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侵攻

「よーい、よーい、よーい投下」


事前に掴んだ情報と15年分の練度が合わさった爆撃は、精密誘導爆弾のような正確性だった。


目標を爆撃する爆撃機群は芸術的である。


「よし帰るぞ、強盗はさっさと退散するに限る」


「機長4時報告敵機です!」


見慣れぬ機体が、バリバリと機銃を放ってきた。


「クソ!この機体(ハインケル)じゃあっというまに落とされるぞ!」


後部機銃を盛んに撃ち込むが、まるで効果がみられない。


するとどうしたものか、敵機にパッと火が付き、くるくる落ちて行った。


「機長友軍機です、助かりました」


バンク(翼を左右に振る)を振って、感謝の意を伝えた。


するとまた、見慣れぬ機体を目にした。


魚の頭が飛んでいるみたいで、思わず「なんだありゃ」と口に出た。


「きっと噂の新型機ですよ」


と、副機長が興奮気味に言う。


「今日は可笑しな飛行機ばかりみるなぁ」


幻の大陸に行った男・中編p226より抜粋




「ハント隊、編隊から遅れているぞ。何があった?」


「一機食ってきただけだそれよりも…………」


「敵機発見!」


眼下にチカチカと反射する物を確認した。


防風ガラスが反射しているのだ。


「敵編隊を視認、およそ40機」


「全機攻撃せよ!」


一斉に急降下し、ぐんぐん距離を詰める禿鷲達。


ハントは、照準一杯に敵機を捉えると、機首に搭載された12.7mm弾を叩きこんだ。


ズタボロにされた機体は、炎も上げずに落ちてゆく。


奇襲に気付いた敵機が反転し、ドックファイトに突入する。


「D21は格闘戦へ移行、シュヴァルベは離脱せよ!」


自分に有利な戦いに持ち込もうと、旋回上昇を行う。


「ケツから一機追ってくる!カーチスとか言うのだ!」


雲の中に逃げ込み、敵機が見失なった所を後ろから撃ち抜く。


更に、P47が3機猛スピードで突っ込んでくる。


バレルロール駆使して一機を撃墜、速度超過でオーバーしたもう一機も撃墜。


大慌てで逃げ出した最後の一機を、20mm機関砲弾が翼の根元に直撃し、羽根をもいだ。


頑丈な戦闘機だと聴いていたが、20mmの直撃には流石に耐えきれなかった。


その頃には空中戦は終わり、我々が勝利したものの、味方機が行方不明になってしまった。


その機体は、私の友人が搭乗していた機体だったのだ。


友人の無事を祈り、墜落したと思われる場所に、食料と医薬品が入った荷物を投下した。





「目標へ前進セヨ!」


「首都!それ以外に求める物はない!」


装甲師団が、砲撃と共に戦線に穴を開け突破する。


濛々と立ち込める煙を、払い進む戦車。


空を騒がすレシプロエンジンに、同じ肌色の友人達から贈られた兵器。


全ては順調に進んでいる。


ダミアン大将は、装甲部隊へ向けて指示を出した。


「ムタ平原に陣を構える敵を両翼包囲せよ」


萸軍側は、死守命令のせいで退路があるにも関わらず、撤退しなかった為、砲兵隊と爆撃機の餌食となった。


しかし、車両不足は今日に至っても解決せず、戦車も全ての戦線に配備されていなかった。


そこで、慢性的な車両不足に陥っている鷲軍が取った戦法は、自転車と翼竜の新しい組み合わせだった。


翼竜に兵員と自転車を載せ、文字通り飛ぶ勢いで敵の後ろへ回り込んで、自転車の機動力で包囲する。


回収された、こちら側の世界の異物から、この方法が生み出された。


自転車と翼竜の新しい組み合わせだ。


こうして、足らないものを工夫して作り上げたのだ。





「スロムへ向かえ」それが鷲軍のスローガンとなった。


「戦車前へ!」


エンジンの唸る音と共に、柵を突き破る。


「いけ!いけ!」


隊員がドアを破壊し、一軒一軒を掃討する。


「報告!敵兵は一兵たりとも見当たりません」


「居ないとなると、かえって不気味ですな」


「また、この前の村みたいな事は御免蒙る」


飛行場襲撃から3日経った今日、我々大隊は、新しい任務に就いていた。


後続部隊の為に予め敵の脆弱な部分を見つけ、そこを攻撃するように指示するのだ。


「何はともあれ、車があるのは助かった」


「足が速いのは良いことだ」


ほぼ全ての人員が、装甲で守られた車両に乗る機械化兵なので、移動速度は速かった。


「だが、飛行機を使えば、もっと速いぞ」


「仕方ありませんよ、敵の戦闘機がまだ、うじゃうじゃいますから」


空軍が敵航空戦力を撃滅してる最中で、残念ながら空挺降下は、危険だと判断されたのだ。


「それにしても、この村は、ファンタジー?と言うのだろうか?その類いの物が、多いな」


逸見の目の前にあるのは、色とりどりの布で包まれた、土産物である。


中身は、魔法石と書かれた石や乾燥させた草花、魔導書と値札が貼られた本が大量にある。


村のあちこちに、その手の物が広がっていた。


「ここは、魔法を売りにしているんです」


そう声を掛けて来たのは、アンナ少尉だった。


「あそこに森が見えますか?あの森は、昔魔女達が住んでいたと言われているんです」


「魔女の誰かが、興味本位で作った魔女だけに効く毒薬で、皆死んでしまったとかなんとか」


その後にも、アンナ少尉のファンタジー話は続いたのだが、

長かったので要約すると、全滅した魔女達が拠点にしていた森は、珍しい石ころや草が沢山あって、それを村人がかき集めて、観光資源にしたそうだ。


アンナの話では「今は過去の話ですけど、昔は冒険者も来てましたよ」とのことだった。


「成る程、言い伝えと地元の生態系を観光に生かした、現実的で素晴らしい話だな」


「そういう話ではありませんよ、こっちの世界には無いロマンが、あるじゃありませんか!」


アンナは、ファンタジーなお話が好きなことが良く分かった。


「キキョウ大尉、食料の徴用を行え、地下室に缶詰めぐらい置いてるだろう」


「了解中佐殿」


家の壁に寄り掛かりチョコバーを取り出し、かぶりつく。


ここに来る途中、第18歩兵連隊の連中から、チョコバー5本と煙草一箱を交換した物だ。


溶けたチョコレートと、粘着力のあるヌガーの甘ったるい感触が、私の歯を襲う。


「あぁクソ、ポケットに入れるべきじゃなかった」


「18連の連中、これ知ってて寄越した訳じゃ無いだろうな」


でろでろになったチョコバーを、包み紙から引き剥がしていると「中佐!」とキキョウの声が聞こえて来た。


チョコバーを包み紙ごと口に放り込み、ライフルを構える。


家の中に入ると床下の倉庫へ、短機関銃を構え、暗闇を見つめるキキョウ大尉の姿があった。


「中佐ここです」


「ライトを付けたら、人が大勢居ました」


包み紙を吐き出し「出て来ないと手榴弾を放り込むぞ!」と、叫んだ。


やがて、小さな手が無数に伸びてくる。


我々が目にしたのは、青ざめた子供達だった。

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