の3人は、約7分間の間耐え抜いた。
すると、ガンシップとヘリがやってきて、7.62mm弾と50mm榴弾の雨が襲いかかった。
誤射防止用の為に車体番号を、車の屋根に書いておいたお陰で、粉々にならずにすんだ。
逸見は、残骸の中から1人死にかけの奴を連れ出すと、そいつに向かって話掛けた。
「パルチザン、レジスタンス、ゲリラやってることは皆同じだが、私は今日から君達を、テロリストと呼ばせてもらうよ」
拳銃で滅多撃ちにすると、こういい放った。
「そっちのほうが悪者っぽいだろ」
そして、ヴァイアーの方へ両手を広げて、一言。
「ようこそ、ボームスへ!」
ヴァイアーは、ここに来たことを酷く後悔した。
「あぁ、本国にいときゃ良かった!」




