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罪人の告白

とある森にて


第2中隊は、戦車隊が通過する予定の森を偵察していた。


戦車が森の横を通る時には、必ず偵察しなければならない。


対戦車砲や歩兵が、息を潜めているかもしれないからだ。


「誰も居ねえな」


今回は予想に反し、敵は居なかった。


「最近こんなことばっかだ」


「町を占領するって言うから覚悟してたのに、いざやってみれば砲撃でビビって逃げちまった」


「もしかしたら、収穫祭までには戦争が終わるんじゃないか」


「だといいな」


森の中で小さな滝を見つけた中隊は、小休止を取っていた。


それぞれ、噂話やお国自慢に花を咲かせていた。


だが、もっぱらこの部隊で話題になるのは、自身の罪についてだった。


「仲間が銀行の警報装置切り忘れてよ、お陰で15年ムショに入るところだったよ」


「次から仲間は選ぶことだな、例えば俺とか」


「言ってろロリコン野郎」


冗談めかしに言ったところ、呆れた返答が返ってくる。


「一つ語弊があるな、俺はロリコンでもあるがペドフィリアでもあるんだ」


「俺が子供の頃に、あんたと会わなくて良かったよ」


「安心しろ、全部合意の上でやってる」


「そういう問題じゃないんだよバカヤロー」


ヘルメットの上から、頭を軽く叩いた。


そんな会話をしていると、目の前に居る男が珈琲を差し出してくる。


「どうぞ、温かいですよ」


「毒入りだったりするんじゃないか?」


「ご心配なく、毒殺したら食べられなくなりますので」


そう微笑むのは、1年間の間に40人を殺害した殺人鬼、ハールマン・デンケだ。


ハールマン・デンケの名前は、元からの名前ではなく、自身で付けた名前である。


親の名前を引き継ぐのが嫌で、役所で適当な名前にした結果、ハールマン・デンケになったらしい。


毎日遅刻もせずに仕事に行き、勤務態度も真面目そのもので、週末には、ホームレスに衣食住を提供する慈善活動を行っていた。


だが、それは表の顔で裏はホームレスを強姦し、人肉を食していた、恐ろしい悪魔だった。


発覚した時世間では、世界で一番悪い人殺しは誰だ?それは、ハールマンイッヒデンケ(それはハールマンの事だと思う)と言う、ジョークが流行した程であった。


「お前やっぱ、イカれてるよ」


「そうですか?私はイカれてるのは、大隊長の方だと思います」


「大隊長?何故」


「僭越ながら、私の意見を申し上げますと、患者を善意で処理していますから」


その答えに皆首を傾げた。


「善意?」


「ええ善意です、彼は患者を人間だと思っておりません」


「どういう発想か知りませんが、善意で患者を殺しています」


「正気を保ったまま、殺すのは苦労しますから、彼の場合、患者は人ではないと思ってるようですが、どんなに取り繕っても、患者は人間です、彼は人間を正常な状態で殺すことが出来る」


「狂う筈の事をしているのに、狂っていない、それが彼が狂っていると思う私の考えです」


殺人鬼の話で、すっかりお通夜ムードになってしまった彼らは、何か別の話をして、気を紛らわせようと中隊長のオイゲンに話を振った。


「中隊長は何故こんな部隊に?」


「別に…大したことは…していない…5人…殺した、だけさ」


そう言うとオイゲンは、小休止は終わりだと告げて、次の地点へ向かった。

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